第43話 迫りくる脅威

 今日はいつにも増して賑わうダンジョン1層を何とかしたいと思い、1層を眺めてみる。

 やはり目立つのは、一般人よりも――――冒険者達だ。

 彼らは冒険者ギルドから正式的に買取の依頼を遂行している。

 元々食糧難でもあったギブロン街だからこそなのか、冒険者達は食材を食べながら狩りを続け、適量を運んでいる。

 そのおかげもあって、ギブロン街に多数展開している『食事処ご主人様』は大繁盛していた。


 ギブロン街を支配して最近気づいたのは、ギブロン街自体が『グランドダンジョン』の『従属拠点』となったので、なんと、街中をモニターで確認する事が出来た。

 街中なら全て見れるので、家の中とかも見れて、人々の生活も見れる。


 そこで気付いた事。


 この世界では、アレが頻繁に行われている。

 その甲斐あって、妊娠率が非常に高い。街に住んでいる成人女性の半数以上は常に妊娠している。

 それと気になったのは、どうやらこの世界には死産・・というのは存在しないようだ。

 さらに女性は殆どが美形で、歳を取っても尚美人さがあり、男性の中では熟女好きな人も多数存在している。

 意外な事に、幼児を好きな人は存在しない。それも『常識』とやらのおかげなんだろうなと思う。




 閑話休題。




 最近冒険者がダンジョンに潜るようになり、2層に行く冒険者も数が増えている。

 そのおかげもあって、少しずつダンポも貯まっているのだが、このままでは数万を貯めるのに数か月かかりそうだ。

 それに1層で狩りを行えない一般人も多く出て来た。

 いくらルールを決めているとはいえ、魔物の狩りの経験がある冒険者達が狩場を独占し兼ねないのだ。

 それを何とかするには、単純に一般人と冒険者の住み分けをしようと思ったのだが…………新しいエリアを解放して2層に1層と同じ作りにしようと考えたのだが、最低でもフロア追加(5)の60,000、フロアの最大広さ30,000、Fランク魔物2千体2,000の累計92,000も必要だ。


 さて……どうしたモノか……ルールを違反するやつがいれば、そいつを使いダンポを稼ぐのだが、それでも92,000をまとめて確保するのは難しい。


【周囲のダンジョンからスタンピードを観測しました。】


 ん? スタンピード? どういう事だ?


 暫く待つが、天の声さんの返事がない。


「アス!」


 アスを呼ぶと数秒後に彼女が現れる。


「マスタ~☆」


「アス。周囲のダンジョンからスタンピードを観測した。今すぐに調べてくれ」


「スタンピード!? かしこまりました☆」


 アスでも驚くほどだ。スタンピードというからに凄いのだろう……。

 すぐにその場から消えたアスの続報を待つ事にしよう。




 それはそうと、窓の外からアメリアの妹達が池で遊んでるのが見える。

 とても楽しそうで何よりで、最近夜の事ばかり考えている俺に取っては、癒しに思える純粋さがとても良い。

 ちゃっかり、遊んでいる傍から泉の隣に置いてあるポーション用瓶を取っては、泉の聖水を汲んだりしている。

 仕事と遊びを両立させているところが、とても素晴らしいと思う。

 それにしてもこの世界の人々は仕事・・に対して、わりとストイックな行いを行う。

 何も俺の眷属達だけが一生懸命に働いているわけではない。

 食料のために働いているのかと思えば、意外とそうでもなくて、だいぶマシになった最近もズル休みをする人はいないし、仕事中に愚痴る人も全く見かけない。

 そういう面ではある意味完成された社会・・・・・のように感じてしまう。


 昼頃にレヴィとアスが居ない中、3人で昼食を取り、玉座で待っていると、


「マスタ~☆ 調べて来ました」


「アス。ご苦労」


「はい☆ ギブロン街の周囲にはダンジョンが3つほど存在しております。その全て・・からスタンピードが発生しているようです。一番最寄りの街であるギブロン街に向かって大勢の魔物が迫って来ています」


「思っていたよりもずっと深刻な状況だな?」


「はい☆ ただどれもダンジョンの最下層から始まるので、ギブロン街に着くまでに丸一日は掛かるかと思います☆」


「そうか……ではすぐに作戦会議を行う!」


「はいっ☆」


 すぐにレヴィとアメリア、団長も呼び、緊急対策会議を開く事となった。




「では緊急対策会議を行う。現在3方向から魔物達が迫ってくるという。どう対策するかを考えよう」


 アスが用意してくれたギブロン街を中心とした地図をテーブルの上に広げて、『グランドダンジョン』以外のダンジョンの上に駒を置く。

 3か所とも見事に場所がばらばらだ。

 ギブロン街から見て左手に『グランドダンジョン』があるが、今回スタンピードが起きたとされているダンジョンは地図上で見ると、上と下と右側にそれぞれ1つずつ存在している。

 多少距離は違うが、どれもがギブロン街から『グランドダンジョン』までの距離とさほど変わらない。


 …………これはたまたまなのだろうか?


「マスタ~☆ レヴィと私なら一人で一つのダンジョンを片付ける事が出来ると思います☆」


「ほぉ……強さはどのくらいの魔物が溢れたのだ?」


「ランクでいうと、最低はEランクですが、Dランクの魔物も混在していて、上位にはCランク魔物もいると思われます」


 Cランクか……うちのオークがDランクで既にあの強さだ。

 それから比べたらCランクの魔物は非常に厄介と言えるだろう。

 そもそも各ランクでステータスが5倍ほど違うが、俺が予想していた5倍だから5体いれば勝てると思っていたのは、大きな勘違いだった。

 理由としてはステータスが5倍もの数値の差は、圧倒的な差であること。

 Eランクの魔物がDランクに勝つには5倍の数ではなく最低でも50倍の数は必要なのだが、これもDランク魔物が1体ならという条件付きだ。

 もしDランク魔物が2体いるなら、Eランクが100体いようが200体いようが勝てない。

 ステータスというのはそれほどまでに圧倒的だという。


 以前団長に聞いた話では、魔物のランクとこの世界の人々と比較した場合、


 ・Fランク魔物はレベル5に相当し、レベル1の4人以上で対処出来る。

 ・Eランク魔物はレベル20に相当し、一人前の冒険者で対処出来る。

 ・Dランク魔物はレベル50に相当し、熟練の冒険者や兵士長級で対処出来る。


 以上の感じのようだ。


 ここでレベル相当はあくまで相当で人によってはそのレベルでも手も足も出ない場合があるが、団長のような上位才能があればもっと低い段階ですら圧倒出来るそう。

 それとレベルは上がれば上がるほど、強さの上り幅が増えていくそうで、単純にレベル1から6に上がったのと、6から11に上がったのでは上昇するステータスが違うそうだ。

 俺は全てのステータスがレベルごとに10ずつ上がっていたのだが…………団長曰く、レベル1で一つのステータスでも10が上がるなんて、まずあり得ないようだ。


「シャーロット」


「はいっ」


「もしお前一人で無数のDランクとEランクの魔物を任せた場合、勝てるか?」


「はっ。私一人でも十分に対応出来ます。そこにCランク魔物が入っていようと、決して負けません」


 団長のレベルは既に130を超えているし、恐らく才能の高さも相まってその強さは人族の中でも折り紙付きなのだろう。


「ではレヴィとアスにはそれぞれ一つずつ対処して貰う。シャーロットはギブロン街の冒険者達と連携してもう一つのダンジョンからの魔物を対処しろ」


「「「かしこまりました!」」」

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