第32話 足りないダンジョンポイント

 アメリアがレヴィに相談に向かって数分もしないうちにレヴィとアス、アメリアが真剣な表情で屋敷にやってきた。


「主様。ダンポが足りていないのは本当でございますか?」


 代表してレヴィが話す。


「そうだな。最近は獲物が取れずにダンポが増えていない。少し増えた感じはするが、このままでは動物を生成するのも大変かも知れない」


「っ……! 主様のダンポを増やせられなかったのは私達の至らなかった所でございます! 大変申し訳ございませんでした!」


 その場で地面に頭を強打するかの如く叩きつけて謝るレヴィとアスとアメリア。


「!? そんな事はない。頭をあげろ」


「いえ! 我々に罰を与えてくださいませ! これは全て――――」


 ほんの少し、レヴィが叩きつけた地面に赤い色が見える。

 俺は急いで彼女の下に駆け付け、そっと頭を上げさせる。


「主……様?」


「っ! 全員今すぐ頭をあげろ!」


「「は、はいっ!」」


 アスもアメリアも頭を上げると、その額には傷が付いて、真っ赤な液体が顔をたれ始めた。

 俺は急いで懐に持っていたハンカチを取り出し、レヴィの額の傷と血液を拭いてあげる。


「レヴィ。アス。アメリア」


「「「はいっ!」」」


 次々アスとアメリアの額も拭く。


「もう二度と身体を傷つけるな。これは命令だ」


「「「は、はい!」」」


 アメリアが少し震えているのが分かる。


「俺は自分の身体を傷つけるような眷属はいらない。自分の身体を大切にしろ」


「「「申し訳ございません!」」」


 また地面に頭を叩きつけよとして、全員がハッとなってそもなな土下座になる。


「お前達は俺の大切な家族・・だ。金輪際あんなことはしないように」


 三人は何故か返事もしないまま、その場で号泣し始める。

 そんな三人を抱きしめると三人とも震えながら俺に抱き付いてくる。


「お前達が傷つくのは見たくない。分かってくれるな?」


 三人はずっと「ごめんなさい」と涙ながらに言ってくれた。




 ◇




「それではこれからダンポ獲得の作戦を考える」


「「「「はいっ!」」」」


 食堂でアメリアにデザートを作って貰い、レヴィ、アス、アメリア、団長の4人で作戦会議となった。


「まず、ここ最近ダンポが全く増えなくなった理由は、1層に人が溢れすぎて、誰も死ななくなったからだ。油断していても他の狩人が魔物を狩るので、ダンジョンで寝ていても死ぬような人が出てこないという点だ」


 大きなダンポを獲得するよりは、地道に食料分のダンポを確保出来れば、それでもいいと思っている。

 だが、このままではその少量のダンポも獲得出来ないとなると、暫く肉がお預けの状態になるのだ。


「はい!」


 元気に手を上げるレヴィ。


「私が狩ってきます!」


「却下」


 しょぼんとするレヴィ。


「はいっ!☆」


 今度はアスだ。


「街から強そうなのを拉致して来て狩ります!☆」


「却下」


 しょぼんとするアス。


「え、えっと……はいっ!」


 珍しく団長が手を上げる。


「そもそも動物を生成なさるのですが、畜産業はしないのですか?」


「ん? 畜産業?」


「はい。王都では動物を飼って農業を営んでいたり、牛から牛乳を採取する酪農家だったりと食料を調達しているのです」


 その手があったか!

 何も動物を生成して食うだけが全てではない。


「ご主人様!」


 今度はアメリアが手を上げる。


「ご主人様は侵入者達とどういう関係を維持したいと考えていらっしゃるのですか?」


「そうだな…………俺の命を狙ってくるのなら刈り取るつもりだが、1層で生活をしている連中はそのまま育てても良いかなと思っている」


「それでしたら、彼らからダンポではなく、別な物を取られてはどうですか?」


「別な物?」


「はい。例えば、金属のインゴットをこのダンジョンで生まれない食材と交換を持ちかけるとか……」


「アメリア! お前は主様に下手に出ろというのか!」


 レヴィが怒り出す。


「よい。レヴィ。だがアメリアの言いたい事も分かる。要は商売をしてはどうかという事なのだろう?」


「はいっ!」


「それは考えた事がなかったな。果物、野菜が無限に取れるなら、無限に取れない物を外から輸入するのは、悪い手ではないかも知れない。ただし、それには相手を見極める必要がありそうだが…………」


「主様。その件でしたら、私に任せては頂けないでしょうか?」


「レヴィが?」


「はい。私の眷属は街で生活を続けさせております。彼らを使えば、容易い事かと」


「うむ! それは良い案だ。いっその事、ギブロン街にお店を出すのも悪くないな。アメリアの料理なら売れるだろうからな」


「っ!? ご、ご主人様…………」


「どうした。アメリア」


「申し訳ございません! どうか、そのだけは許してください! もっと頑張って料理も上手くなります! どうかお願いします!」


 ん? 罰? 何のことだ?


「主様。僭越ながら、私もその意見には反対させてくださいませ。アメリアはここで主様の健康的な食事を作らせた方が良いと思います」


 あ! そういう事か…………これは気づかず、不安にさせてしまったな。


「アメリア。俺の言葉が足りなかった。アメリアが向こうで料理をするのではなく、アメリアが考案した料理を眷属にさせてしまえば良いと思っていたのだ」


「ご主人様……! はい! 私、頑張ります!」


 うむ。アメリアはやっぱり笑顔が可愛いな。


「主様。そのお店は私の眷属奴隷を使ってもよろしいでしょうか?」


「ああ。構わない。アメリアと良く相談して決めてくれ」


「「かしこまりました」」


「アス」


「はい☆」


「アスのフロアは少し遅れるかも知れないが、我慢してくれ」


「もちろんです☆ 私はマスタ~の隣がいいですから☆」


 う、うむ。俺もアスが隣にいてくれた方がいいかも知れない。

 もちろんレヴィとアメリアもだ。

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