第31話 世界の常識の違和感
団長がうちの眷属奴隷になって数日が経過した。
俺はというと、さほど変化のない毎日を送っている。
平和が一番だ! 平和が!
ただな…………こう戦いがないと、眷属達がおねだりをしてこないのだ。
本当にこれには困ったモノで、もう数日も
あの日から一つ感じるのは、アメリアとアスが時折物欲しそうに俺を見つめるし、レヴィもスキンシップを繰り返して来る。
それに答えられない自分が少し情けないというか何というか…………。
ここ最近で大きく変わった点は二つ。
一つ目は団長による剣術の訓練が始まった。
アメリアだけでなく、妹弟達も団長による剣術の訓練が始まっていて、レヴィの提案のようで、もしもの時に俺を守れるようにとの事だ。
アメリアはともかく、まだ小さい妹弟まで木剣を振っている姿はとても癒されるというモノだ。
二つ目は、1層が人で溢れているのだ。
フロアを広げてFランク魔物を1999体にして、食材のドロップ率も10%にしたおかげなのか、冒険者だけでなく住民達もこのダンジョンに通うようになった。
アメリアの話では、成人した際に得られる『常識』とやらで戦いもある程度知識を得られるとの事だ。
そういう割にはアメリアは包丁を持って戦いを挑んだくらいだから、余程切羽詰まっていたのかも知れない。
そこで一つ問題になったのは、1層に1999体しかないFランク魔物の取り合いが発生しているのだ。
今の俺の前にあるモニターに映っているのもまさにそれだ。
「おい、そいつは俺らが先に倒したぞ!」
「そ、そんな……最初に私が…………」
「ふざけるんじゃねぇ! 先に倒した者が権利があるんだ!」
「そんな事、冒険者ギルドでは――――」
「ふぅ~ん」
冒険者格好の男は、権利を主張して落ちた食材を貰おうとする少女を嘗め回すように見つめる。
そして、すぐに彼女を蹴り飛ばす。
「おいおい、女風情が逆らうんじゃねぇよ」
「い、痛い…………」
「あ~あ~、俺様の靴を汚してくれて、どうしてくれるんだ!」
「そんな……私はただ…………」
「お金が払えないんなら――――身体で払えよ」
ああ……またこれか。
この世界で一番違和感を感じていたのは、誰もは当たり前のように性的な報酬を求める。
さらに言うなら、女性はそれをさも
現に彼女も仕方ないという表情を浮かべている。
実はこういう出来事だが、ダンジョン内では日常茶飯事だと団長は言う。
団長程の腕があるなら、ボコボコにするそうだが、自分より強い人に負かされて求められたら拒否感は全く出ないそうだ。
その時の団長は「そんな当たり前の事ですけど……?」と言わんばかりの表情をしていたのが印象的だ。
画面越しだが、男のソレを一所懸命にほぐしてやると、男はあっという間に昇天する。
本当にこの世界の女性は上手いんだな?
それはとにかく置いておいて、男は食材を女性に渡して、何もなかったように帰って行く。
女性も同じく食材を受け取っては、何もなかったかのようにその場で果物を食べ始める。
最初にこの光景を見て違和感を感じていたのだが、これがあまりにも日常茶飯事に起きるので、もしかしてこれが正常なのでは? と思うようになり始めている。
アメリアも特段違和感は感じないそうだ。
そこでアメリアに一つ質問をぶつけてみた。
「アメリア。あれが普通なのだな?」
「そうですね」
「では、どうして全員
一番の疑問は、これだ。
「えっと…………本番は避妊具がなければ、結婚した相手としかしてはいけませんから。こういうダンジョンにそういうモノを持ってくる人がいれば、やるかも知れませんけど…………多分誰も持って来ないと思いますよ?」
「ん? どうしてだ?」
「えっ? だって、そういう事が目的でダンジョンに入る人はいないと思うんですけど…………」
これがその時のアメリアの答えだ。
俺は違和感を感じずにはいられないのが、この答えだ。
ダンジョンで魔物と戦っている女性に、わざと近づいてはトドメを刺して、さも当たり前のようにアレを要求する。
それはモニターを見ていて明らかだ。
つまりだ…………俺にはそういうモノを求めて、ダンジョンに来てるように見えるのだが、アメリアは元々アレを求めてくる人は全くいないと言う。
だっておかしいではないか。
求めてないのに、ダンジョンに来たら高確率で女性を物色し始めるんだからな。
全員が全員という訳ではない。
ただ、一つだけ確信しているのは、ああいう出来事が起きた場合、高い確率で男は女にアレを求め、女はそれを必ず受け入れる。
団長が言っていたように、強い女性なら返り討ちにあって、ボコボコにされるの繰り返しだ。
中にはボコボコにした男から財布を貰って行く女性までいるが、二人とも、というかアメリア達もそれをおかしいとは全く思わないらしい。
そこで一つだけ仮説を立てる。
この言葉をよく思い返すと、俺には単純にとある言葉に聞こえる。
インセイン。
その言葉はあまり聞き慣れない言葉だが、俺はその言葉が非常に珍しくて覚えていたりする。
これが指すのは――――――『非常識』だ。
つまり、俺が思っている『非常識』は、この世界では『常識』となっている。
俺の仮説が正しければ、この世界での常識は俺が思っているような常識とはかけ離れたモノになるし、アメリアや団長と話していると、そういうところを感じ取れる。
「ご主人様?」
「アメリアか。どうした」
「はい! そろそろ動物が切れそうなので、またお願いします!」
アメリアに連れられ動物エリアにやって来ては、Eランク動物を10頭生成する。
そして、由々しき事態に陥ってる事に気が付く。
「ご主人様? 何か心配事ですか?」
「そうだな……ダンポはもう尽きそうだ」
ダンポが尽きてしまうと、アメリアの美味しいご飯が食べられない。
これほど大変なことはない。
「それは大変です! 私、レヴィ様に相談して来ます!」
そう話すと全力疾走するアメリア。
そこまでする必要はないと引き止めるつもりだったんだが…………遅かった。
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