第61話 監獄
ダンポが60万と少しあったのが、いつの間にか99万を超えている。
最近ギブロン街の噂が周囲に回っているようで、大勢の冒険者から色んなお尋ね者が訪れて来るようになった。
その中でも特にお尋ね者達は、警備の薄いこの街をいたく気に入っており、ダンジョンルールだけじゃなく普通の犯罪のような行動を繰り返していた。
それが通るはずもなく、冒険者ギルドを任せているヴァイオを使い、冒険者達で彼らを逮捕させて牢屋にぶち込んだ。
牢屋にぶち込まれたお尋ね者達は、深夜の暗い夜の中、レヴィによって『拷問の館』に移送されていずれダンポに変わるようになる。
それを二十日くらい繰り返す事でまさか、ダンポが40万近く貯まったのである。
そして、遂にその日。ダンポが100万を突破した。
「『監獄生成』を行う」
【ダンジョンポイント1,000,000を使用して『監獄生成』を行いました。自動的に『強制収監』も解放されます。】
ほぉ。『強制収監』は自動解放か。
今まで自動解放は見た事がないので、これが初めてになるな。
こういう珍しいケースもあるという事か。
「主様」
「レヴィ。無事『監獄』が生成できたようだ」
「「「「おめでとうございます!」」」」
玉座の間には配下の上層部員が全員集まっており、祝してくれる。
「監獄は農場と同様に新しい階層になっているようだな」
「かしこまりました。どうぞ」
レヴィが俺の手を引いてくれる。
そのまま、ワープポータルに移動すると、農場の下に『監獄』が新たに追加されている。
そのまま『監獄』に移動した。
やって来た監獄の雰囲気は、絵にかいたような雰囲気で、周囲は常に真っ暗な雰囲気で、監獄の周囲には降っていないが遠目のところには嵐のような雨が降っており、定期的に雷が轟音を響かせている。
ただ監獄の周辺に降っている訳ではないので、衣服が濡れたりはしない。…………少し残念だと思うのは、リース達が幼い姿の頃に池で遊んでいた時のことを思っただけかも知れない。
監獄の中に入っていくと、資料でしか見た事がなかった監獄そのものだ。
「いらっしゃいませ。主様」
中では軍服を身にまとった大勢の兵が整列して並んで、右手を左胸に当てて大きくビシッと立っていた。
「うむ? お前は?」
「ははっ! わたくしめは、この監獄の看守長を務めさせていただいておりますゴクドーと申します」
「ゴクドーか。お前達はこの監獄と共に存在しているんだな?」
「そうでございます!」
どうやら目の前の兵達は俺の眷属というのとはちょっと違うようだ。
何故なら彼らからは俺の眷属との繋がりが全く感じられないからだ。
ただ、彼らの存在こそがこの監獄に繋がっている。さらに言えるのは、彼らからは全く
つまり、彼らはこの『監獄』という新しい建物のオブジェクトと言えるだろう。
監獄を誰に任せようか悩んでいたのだが、これは丁度良かった。
「ゴクドーよ。この施設を案内してもらえるか?」
「かしこまりました! 光栄でございます!」
そこから看守長ゴクドーの案内で監獄の内部を歩き回った。
入った1階が正面入り口になっている。
そこから周囲には部屋がいくつかあって、誰か使うモノではなく、俺が来た時に使える部屋との事だ。
そもそも監獄にお客さんが来る訳ではないので、俺の部屋という事だ。
そこにはレヴィに頼んで定期的に清掃に入って貰う事にしよう。
そこから階段を上って2階へ進む。
2階からは牢屋が無数に続いていて、部屋は一つ一つ狭く、薄暗い雰囲気が監獄らしさを見せている。
「こちらの牢屋でございますが、定員は存在しておりません」
「ん? ここに見える範囲を超えてもか?」
「その通りでございます。こちらの監獄は『無限監獄』と呼ばれており、罪人がどれだけ入っても問題ありません。1階で総勢200名収監出来ますが、それを超えるとこの上部に上の階が自動生成され、またその階で200名を超えるとまた増える仕組みになっております」
つまり1000名が捕まったら現在ある2階に200名、そこから3階、4階、5階、6階が自動的に生成されて収監されるのか。
だから名前も『無限監獄』というんだな。
上の階を増築するのにダンポ要らずで、これは良い施設になるな。
「それと、収監された罪人には毎日20時間労働が強いられます。収監された者の働ける量によって、ダンジョンポイントが生成され、自動的に主様に還元されるようになっております」
監獄のオブジェクトなだけあり、内容も詳しくて助かるな。
「『強制収監』はどのようなモノだ?」
「はっ。主様がお持ちになっている『レーダー&アラーム』を設定した階層で『罪人』と判断された者を強制的に収監致します」
「ふむ。あくまで設定した階層のみだな? それは『レーダー&アラーム』を設定しても『強制収監』を設定しなければ問題ないという認識でいいか?」
「はっ。その通りでございます」
「では、次は強制収監についてだが、もしこちらにいるレヴィのような強さの敵ならどうなる?」
「レヴィ様のような強者に『強制収監』は不可能でございます」
「『強制収監』はそもそもどのように行われる?」
「はっ。『強制収監』は罪人と判断された者を、この施設にいる看守達が捕まえに参ります。その際には各ダンジョンを『ゲート』と呼ばれている力で一瞬で乗り越えて捕まえに参ります」
「『ゲート』か。それを俺や眷属達が使う事は?」
「不可能でございます。あくまで『監獄』とダンジョンの結びつきがある看守のみ使えます」
「ふむ。ではお前達が捕まえられる強さをできる限り詳細に説明しろ」
「はっ。看守も主様のレベルに影響されており、僭越ながら、眷属奴隷であるシャーロット殿ならギリギリ収監できそうです」
「ほぉ……それは中々強いな」
「ありがとうございます。我々看守は基本的に3人で一組になっており、相手の人数に対して3倍の人数で向かう事ができます」
「もし負けた場合は?」
「負けた場合は収監不可能として主様に報告となります」
「負けたという事は看守が死んだ事になるのだが、それはどうなる?」
「看守もまた無限に生まれるため、全く問題ありません」
これはとんでもなく便利なモノを手に入れたのかも知れない。
レヴィ達ほどに圧倒的な戦力ではないが、ダンジョンルールをいちいちレヴィ達が遂行していたのを、自動化できるなら彼女達の負担も減るという事だ。
「よかろう。一旦、ギブロン街と1層、2層、3層で罪人となった者は全員収監せよ!」
「はっ! ありがたき幸せ!」
その日から、罪人達の自動収監が始まった。
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