第12話 食堂
「では、これから話す事を復唱するように!」
「「「「「はいっ!」」」」」
「一つ! 眠る時間は毎日7時間!」
「「「「「一つ! 眠る時間は毎日7時間!」」」」」
「一つ! 1時間働いたら10分休憩を取ること!」
「「「「「一つ! 1時間働いたら10分休憩を取ること!」」」」」
「一つ! お腹が空いたら、好きなだけ食事を取ること!」
「「「「「えっ?」」」」」
いや、疑問形も声がそろってるよ。
「復唱!」
「「「「「ひ、一つ! お腹が空いたら、好きなだけ食事を取ること!」」」」」
「一つ! 必要なモノがあったら、すぐに相談すること!」
「「「「「一つ! 必要なモノがあったら、すぐに相談すること!」」」」」
「よし、以上だ。また追加する事があるかも知れない。とにかくこれらを絶対に守るように!」
「「「「「はいっ!」」」」」
みんなは恐る恐る取ってきた果物や野菜を口にする。
少しずつ遠慮がなくなればいいなと思う。
そもそもこの果物は無限に生えてくるし、足りなければ木々を増やせばいい。ダンポも10と破格の性能をしているからな。
さて、アメリア達が住まう家をどうやって建てようか…………。
6人姉弟だが、みんな同じ部屋の方が安心するかも知れない。
みんなが泊まれるくらいに大きな家の方がいいな。
1,200ダンポを使い、40坪の平屋を建てよう。
場所は
それにしても40坪の平屋って思っていたよりも広いな?
アメリア達と一緒に中を覗く。
中は広いリビングが続いていて、そこから左右にトイレと風呂があり、トイレが二つずつで計四つ、風呂が一つずつで計二つある形になっている。
「ご主人様、これは何ですか?」
「これはトイレというやつだ。排便などはこちらにするといい」
普段から排便などは集めて捨てていたらしくて、こういう洋式トイレは初めて見るらしい。
取り敢えず、使い方を一通り教える。
それにしても配管とかないのに、どこに捨てられることになっているのだろうか? それに水だってどこから出ているんだ? まあ、異世界だし、細かい設定を気にしても仕方ないか。
続けて風呂にやって来た。
風呂は常に源泉かけ流しの風呂場になっている。
最初にシャワーに付いて説明し、何故か無限に出てくるシャンプー類の使い方も説明する。
最後にシャワーが終わったら風呂に入ると教えてあげた。
そういえば、俺もまだこちらに来てから風呂に入ってないな?
自分の家も作った方がいいのだろうか。
「ご主人様」
「どうした?」
「えっと、あれは何ですか?」
「あれは、マットというモノで、寝る時はあれの上で寝るのだ」
「ふかふか! お姉ちゃん! これすごくふかふかだよ!」
子供らしくふかふかのマットレスに感激したようだ。
「ご主人様もこちらでお眠りになられますか?」
「ん? ここはお前達の家だ。俺はここでは寝ない」
「…………」
少し寂しそうな表情を見せるアメリア。
それから暫く時間が経過した。
数時間後、みんなが昼食を取って、アメリアがやってくる。
「ご主人様」
「どうした?」
「どうしてご主人様のお家はないのですか?」
「ふむ。俺はこの玉座で十分だ――」
「いけません! 私達にあれほど素晴らしいモノをくださったのに、ご主人様は椅子で眠るなんて、とても許されません! どうか私達と一緒に眠ってください!」
アメリアが必死に訴えてくる。
「わ、分かった。ただ、俺は俺の家で眠る」
「かしこまりました……」
少し残念がるアメリアを横に、玉座の周囲に広い家を作る。元々建てるつもりではあったからな。
普段から玉座にいるし、ダンジョンコアも玉座の中に隠れているから、周囲を家にして隣に寝室を作る。
そこからさらにトイレや風呂場も作る。
それにしても、転生してからトイレって使った事ないな? 自分の身体ってどうなっているんだ?
外に出てみると、アメリアが心配そうに入口で待っていた。
「アメリア? どうした」
「い、いいえ! ご主人様、集めた食べ物はどこに集めますか?」
そう言えば、食べ物を準備してなかったな。
もう一つ建物を作り、食堂にしよう。
前世の記憶を辿りながら殆ど使った事ない台所を想像しながら、食堂を作ってみる。
「ご主人様? これはどういう所ですか?」
「ここは食堂。これから食べ物をここに集めて、ここで食べよう」
アメリアを連れて中に入ると、どこにでも見れる食堂が広がっていて、長テーブルに30人ほど座れるようになっている。
厨房には、複数の冷蔵庫や電子レンジ、ガスコンロや水流し台も常備されている。
アメリアにそれぞれの設備を一通り説明する。
「これから食べ物は冷蔵庫の中に入れてくれ。この中では食べ物を冷たくして長期保存が出来るようになっている。
こちらの電子レンジは中に食べ物を入れてこのボタンを回して秒数を決めたら、中に入っている食べ物を温める事が出来る。
ガスコンロはボタンを押すとこうして火が付く。これで料理を作る事が出来る。流し台は皿洗いや料理用に使える。以上、何か質問があるか?」
「え、えっと…………全部覚えましたっ!」
一所懸命に聞いてくれて、ちゃんと覚えてくれたようだ。
それにしてもここで使う電気やガスってどこから出てくるのだ?
とにもかくにも、使えなくなるまで使って、使えなくなったらまた作ろうか。
アメリアは厨房の設備を一つ一つ確認して回る。
後は、彼女を残し、俺は玉座に戻り、ダンジョンを見渡す。
思っていた以上に、人が溢れている。
彼らの言葉を聞くと、狩り中に食事が取れるって幸せだーって叫んでいる人までいる。
なるほど…………やはりこの世界での食事ってそれほどまでにハードルが高いんだな。
アメリア達に食事は自由に取っていいと言っても、不安がるのは仕方ない事なんだな。
その時、扉にノックの音が聞こえ、妹が入って来た。
「ご主人しゃま!」
「どうした?」
「えっと、お姉ちゃんが食事の準備が出来たそうです!」
「食事? 分かった」
食事って何の事だ? 頼んではいないのだが……。
食堂の近くに行くと、美味しそうな匂いがふんわりと流れてきた。
久しぶりの鼻を刺激する美味しそうな匂いに、思わず唾を飲み込んでしまった。
中に入ると、テーブルに座って皿に載っている料理を食い入るように見つめている弟達と、嬉しそうにこちらを見つめるアメリアが見える。
「ご主人様! こちらにあった『料理レシピ本』というものから、料理を作ってみました! 味見ではとても美味しかったので、ぜひ食べてください!」
アメリアが一冊の本を持って、嬉しそうに話す。
まさか厨房にそんな物があったとは……。
まあ、それはともかく、久々の美味しそうな匂いに俺は思わず早足でテーブルに座る。
どうやら俺が食べるまでみんなは食べない事を決め込んでいるようだ。
目の前の皿には、美味しそうな果物が盛り付けられている。
匂いから既に甘いし、盛り付けも可愛い。
イチゴと桃が可愛く形付けられていて、ブロッコリーときゅうりが盛り付けられている。
単に盛り付けただけにも見えるが、全部熱を通したようで、湯気が少し立ち上っている。
それに、それにも調味料が使われている色合いだ。
「ご主人様。棚に調味料がありましたので、それで作ってみたんです!」
ほぉ……棚に調味料が…………便利過ぎだろう。
まあ、自分が思っていた台所って、調味料も一体化していたけども……。
そんな事はどうでもいい。
今は目の前の美味しそうな匂いの食事を食べることにする。
これも棚にあったのか、出されたフォークを手に取り、桃を刺すと柔らかな実が今でも崩れそうだ。
急いで口に運ばせる。
「ッ!?」
思わず、次々口に運ぶ。
何だこれは………………。
「う、美味過ぎる!」
あまりの美味しさに驚いてしまった。
元々それほど甘味もなかった果物が、熱を通す事で甘さをより増していて、酸味を殆ど感じずに美味しさが際立つ。
次々、色んな食べ物を口に運ばせて、どれも美味しくて驚いた。
「ご主人様、いかがでしたか?」
「うむ! とても美味しかった!」
「えへへ、これからも料理は私にお任せください!」
「分かった! 必要な物があったらすぐに言ってくれ」
「はいっ!」
アメリア達もすぐに食事を取り始め、妹弟達も美味しいと声を上げた。
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