第48話 新たな脅威の芽

 レイジネ王国の一室。


「それは本当か?」


「はい……団長はあのダンジョンで…………」


「シャーロットともあろう者が、魔族でもなければ、魔人でもないダンジョン如きに命を散らすか」


「あのダンジョンには魔人がいるかも知れません!」


「…………あり得ないな」


「っ!?」


「もし魔人が滞在しているなら、あの周囲の街が無事なはずがない。お前の言っている通りなら、寧ろギブロン街にとって有意義・・・なのだろう?」


「そ、そうですが…………ですが、団長は帰ってこなかったんです!」


「ふむ…………お前はあの街があの後どうなったか分かっているか?」


「い、いいえ」


「あの街を裏で牛耳っていた冒険者ギルドのギルドマスターが暴走して討たれたそうだ。その後、後釜に座った者が、住民達の訴えによってギブロン子爵の座に座った」


「そんな!?」


「お前の言う事が正しいのなら、あの街が崩壊するのではなく、寧ろ良い・・方向に向かったのに説明がつかない」


「…………」


「ただ、少なくともお前が言う通り、シャーロットが帰って来ないのも事実。あの女に勝てるがいるとはとても思えないからな」


「くっ!」


 それはダンジョン内にて彼女を屈服させたかも知れないと遠まわしでの侮辱に当たる。それほどにシャーロットという女性は男性達にとって、高嶺の花だったのも事実だ。


「ゲイル。我が団に来い」


「っ!?」


「シャーロットではお前の良さは引き出せない。以前から言っていただろう? 彼女は確かに強い。だがその所為で全て彼女自身の手で片付けようとする。それは言わば他の騎士は要らないと言っているのと一緒だ。お前ほどの男ならいずれ団長にまで上り詰められるだろう」


「俺は…………団長の座が欲しい訳では…………」


「ではこれならどうだ。我が団の空いた隊長の座に座れ。荒くればかりだが腕は確かだ。それらを纏めて自らの足でシャーロットが消えたダンジョンに向かってみるといいだろう」


「…………分かりました。ただし、必ずあのダンジョンに向かう事を認めてくださるなら」


「いいだろう。自分の目であの女の最期を見届けてくるといい。それまで精々隊長の座を守ってみせよ」


 決心を決めたゲイルが両手の拳を握り締める。

 帰って来た3人の騎士達は既に廃人となっており、王都まで連れて帰るまで随分と長い時間が掛かってしまったのだ。

 現在3人は精神的な病気という事で、王都の病院に入れられた。

 時折、魔と戦って精神攻撃で精神が崩壊した者も多い。そんな彼らを養うための施設となっている。

 未だあの時の事を思い出すだけで叫び声をあげる彼らが、いつか回復する事を祈りながらゲイルは自分が出来る事を精一杯頑張ろうと決めたのだ。




 まさか、自分の身体のに追跡虫が入れられたのも知らずに。




 ◇ ◆ ◇ ◆




「二人とも、色々勝手に決めてすまなかったな」


「いいえ! 主様の成す事に疑問を持つなど!」


「マスタ~のやりたいように、私はずっと隣にいます~☆」


 アメリアを秘書にして初めての夜。

 さっそく来てくれたのは、レヴィとアスだ。

 二人とも相変わらず美しく、ベッドの中で少しでも長く俺にくっついていようとする。

 毎日代る代る訪れる相手の事を考えて、毎日全力を出すのはそろそろやめようと思う。

 今日は程ほどにして二人とゆっくり過ごす時間を楽しむ事にした。


「マスタ~☆」


「うむ?」


「シャーロットの部下の事を覚えてらっしゃいますかぁ?」


「シャーロットの部下? 廃人になった3人か?」


「いえ~王国にがした者です☆」


「ああ、覚えているとも。アスが直々そうしたいと言っていたからな」


「えへ~☆」


 シャーロットが率いていた騎士団員は、全員生かす事にしている。

 ただ、その中の数人は既に廃人と化して使いモノにはならなだろう。

 ダンジョンに来ていなかった数人に関しては、アスの頼みで次のを釣るために王国に逃がす事にした。

 俺としては、そんな無謀なことはしなくていいと思うんだが、アス的には逃がした方が色々都合が良いらしい。


「彼は王国に戻り、真っ先に一番強い騎士に相談したようです☆ ただすぐに乗り込むことはないのですが、いずれ彼が騎士団を率いて訪れると思います☆」


「ふむ。騎士団の対策も考えねばならんだ。ただ、先日のボーナスの事を思えば、大量のダンポを獲得出来るチャンスだな」


「はい☆」


「今は無理はしないが、出来るだけダンポが欲しい。アス。このまま彼らを誘導してくれ」


「かしこまりました~☆」


「レヴィも対策を頼むぞ」


「はっ!」


 さて……今日はゆっくりしたかったのだが……どうやら俺の俺はそんな事を望んではいないようだな。


「マスタ~☆」


「うむ?」


「私達に遠慮はいりませんからね~☆」


「そ、そうか」


 くっ……二人の上目遣いは破壊力抜群だな。


「ではもう一回戦だけ……」


「あい☆」


 再度始まった騎馬戦にレヴィとアスの連続攻撃がさく裂する。

 豊満な波が押し寄せると思えば、すぐに穏やかで安らかな波がやってくる。

 次第に戦いは激しさを増し、レヴィとアスの騎馬戦が繰り広げられる。

 俺はどちらか勝つのか楽しみにしながら、深まる夜を堪能した。

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