第83話 アンデッド(三人称視点)

※重要お詫び。実は45話で考えていたボーナスをすっかり忘れていて、実はその能力を全部開花させている体で話を進めておりました!読者様に言われるまで気づかず大変申し訳ございませんでした!

それに伴い、2~4回目の獲得シーンを急遽挿入しておきましたので、興味がある方はぜひ読んでみてください(ストーリーに変更はなく、大きなシーンは書かれておりませんので、読まなくても問題はありません。2回目は58話、3回目は75話、4回目は前の話の82話に追加しております)

この場を借りて、指摘してくださった読者様に感謝を伝えさせてください。本当にありがとうございました!






 ★死神教領最西端街★


「くっ…………ただのオークの分際で数が多すぎるわね」


「そう愚痴るな。久々の大漁だから、ここで祝福を重ねる同胞も多いだろうからな」


「それもそうね。それにしてもここまでの魔物。どうやって集めたんだろうね。これなら勇者ごとねじ伏せられただろうに」


「疑問ではあるが、まずは目の前の戦いに集中だ」


「はいはい~まぁ、オークくらいで負ける気がしないけどね」


 戦場が見渡せるところから、高くそびえ立つ城壁を前に大勢のオークを蹂躙しているエルフの同胞を見ているのは、魔物大軍の討伐を命じられた二人の若いエルフだった。

 若いと言っても、エルフは長寿なため、年齢による数字は高い。

 オークくらいならエルフの戦士なら一人で蹂躙できるだろうと、祝福を重ねようと躍起になっている若者を眺める二人だった。


 その時。


 街の中から一際大きな魔物は一体現れる。


「サイクロプスか。あんなモノまで隠していたのね」


「一体くらいなら彼らでも十分相手にできるだろう」


「それもそうね。それにしてもこの重苦しい気配はどこから放たれているのかしらね」


「…………魔物が多いからだと思っていたのだが、全く消えないな」


「まるで街からダンジョンの気配がするのは気のせいかしら」


「街がダンジョンか。中々面白い表現だ」


 街から現れたサイクロプスがエルフの軍勢に突撃するが、エルフ達の猛攻によりたどり着く前に倒れ込んだ。


「これで終わりね。このまま人族の街に攻め入るの?」


「長老はそうして欲しいみたいだったぞ」


「はぁ~自分達はただ椅子に座っているだけなのにね~若者は大事と言いながら自分達は戦わないんだからな」


「仕方あるまい。それもまた我々の責務なのだから」


「責務ね…………」


 不満を露にした女エルフが呆れながら前に歩き出す。

 その姿を見て、首を小さく横に振って溜息を吐いた男エルフが後を追った。




 その時、




 城壁の上に見慣れない・・・・・魔物達が姿を現す。


「待って! っ!? 全員退却よ!」


 慌てて声を上げる女エルフ。

 その声は風の精霊の力を伝い、戦場に響き渡った。

 慌てる声に驚くエルフ達だったが、圧倒している現状から退却をしようとするエルフは一人もいなかった。


 それもそうである。


 城壁の上に現れた30体の魔物に全くの見覚えがないからである。

 一目見ただけでアンデッドだと分かる骸骨の顔を持つ魔物は、禍々しい気配を醸し出している鎧を着ていて、その手には長剣と盾を持ち、骸骨の頭には頭部を覆う兜を被っている。

 その背中になびいている真っ黒いマントは、どこか魔物と言うにはいささか不思議な気配を感じずにはいられなかった。


 30体のアンデッドが城壁の上から飛び降りて、城壁の前に降り立った。


 それと同時に、城壁に新たなアンデッドが2体。

 1体は、降り立ったアンデッドと似ているが、一回り細い・・身体を持つが、骸骨の顔の空洞になっているはずの目の部分には、真っ赤に燃える瞳のような光が灯っていた。

 さらにその両手には右手に長剣、左手に短剣を持ち、見るモノに絶望を与える圧倒的な強者の気配を放っていた。


 その隣に立つアンデッドは、彼らとは少し変わっていて、鎧ではなくローブを着込んでいて、その手には大きな杖を携えていた。


「ま、マズいわ! 全員撤退よ! 速く!」


 彼女の声も空しく誰一人逃げず、むしろ戦闘態勢を取る。

 それは――――城壁の上のアンデッドからの恐怖からの行動だった。

 唯一冷静だった後方で構えていた男エルフと女エルフだったが、彼らにも絶望が降り注ぐ。


「それはいけませんね~ここから逃げられても困ります」


「なっ!?」


 いつの間にか後ろの森から現れたのは、城壁のアンデッドとは違い、装束姿のアンデッドが31体姿を見せた。

 その中でも1体は城壁の上のアンデッド同様に唯一その目に瞳のような光を灯らせて圧倒的な強者の気配を放っていた。


「全員ここから逃げられるとでも?」


「くっ! バーハム! 構えなさい!」


「あ……あ…………」


 女エルフの言葉も空しく、男エルフはアンデッドの前に両膝をついた。


「デスナイトにデスマスター…………デスウィッチにデスアサシン……あはは…………無理だ……」


「バーハム! 私達が立ち上がらないとみんな死ぬのよ!」


「無理だ! こんな……こんな圧倒的な戦力差に勝てるはずもない…………あぁ……おしまいだ…………」


 涙を流しながらデスアサシンの前に土下座をする男エルフ。

 圧倒的な強者の気配に当てられ、戦意を失ったのだ。


「くっ」


 剣を抜いて風の精霊を召喚する女エルフ。

 そして、デスアサシンに襲い掛かった。

 だが彼女が地に足を付ける頃には、その全身をボロボロにされて一瞬でその場に倒れ込んだ。


「う、嘘よ…………」


 本来なら触る事ができない精霊すら、デスアサシンの手に捕まり苦しそうにもがきあがいていた。


「シルファを……離して…………」


 一番の親友である風の精霊が苦しむ姿が自身の痛みよりも悲しい彼女だった。


 しかし、


 デスアサシンが小さく微笑んだ気がした。


 次の瞬間、風の精霊シルファの首がありえない角度に倒れる。

 風の精霊の全身から眩い光が周囲に散り始めた。


「い、いやああああああああああ!」


 城壁の前にはエルフ達の悲鳴が鳴り響いた。

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