第90話 検証スタート
「ご主人様! 大変です!」
玉座の間に入る時は、基本的にノックをしてこちらからの対応を待つのは普通だが、緊急時に限ってはそういう礼儀を無視するように眷属達に伝えている。
それは守護眷属達だけでなく、眷属奴隷達全員にも同じ事を伝えているのだ。
急ぎ足で玉座の間に入って来たのは、メイド隊の女の子だった。
すぐに俺の下にやってきて、跪く。
「どうした?」
「はっ。
「!? 急いで守護眷属達を集めろ」
「かしこまりました!」
魔物が溢れるということは――――『スタンピード』で間違いないな。
ギブロン街の周囲にあった三つのダンジョンで、同時に『スタンピード』が起きたのも偶然ではなさそうだ。
レヴィの予想では魔人がわざと起こしたのではないかと予想していたのだが、現実は意外にも違っていた。
むしろ、ダンジョンが消滅した事に魔人達が疑問を抱いて、こちらのギブロン街を調べに来ていたという。
それから色んな仮設を立てつつ、検証した結果として、今の『スタンピード』は
「主様。守護眷属一同、ただいまここに」
「ご苦労。今日来て貰ったのは他でもなく、予定通りに起きた『スタンピード』の件だ」
「という事は、やはり順番通りに起きているのですね?」
「そういう事だ。レヴィ!」
「はっ!」
「これから守護眷属達には全員で――――――
「「「「はっ!」」」」
「ルゼだけ例の件を進めておいてくれ」
「あい……っ!」
ルゼを除き、レヴィ、アス、ベル、マモが玉座の間を出て、それぞれダンジョンに向かう。
「ルゼ。例の
「あい……まだ魔族領に……いるみたいです…………」
「ふむ。アスの予想通りになったな。ではそろそろ両軍がぶつかるはずだな?」
「アス姉ちゃんが…………近々……そうなると…………」
「いいだろう。ではルゼには常にその――――
「あぃっ!」
ギブロン街にデルタが現れ、マモが捕獲して大きな進展があった。
マモの拷問に耐えられず、命乞いで全てを話したデルタによると、全てはオメガという魔人の作戦のようだ。
まず、オメガという魔人は王国の現騎士団団長に近づき、力を与えながら裏で操っていたそうだ。
その被害となったのが、シャーロットの師匠であり、元騎士団団長である。
シャーロットの頼みで、元騎士団団長の死体は丁寧に
死神教がギブロン街から頭角を現した頃に最も早く反応したのはデルタであり、それをオメガに相談した時に、大昔に『魔人喰い』と呼ばれる存在によって、本来角3つあったオメガが敗北し、角を一本失う事で生きながらえたと知ったという。
ただ『魔人喰い』がどういう存在か、どういうモノなのかは一切語らなかったというが、オメガの話からすると、人族の姿をしていたというらしい。
死神教が急速に広がり始め、その勢いを増した時に、オメガの次の作戦がデルタに伝えられ、デルタはその作戦を承諾したそうだ。その作戦というのは――――
自分達の同胞である角一つの魔人達を勇者に倒させる事で、勇者を急激に
そこまで強くなった勇者をどうするのかと聞いたところ、デルタとオメガ二人なら魔王を倒したばかりの勇者なら倒せると話していたそうだ。
だが、蓋を開けてみれば、オメガはデルタの前から忽然と姿を消し、一人残されたデルタは色々悩み、直接ギブロン街を訪れたのがここまでの道のりだったそうだ。
つまり、デルタもオメガにとってはただの駒だったという事だ。
そんなオメガだが、こちらには魔人の匂いを嗅ぎ分けれる眷属がいる事を知らないようだ。
だからこのままオメガを泳がせることにして、何が目的なのかを調べている。
その件とは別に、今度はダンジョンの『スタンピード』も調べないといけない。全ての王国領を手に入れたので、全ての支配下にして周囲を調べ続けた。
そこで分かった意外な結果は、ダンジョンは絶対に人里の
さらには、俺のようなダンジョンマスターは存在しない。
存在しているのは、ダンジョンマスターではなく、ラストボスと呼ばれているダンジョンの核を持った存在だ。
それは俺が『グランドダンジョン』に落ちた時に倒したラストボスと同じである。
ギブロン街の『スタンピード』時も最下層のラストボスを倒す事で、そのダンジョンの核が手に入り、それを手に入れるとダンジョンは
そもそも『スタンピード』はどうして起きるのか。
それは俺のようにダンジョンマスターによって管理されているダンジョンではないダンジョン――――つまり、野良ダンジョンの魔物はダンジョンの瘴気の濃さで現れる魔物が違う。
そして、現れる魔物も決まった時間で復活するのではなく、瘴気の量でどんどん増えていく。
増えていった魔物は、ダンジョンに留まる事ができず、ダンジョンからあふれるようになる。
それが俗に言う『スタンピード』の正体だ。
最後の検証として、そもそも瘴気はどういったモノなのか。
『グランドダンジョン』内には瘴気の気配は一つも存在しないのに、野良ダンジョンには場所によって瘴気が存在し、瘴気の濃さはダンジョンによって全然違う。
それを計算した結果――――瘴気というのは、この世界の生物が生きているうちに吐き出す空気の中に含まれていると思われる。
吐き出された空気の中に含まれる瘴気は、周囲の
だから、街の周囲には必ず森林が存在し、彼らが吐き出した息がやがて木々に吸収され、地中を巡り、ダンジョンに運ばれる。
それがこの世界のダンジョンの真理であった。
だからこそ、大きな街の傍にあるダンジョンは瘴気が濃く、強いダンジョンが多いのだ。
そこで俺は一つ疑問に思った。
もし地中に送られる瘴気がダンジョンで魔物にならなかったらどうなるのか。
それをこれから検証しようと思う。
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