第39話 罪人

 - 侵入者排除により、ダンポ15,000を獲得しました。対象の絶望値はSランクに到達しており、ボーナスダンポ15,000を追加獲得しました。-



 ん?

 侵入者でダンポ15,000?

 以前一度で30万を超えるダンポを獲得した事はある。

 でもあれは、大量の兵士達から獲得したものだ。

 今回は侵入者は全く見当たらないが、どういう事だ?


 扉のノックの音が聞こえて、開いた扉からレヴィとアスが入って来る。


「マスタ~☆ たったいま~!」


 一瞬で玉座に座っていた俺の胸に飛び込んでくるアス。

 相変わらず可愛らしくて、良い香りがする。


「主様。帰還しました」


「二人とも、おかえり」


「マスタ~☆」


「うん?」


「ダンポは入りましたか~?」


「ああ。丁度3万ほど入ったぞ」


「うふふ♪」


 アスがどこか嬉しそうだ。

 やっぱりこのダンポはアスが何かをやったんだな?

 となると――――あの真犯人である冒険者ギルドマスターを始末したという事か。


「そういえば、今回は不思議な事があった」


「不思議な事ですか?」


 レヴィとアスが同時に首を傾げる。


「ダンポは本来15,000だったのだが、絶望値の追加で15,000を獲得して合計3万になったのだ」


「あは♪ 私の『洗脳』が効いたようです♪」


「『洗脳』?」


「はい♪ ガーディアン達にはそれぞれ得意な力があるのです☆ レヴィは『幻覚』を見せる力を持っています。私は『洗脳』の力を持っています~」


 幻覚に洗脳か。

 だからなのかレヴィの眷属達は幻覚を見せられているのか……。


「ん? 以前捕まえたヴァイオ達は?」


「彼らはレヴィの幻覚と私の洗脳を織り交ぜています♪」


 なんだかんだと仲良い二人だものな。


「主様」


「ん?」


「先程、絶望値がランク付けされていると仰いましたね?」


「そうだな」


「もしかしたら沈黙の蠍共も既にSランクに上がっているかも知れません」


 レヴィの言う通り、沈黙の蠍の連中は今でも『拷問の館』で永遠と続く悪夢を見せられている。

 そもそもこの絶望値というのはなんだ?


【絶望値とはダンジョン及びダンジョンマスター、眷属に対する絶望を感じた数値によって上昇していきます。絶望値が一定値を越えるとランクが上がり、Sランクでダンポが2倍となります。Aランクで1.8倍、Bランクで1.6倍、Cランクで1.4倍、Dランクで1.2倍となっております】


 ほぉ…………絶望値を確認する方法は?


【ダンジョンマスターのレベルが上昇すれば可視化出来るようになります】


 ん? ダンジョンマスターのレベルか……。

 そういや、あまり気にしなかったけど、1から2に上がったのはいいが、1から2に上がる時も俺が選択したというより、天の声さんが教えてくれて、ほぼ半強制的に上げたんだっけ。

 それに条件も書いてないから、どれくらいダンポが必要なのか分からないな。


【ダンジョンマスターのレベルは条件を達成しなければ、レベルアップ出来ません。条件を達成しても、レベルアップに必要なダンポが必要です】


 そういう事か……。

 次のダンジョンマスターのレベル3までの条件と必要ダンポはいくつだ?


【ダンジョンマスターLv2から3へ上昇には、100,000ダンポが必要です】


 100,000か。意外と少ない。

 いや、以前大量に増えたダンポは、たまたま手に入ったし、今回手に入れたダンポもせいぜい30,000だ。

 そこから思えば、100,000は相当大きいんだろうな。


「レヴィ」


「はっ!」


「ダンポがあと70,000必要だ」


「かしこまりました。沈黙の蠍をそろそろ狩りましょう」


「そうだな。それでダンジョンマスターのレベルも上がれるからな」


「では全員処分して参ります」


 レヴィがその場で消える。

 沈黙の蠍は全部で50人だったかな?


 待つ事数秒。



 - 罪人排除により、ダンポ250,000を獲得しました。対象の絶望値はSランクに到達しており、ボーナスダンポ250,000を追加獲得しました。-



 ん!?

 あの弱い50人が一人ダンポ5,000……?

 さらにボーナスも足せば、一人ダンポ10,000にもなっている。


 普通ならこんなに高いはずはないのだが、注目すべきは、『侵入者』から『罪人』になっている。


【侵入者を捕獲し拷問を続ける事で『罪人』となります】


 そんな技があったのか…………。


【ただし、『罪人』には『罪』がなければ、『罪人』として判定されません】


 誰でも良い訳ではないんだな。これが一番大切な情報だな。


「マスタ~? 何だか嬉しそうです~」


「ああ。アスとレヴィが頑張ってくれたおかげで、ダンポが沢山増えてこれから二人の為の事が出来るからな」


 少し頬を赤らめるアスがとても可愛らしい。

 扉が開き、レヴィが嬉しそうに戻って来た。


「レヴィ。思っていた以上に多くのダンポが手に入った」


「それはとても嬉しいです」


「ああ。どうやら我々に対して『罪』を犯した相手を拷問し続ける事で『罪人』として判定出来るらしい。通常の侵入者よりもずっと多いダンポが獲得出来た」


「!? 『罪人』ですか…………ふふっ。彼らには相応しい称号でございますね」


「そうだな。二人とも。今回は良く働いてくれた」


「「ははっ」」


「俺に出来る事なら何でも褒美を遣わす――――」


 何でも言ってくれと言いたかったのだが、言う必要もなかった。

 二人が真っすぐ俺の足元に抱き付いて来たのだから。


 これは…………俺に取ってもご褒美なのだから、こういう事じゃなくて、別な事求めて欲しいものだ。



 先日の夜と同じく燃えるような時間を過ごした。

 寧ろ、先日よりも違う意味で燃えたのかも知れない。


 …………最近段々と自分の体力・・が付き始めてる気がする。

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