第49話 新たな1層と2層(三人称視点あり)
今日行うのは、ギブロン街から訪れている大勢の人の対策だ。
シャーロットの話では、ダンジョンでは基本的に素材がドロップすることはあるが、このダンジョンほど良品が落ちるケースは稀だという。
さらに言えば、1層の魔物が非常に弱いのも特徴の一つだ。
だからなのか、やっぱり人気が出て当たり前だそうだ。
さて、対策として考えているのは、普通の住民と、戦いに慣れた者達を分けるべきだと考える。
そこで、『フロア追加(5)』を使い、新しいフロアを作成、新しいフロアは
今までのくねくねした洞窟のような1層を2層に追いやった形だ。
新しい1層は『フロアの構成変更(1)』を使い、ただの草原にすれば、殺風景なフロアから広々とした風が気持ち良い草原が出来上がる。
さらに広さを最大にして、Fランク魔物を2000匹を均等に配置させる。
魔物はそもそも視力が高い訳ではないので、見晴らしが良い草原だったとしても近くの人にそう簡単に襲い掛かったりはしない。ダンジョンでの見晴らしの良さは魔物より人の方が有利に働くのだ。
Fランク魔物全てにはいつものFランク植物を設定してあげる。
2層へ降りる階段は出口からそう遠くない場所に設ける事で、これからの作るルールを軽いモノとする。
今回新たに追加したルールは、
・戦いに心得があるモノは1層での狩りを禁ずる。ただし、弱い者を助ける行為は良しとするが、戦利品の強奪や金品要求は禁止とする。(5点)
これなら冒険者達が1層で助けるふりをしながら、変な事を要求するのも減るはずだ。
まぁ、実はこれには裏があって、ダンジョン内で口約束だけで、ギブロン街に戻ってから請求する輩もいたりする。
だが、今のギブロン街は俺のダンジョン配下となっているので、そういう輩の点数も全て記録されていたりする。
1度目は許させるのだが、2度目で10点に達した者は、全てレヴィの『拷問の館』行きとなる。
そこで俺のダンポに生まれ変わるのだ。出来ればこういう連中が定期的に現れるとダンポ的には助かるんだがな。
早速新しくなった1層にやってきた人達が驚きを見せる。
そりゃそうだよな……昨日まで洞窟だったのに、今日から草原だからな。
一応ルールとして戦いに心得のある者は、1層を眺めていた。
1層での狩りが始まると、以前と変わらないドロップに大勢の人が安堵の息を吐いてるのが見える。
少しして、見守っていた冒険者達が2層に恐る恐る移動する。
2層の構造が以前の1層である事を知った彼らはすかさず狩りを開始、以前より空いている2層に喜ぶ冒険者も多くいた。
それから数日。
新しく形を変えた『グランドダンジョン』は、相も変わらずの盛り上がりを見せた。
◇ ◆ ◇ ◆
ギブロン街。冒険者ギルド。
「マスター。例の件の調査が終わりました」
「ご苦労様。それで、どうなった?」
「はい。通報された通り、東のペレンダンジョン、南のゴークンダンジョン、北のフルートダンジョンが消滅していました」
「っ!? やっぱりか」
「はい。そういえば、以前のスタンピードの時、我々を助けてくれた
「ふむ。『ヘルサイズ』とやらの連中だな?」
「はい。彼女が名乗った時、『ヘルサイズ』の一人としてと言っていたそうです。なので複数人による集団なのでしょう。もしかしたらダンジョンを
「ダンジョン喰いか…………あの伝説が本当だと?」
「そうでなければ、ダンジョンの消滅が説明出来ません。王国建立以来、ある意味初めての観測ですから」
「…………分かった。お前はこのまま王国に現状を報告しろ。それと優秀なやつらを『グランドダンジョン』に潜らせておけ。1層を見張るだけで、戦わなくていい」
「分かりました。すぐに行います」
男がギルドマスターの部屋を後にすると、ヴァイオの表情から人の
「ご主人様。王国へのアプローチは終わりました。すべて予定通りです――――――かしこまりました」
誰もいない場所に深く頭を下げるヴァイオには相も変わらず無表情のまま窓の外を見つめた。
外にはアタフタとそれぞれの仕事に向かう数人の冒険者達が見えていた。
トントン。
「入れ」
扉が開くと受付嬢が入ってくる。
「マスター! 『食事処』さんからお礼の品が届きました!」
「そうか、相変わらず優しいものだな」
「本当ですよ! いつも持ってきてくれる食べ物もどれも美味しくて、最近お昼は必ず注文していますからね~」
「うちだけ特別に……だったな?」
「そうなんです。マスター? ほかに言っちゃダメですからね?」
「はいはい。誰にも言わないさ。それより、ランス達はどうだった?」
「ランスさん達からはまだ何の連絡も来てないです」
「そうか。もう少し待つとするか」
「マスター、今日のお弁当は何にしますか?」
「うむ。『トンドンオオモリ』で頼む」
「うふふ~分かりました~」
足軽に部屋を後にする受付嬢。
受付嬢の足音が聞こえなくなるまで、とても人間らしい笑顔を浮かべるヴァイオであった。
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