第65話 第二騎士団との戦いの開幕
目的が元団長であったシャーロットだろうと思っていたけど、予想通り過ぎて拍子抜けした。
「さあ、答えて貰おう」
「…………ふっ。そんなモノで脅しているつもりですか?」
そう答えたヘレンの身体が一瞬ブレる。
次の瞬間、現団長のゲイルが大きく吹き飛んだ。
シャーロットが育てている『ヘルサイズ』の16人の強さは中々なモノだな。
まぁ、レベルも全員500だしな。
「団長。こいつらやばいですぜ」
「ああ。一筋縄ではいかないようだな」
16人同士が睨みあっていると、ヘルサイズの面々が四方に飛び散った。
騎士団もそれに応えるかのように、追いかけていく。
中央広場には、ヘレンとゲイルのみが残った。
「ではこちらも本気で行かせて貰う」
「ふふっ。貴方
ヘレンの挑発に乗ったゲイルは全身に不思議なオーラを灯らせて襲い掛かる。
「ほぉ……思っていた以上にはやるみたいですね」
「そうだな――――――レヴィ。あのオーラはなんだ?」
「はい。あれは『
闘気か……少しだけ気になるな。
「主様も既に使われておりますよ?」
「ん? 俺が?」
「私やアス、ベルも使っております。強者としてある程度のラインを超えた者は、自然と身に着けている事が多いと思います」
レヴィにそう言われて、自分の身体をゆっくり見つめる。
オーラらしいものは見当たらないが、レヴィが嘘をつくはずもない。
目を凝らしてみていると、オーラというよりは薄い膜のようなものが見えた。
「ん? この膜のようなものか?」
「はい。その通りでございます。強者になればなるほど、闘気は薄く、そして美しくなります」
レヴィの言う通り、画面で見ているゲイルのオーラはどちらかというと、あらぶっているように見える。
だが、俺もレヴィもオーラというよりは、ほんの薄い――――まるで1ミリよりも薄い薄さだ。
薄い方が凝縮されているのは……ある意味皮肉にも思える。
全力を出して剣を振りかざすゲイルだったが、ヘレンに手も足も出ず、あしらわれ続ける。
あんなに大きな鎌を器用に使うものだな。
「王国の騎士とはこんなものでしたか」
「くっ!」
次々闘気を使いスキルを繰り出すも、全てヘレンの前では意味をなさなかった。
彼が第二騎士団の団長となって、レベルも120となっているのは随分と頑張ったと思う。
俺のダンジョンに入った侵入者達のレベルを見ていると120がどれくらい高いモノかも理解できる。
だが、目の前の相手のレベルは、その数倍は開いているから、才能に余程の差がなければまず勝てるのは不可能だ。
現にゲイルは手も足も出ない状態だ。
「絶対…………絶対シャーロット様を助け出してみせる!」
必死に叫ぶゲイルの姿がどこか可哀想にさえ思えて来る。
何故なら――――――
「私を助ける?」
彼の後ろから美しく長い金髪をなびかせているシャーロットがいたからだ。
「えっ? 団……長?」
「久しぶりね。ゲイル」
「シャーロット団長!」
シャーロットを見つけたゲイルは、全てが救われたような表情を見せる。
だが、次の瞬間、彼女の異変に気付く。
「団長……? その鎌とローブは……?」
「これは私が管理している『ヘルサイズ』の衣装よ」
「っ!?」
後ろのヘレンとシャーロットを交互に見つめる。
何が起きているか理解できてないようだ。
「ゲイル。お前がどうしてここに来たかは分からない。だが、私はもうお前が知っている頃の私ではない」
「っ! ま、まさか…………魔人。魔人め! シャーロット団長を洗脳――――」
ゲイルが叫んだ瞬間、彼の左手が宙を舞う。
「ゲイル。我がご主人様を魔人如きと呼ぶなど、許されないぞ」
いつ斬ったのかすら見えないシャーロットの斬撃で、ゲイルの左手からはおびただしい血が噴き出た。
信じられない表情でその場に崩れるゲイル。
「嘘だ…………シャーロット団長が…………あの気高き団長が…………」
「お前は何もわかっていない。私は気高くもなんでもなかった。常に自分より強い人を探して……いつか自分を負かしてくれる男性を探し求めていたのだ」
「嘘だああああ! シャーロット団長は常に気高く、我々を導いてくれる存在だった! お前はシャーロット団長ではない!」
「そうだな。私はあの頃のシャーロットではない。今の私は――――――『ヘルサイズ』の団長。シャーロットである」
大きな鎌がゲイルの首を斬――――――ろうとした瞬間。
金属同士がぶつかり、大きな火花を散らしながら、爆音が周囲に広がった。
「あひゃひゃひゃひゃ! みーつけた~!」
そこには自身よりも大きな大剣を携えた小柄の金髪の女性が見えた。
しかし、彼女の表情はまるで人のものとは思えないくらいに酷い表情を見せていた。
あの変な笑い方さえしなければ十分美人だろうに……。
「久しぶりね。シャルル」
「うひひひ~! ずっと……ずっとぉ探していたのよ~! ――――――姉様~!」
そう叫んだ彼女は大剣をシャーロットに振り下ろした。
見た目だけでも重量ある大剣をまるでおもちゃのように振り回す彼女に、シャーロットは鎌で全てはじき返していく。
だが、見た目通り重い攻撃なのか、シャーロットは少しずつ圧されていった。
「姉様~! あひゃひゃひゃ! ――――――殺してあげる」
彼女の頭の上に表記された名前を見て、シャーロットの妹である事を知った。
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