第13話 肉じゃが(三人称視点あり)
アメリアの料理がとんでもなく美味しくて驚いた日。
俺の中の食欲が復活してしまった。
それで思ったのは――――
肉が食いたい!
そう!
肉が食いたいのだ!
転生して、未だ米や肉を食っていない。
アメリアの調査によれば、厨房には多くの調味料があって、材料さえ手に入ればあの『料理レシピ』の料理を作れそうとの事だ。
これは挑戦するしかないだろう。
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
Eランク動物生成 …… 100
Eランク鉱物生成 …… 100
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
ずっと気になっていた二つの項目。
まず鉱物は食事に結びつかないので、なしだとして、今回の狙いはEランク動物生成だ。
植物から想像するに、動物が出てくるだろうけど、それが一匹なのか、群れなのかは分からない。
しかし…………動物を生成したとして、どうやって捌くのだ?
「ご主人様? 心配ごとですか……?」
アメリアが俺の顔を覗いて来る。
すっかり風呂で綺麗になったアメリアの上目遣いにドキっとしてしまう。この歳になって女性にドキっとする日がくるとは…………と言っても転生したら17歳だったからな。
「あ、ああ。動物を作ろうと思うのだが、どうやって動物を捌くべきか悩んでいるのだ」
「動物ですか? それなら私がやります!」
「む? アメリアが?」
「はいっ! お任せください! 動物の世話も任せてください!」
「う、うむ。分かった。では植物エリアの隣に動物エリアを作ろう」
食堂からみんなで植物エリアの東にあるスペースにやって来た。
これからここに動物エリアを作る予定だ。
まずEランク動物生成を行ってみる。
ダンポはまだ5,000以上残っているので、余裕がある。
100を使い、動物を生成する。
目の前に光が広がり、中からニワトリが5羽現れる。
「凄い! ニワトリが5羽も!」
思っていた以上に前世でいたニワトリのままだ。
異世界なのに、向こうと同じ動物がいるのか。
ニワトリ達は特に逃げる素振りも見せず、その場にとどまっている。
本来なら逃げ回ったりするはずなのに、眷属だからなのか全く俺から遠ざかったり、逃げたりしない。
そういえば、ニワトリも復活するのか?
【動物は復活しません】
ふむ。
動物は一回きりなんだな。
そう考えるとダンポ100を使い切る形になるから、ダンポの費用は高い方だな。
それにしても、Eランクはニワトリって事か?
【各ランクの生成は、その時によって中身がランダムです】
ランダムなのかよ!
そういうのは最初から教えてくれ!
という事は、植物もFランク植物で作ったリンゴなどもEランク植物で作れるって事だな?
試しに、植物エリアにダンポ300を使い、30個の木々を生成してみる。
たしかに、中にリンゴもあれば、ジャガイモ、にんじん、ほうれん草なども見え、思いのほか色んな種類の実がなっていた。
「これからは無理に全部取らなくてもいい。必要な分だけ取って、食事を作ってくれ」
「「「「「はいっ!」」」」」
アメリア達に料理などの色んな仕事を預けて、出される料理を食べながら自由気ままな生活が始まった。
◇ ◆ ◇ ◆
「アメリア」
「はい」
「…………妹達の名前を教えてくれ」
「あっ! 忘れてました! ごめんなさい」
アメリアがペコリと頭を下げる。
長女のアメリアは、長い茶髪で一目見ただけで美人さんなのが分かる。
まだ15歳との事で、18歳で成人するこの世界なため、成人はまだだそうだ。
その下の14歳の妹のマリ。
アメリアに似てて可愛らしいが、短髪で活発な印象がある。
13歳の弟のケン。
可愛らしい顔なので、数年もすればイケメンに育つに違いない。
12歳の弟のカール。
少し内気であまり喋らないが、気が利いて妹達の面倒をよくみている。
11歳の妹のリース。
姉弟の中で最も活発で、ずっと走り回っている。
言葉足らずでよく俺を呼びに来るのがリースだ。
末っ子の10歳のアリー。
少し恥ずかしがり屋さんなのがとても可愛らしい。
全員、最初は小汚い子供な印象だったが、風呂に入ってから綺麗になって可愛らしくなった。
というのも、どうやらこの世界、殆どの人が美男美女だ。
それなりに差はあるし、中には美男美女ではない人もいるけど、美男美女率が高い。
アメリアの話から、この世界での美人美女は少しふくよかな人を指す言葉らしい。
…………それって単純に食べ物が食べれているよって言ってるだけだと思うんだがな。
「ご主人様! 鳥肉とジャガイモがあったので、【ニクジャガ】というモノを作ってみました!」
俺の前に出された茶碗には、美味しそうな醬油の香りのスープと、その中から明るい黄色のジャガイモと鳥肉、赤いにんじんが見えている。どこをどう見ても肉じゃがに違いない。
香りだけに思わず唾を飲み込む。
真っ先に転生して初めて食べる肉に箸をのばす。
それにしても、厨房には食器もあって本当に助かるな。
元日本人たるもの、箸は普通に使えるからな。
俺が箸で器用に肉を掴むと、アメリア達が「おお~」と驚きの声をあげる。
そして、俺はそのまま鳥肉を口の中に入れた。
「ん!? う、う、美味い!」
口の中に広がる久々の醬油味と香り、鳥肉の歯ごたえと淡泊な肉の味わいが今までずっと忘れていた前世の食事を思い出させてくれる。
これを前世で食べても決して美味しいとは思わないだろう。
でも普段から食事にありつけないこの世界で、これほど美味しいモノは中々口にするのも難しいと思う。
「えへへ、頑張って作りました! これからも色んな料理を作りますね!」
「ああ、頼む」
満面の笑みを浮かべて喜んでくれるアメリアが可愛らしい。
◇ ◆ ◇ ◆
グランドダンジョンの入口前。
「ほぉ、ここが例のダンジョンか」
「はっ、どうやら高い確率で下級魔物から果物が落ちるそうです」
「なんて素晴らしいものだ。入口の封鎖を急げ!」
「はっ!」
兵士長の命令で、多くの兵がダンジョンの入口を封鎖し始める。
入口の封印に「こちらのダンジョンは食料が手に入るダンジョンのため、領主様の所有物となる」とデカデカと書かれていた。
数日。
食料が簡単に手に入る初心者ダンジョンは領主により封鎖され、多くの冒険者が悔しい思いをする。
ダンジョンに全ての冒険者が消えて、領主の兵達が入口前に集め始めた。
「これから1層の下級魔物を狩り尽くす! 一時間で復活するらしいので、これから定期的に食料を手に入れるぞ! 多めに手に入れた者は領主様からご褒美があるそうだ!」
兵士達から大きな歓声が広がる。
そして、一人また一人が初心者ダンジョンの中に入って行く。
指揮を任されている兵士長も明るい未来を楽しみにしていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます