第84話 絶望が降り注ぐエルフの里(三人称視点)
★エルフ大森林★
「ねえ、絶対に殺すなよ?★」
「「「はっ」」」
派手な服を着ている美しい少女の前に跪くデスマスターとデスウィザードとデスアサインは、彼女の命令をきっちり遂行すると誓う。
「マスターの望み通り、エルフ
「「「かしこまりました!」」」
すぐに3体のアンデッドがその場を後にした。
「ふふふっ★ エルフ共め。マスターとの時間をよくも邪魔してくれたな★ 許されると思うなよ★」
可愛らしい外見からは想像もできないような禍々しい気配があふれ、周囲に放たれると同時に木々は一瞬で枯れ倒れ始めた。
◆エルフ大森林の里◆
エルフの大森林の里では、エルフ達の悲鳴が鳴り響いていた。
突如現れたアンデッドに一人、また一人連れられて行く。
連れられたエルフには、異空間を通って現れた死神達に連れられ、異空間の向こうに連れ去られていった。
「い、一体何が起きているんだ!?」
「長老! アンデッドが現れて若者を次々と攫っていってます!」
「エルフ攫いだと!? 人族でもないのにどういうことだ!」
「そ、それが全く分かりません。どうしてか若者をだけを狙っております!」
「くっ…………仕方ない。大精霊を呼び起こせ」
「!?」
「このままでは全滅もありえる! 急げ!」
「か、かしこまりました!」
男エルフは大急ぎで仲間を連れて祭壇に向かう。
たったの数分で王都よりも広いエルフの里からは大勢の若者の姿が消えていった。
しかし、その待ち時間が功を奏して、エルフの里の広場には巨大な緑色の魔法陣が姿を現した。
「エルフの里を襲う悪党どもよ。ここで成敗してくれる」
空の王者であるタカを想像させるような姿の全身が淡い翡翠色の巨大な鳥が現れる。
すぐさま全身から無数の強力な風魔法を放ち、デスシーフ達を襲った。
「…………まだいるのか」
既に塵と化したデスシーフの跡から視線を森の奥に向ける。
羽根を羽ばたかせ、強烈な風魔法を森に向けて放った。
しかし、その魔法に対抗するかのように森の奥から禍々しい黒い魔法が風の大精霊の魔法を飲み込んだ。
「邪悪なる者か……まさか、地上に生まれるとはな。デスウィザード」
その声に応えるかのようにデスウィザードが姿を見せる。
「初めまして。風の大精霊様」
「デスウィザードよ。どうしてエルフの里を襲う?」
「それは不思議ですね。先に我々を攻撃したのは間違いなくエルフ族でありますよ?」
「そうだったのか…………なら、エルフを攫ってどうするつもりだ?」
「さあ私にも分かりません。偉大なる御方の考えは私ごときが語る事はできませんから」
「偉大なる御方!? まさか其方を従えた者がいるというのか!?」
デスウィザードの言葉に大きく驚く風の大精霊であった。
それもそうで、デスウィザードともなれば、その高い知識と知恵を持ち、大精霊にも引けを取らない強大な魔力を持っている。
そんなデスウィザードが誰かに従うのは想像できない事だ。
「ええ。私なんて――――まるでゴミくらいでしょう」
「!?」
「シルフェニア様。素直にエルフを差し出してください」
「そ、それはできん!」
「私では忠告しかできません。これはシルフェニア様を思っての忠告ですよ?」
「エルフ族は我の配下の者。そう言われて渡すほど我も落ちぶれてはいないわ!」
「そうですか……残念です。私は忠告しましたとだけ言っておきましょう」
怒る風の大精霊の魔法がデスウィザードに襲い掛かった。
しかし、デスウィザードは一切避けようとはせず、その魔法を素直に受けてその場から消滅した。
「!? なぜ防がなかったんだ? 一体何を企んでいる! デスウィザード」
全くの抵抗を見せなかったデスウィザードに違和感を感じながら、周囲を索敵し続けるが何も見つからない。
と思った矢先、森の奥から禍々しい気配が凄まじい速度で近づいてきた。
その気配に思わず息をのむ風の大精霊。
大精霊になってから初めて感じる圧倒的なまでの強者の気配に思わず震えてしまうほどだった。
そして、森の奥から現れたのは、デスマスターとデスアサシンと無数のデスナイトが整列をした。
並び終えたアンデッド達がその場に跪く。
その中を派手な服を着た可愛らしい少女は、怒りに満ちた表情でゆっくりと歩いてきた。
彼女から放たれている絶望は風の大精霊だけでなく、その姿を捉えていないエルフ達ですら息ができない程だった。
「おい★ 風の大精霊」
「は、はっ!? な、何者だ!」
「…………よくも邪魔をしてくれたな? マスターの大切な玩具を壊すなど、許されると思うのか?★」
可愛らしい姿、可愛らしい声のドス効いた言葉に風の大精霊は言葉が詰まった。
ここまで圧倒的な強者は見た事がない。
だからこそ、身体の底から溢れる――――恐怖を感じていた。
「ちっ。こんな辺境にわざわざやってきたというのに、デスシーフを30体もやられたらマスターに合わせる顔がないじゃない★」
次の瞬間、風の大精霊の両羽が宙を舞う。
一体何が起きているか理解できない風の大精霊だったが、少なくとも自分の身体が地面に落ちたのは理解できた。
何故なら、自身の頭を踏みつけて睨み見下ろしている少女が見えたからだ。
「せめてエルフを差し出していれば、飼い鳥くらいにはしてあげても良かったけど、お前はここで殺す★」
その声が聞こえた後、風の大精霊は意識を失った。
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