第6話 初めての2層罠発動
不味い果物と野菜を食べ続けてはや十日。
この世界にもちゃんと時間はあり、
ただ違うのは、曜日でそもそも曜日感覚はなく、1年が12か月であり、各月が30日ずつあるので、1年で360日になっている。
この世界の人々は曜日がないから月日だけで話していた。
さて、この十日の結果からして、まず中堅パーティー。
どうやら2層のオークがダンジョンボスだと思ったらしく、それを倒せるようになるまで1層でレベル上げをしている。
たった十日だけど、1層に溢れているFランク魔物でレベルを上げ始め、5人が15に、獣人族の女性が18に上がっている。
たった5しか上がってないのに、随分と動きが良くなっているのが不思議だ。
その他といえば、初心者パーティーが30パーティーくらい入って来た。
その中でも半数は道を迷い、途中で力尽きていて、他も入口付近で道に迷わない程度に狩りを続けている。
5しか残っていなかったダンポは、4,700ダンポも獲得している。
その中から400ダンポを使い、1層にFランク魔物をさらに400体配置させて、よりレベル上げを誘えるようにした。
残り4,300ダンポの中から、最初の予定通り、2層にオーク8体、コボルト90体を配置して、2,600ダンポ残っている状態だ。
1層を訪れているパーティーの話をモニターで盗み聞きして分かった事がある。
一つ目、彼らは冒険者という職業をしているらしい。中には護衛を雇ってダンジョンを探索して、自分達だけで狩れるダンジョンだと分かると、次回からは自分達だけでくるそうだ。
二つ目、彼らがダンジョンに来る目的は大きく分けて二つあり、一つは祝福を受けるため、一つはダンジョンでたまに落ちるレアアイテムを拾うためだそうだ。
まず祝福というのは、単純にレベルアップの事を言っているようで、彼らは自分のステータスやレベルを確認出来ないようだ。
二つ目のレアアイテムなんだけど、天の声さん曰く、ダンジョンマスターのレベルが上がると『稀にレアアイテムドロップ』というのを付けられるそうだ。これは細かいルールも決められるようで、なぜこんなデメリットみたいな事が行えるかというと、侵入者が倒れた時の強さって何も純粋なステータスだけではないらしい。
つまり、その強さには『装備』も入るそうだ。より強い装備を持った侵入者を倒せば、より高いダンポを獲得出来るとの事だね。
三つ目、冒険者は基本的に他パーティーに口出ししてはいけない。それがアドバイスでも忠告でもやってはいけないルールだそうだ。何故冒険者ギルドにこんなルールがあるのか謎だけど、こちらにとっては都合の良いルールだ。
四つ目、冒険者の大半は平民以下である事。彼らの話す内容からこの世界は貴族というやつらが牛耳っているけど、彼らは平民から税を巻き上げている害虫と話していた。どこの世界も権力者ってやつはよ…………。
え? 俺はモブを使ってゴロゴロしてるのに何を言ってるかって? い、いいんだよ! 俺は! だってモブを使ってあげているんだから!
………………。
五つ目、どうやらこの世界の出生率はとんでもなく高いらしい。子供はすぐに産む事が出来て、俺が想像しているような子供時代は存在せず、生まれてからすぐにある程度の知恵が与えられるみたい。
10歳で才能を開花するらしくて、才能を開花したらすぐに働き出すそうだ。
このダンジョンに入った初心者パーティーの中にも10歳児がいたりしたけど、最初は日本での感覚の違いで一瞬助けてあげるべきか悩んだくらいだ。
さて、そんな初心者ばかりのダンジョンだが、遂に中堅パーティーが2層に挑もうとしていた。
◇ ◆ ◇ ◆
「みんな、オークは強い。だから少しでも危ないと思ったらすぐにあの部屋から逃げて」
「わ、分かった!」
モニター越しに、中堅パーティーの緊張感が伝わって来る。
挑まれる側としても、緊張感が走る。
まさかとは思うが、うちのオークとコボルト達が負けるはずはないと思うけど、実はめちゃめちゃ強くなりましたという可能性もある。
なんせ、今ではポイズンフロッグを鮮やかに倒しているからな。
2層に入った彼らは、部屋の中に佇んでいるオークを睨む。
「みんな! 無理はせずにオークの攻撃は出来るだけ避ける方向で!」
「「「「おー!」」」」
「セルダ、悪いが今回はセルダも戦いに入って貰うぞ」
「もちろん。上級魔物は手強い。パーティーとして力を貸す」
「ありがとう。では、みんな油断せずに行こう!」
彼らはゆっくり、でも確実に一歩ずつ部屋に向かって行く。
その姿にここ最近忘れていた緊張感が俺を襲う。
自分の心臓がドクンドクンと鳴る音が聞こえてくる。
そして、遂に彼らは部屋に入った。
最初に仕掛けたのは、オークの方で、彼らが部屋に入るや否や飛びかかり、手に持っていた斧を振り下ろした。
石を叩き壊す音が画面越しですら伝わって来る。
オークって思っていた以上に強いのか?
散ったパーティーは、前衛二人がオークの敵意を保ちつつ、後衛の魔法使いと獣人族の弓攻撃が続く。
もう一人の男は後方で剣技パワーを溜め始める。
このパーティーの戦い方は、剣技パワーを溜めるまで他のメンバーがちまちま戦って、溜まった剣技パワーを叩き込む戦法を取っている。
今ではポイズンフロッグも一撃だったりする。
しかし、今回はポイズンフロッグとは相手にならないほど、オークの動きが速い。
あの巨体で重力を無視した動きに、開いた口が塞がらない。
どれくらいのステータスであんなに速く動けるんだろう?
そんなことを思いながら眺めていると、リーダーの男がオークの一撃を防いでみるが、あまりの力に部屋の壁に吹き飛ばされ埋もれる。
「ヘンゲ!!」
もう一人の前衛の男がオークに体当たりをするが、オークはびくともしない。
すぐにオークの左腕に殴られた男は、おもちゃのように何度もバウンドしながら吹き飛んだ。
魔法使いの悲鳴が聞こえた時、剣技パワーが溜まったようで後方の男がオークに剣技を叩き込む。
石を叩く音とは比べものにならない鈍い音が部屋中に響く。
「や、やったか!?」
男の剣技がオークに直撃し、全員が一瞬勝ちの希望を見出す。
しかし、直後びくともしなかったオークの斧により男が身体の上と下が離れる。
「い、いやぁああああああ!」
魔法使いの女性の悲鳴が鳴り響く。
「た、退却だ! に、逃げるぞ!」
獣人族の女性がそう叫んだ。
――――――その時。
部屋中に絶望を知らせる音が聞こえる。
彼らが部屋に入って60秒。
入って来た入口は、扉が閉まり、元々なかったような壁になった。
どこが出口なのかすらわからず、壊す事も出来まい。
それと同時に反対側に扉が開く。
「ッ!? み、みんな! 向こうに扉が開いた! 逃げるぞ!」
冷静な判断を下した彼女は、泣き叫んでいる魔法使いの女を連れ走る。
しかし、次の瞬間。
扉の奥から、中を覗く真っ赤な瞳が無数に光り輝く。
そして、一体、また一体、中に入って来る。
「う、うそ…………何がどうなっ…………て…………」
新たに現れたオーク10体とコボルト100体に、獣人族の女は絶望したようにその場に崩れた。
吹き飛ばされた男達が彼女達に向かって走るが、間に合うはずもなく、現れたオークとコボルトに彼女達が飲み込まれるのをその場で見ることしか出来なかった。
「くそったれがあああああ!」
「うわああああああ!」
目に大きな涙を浮かべた男達がオークに仕掛けるが、たった一撃で彼らの胴体も宙を舞った。
――――投稿頻度――――
ここまで『ダンジョンに落ちた転生者~社畜は二度と嫌なので、拾ったダンジョンコアで引きこもり生活確定~』を読んで頂きありがとうございます。
昨日と今日で新作投稿により3話ずつ投稿しましたが、明日から12:00に1話ずつ上がるようになります。
毎日投稿を頑張って行きますので、この続きが楽しみだと思った方がぜひ作品フォローをして楽しんでくださると嬉しいです。
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