第5話 初心者ダンジョン(冒険者視点あり)
駆け出しの初心者パーティー3人のレベルは5で、得られたダンポは一人40。三人で120。
これで分かったのは、そもそもの個体で能力の数値が変動するのは間違いなさそう。
ただ、レベル1~4まで8、5~9まで10、10~15まで12とかに上がっていくのかも知れない。
それを検証したいけど、レベルが高いけど弱い人が倒れてくれないと分からない。
ただ中堅くらいのパーティー6人が倒れてくれたら、多少は分かるかも知れない。
せっかく手に入ったダンポ100を使い、2層にオークをもう1体配置する。
それから暫く中堅パーティーを眺めているが、非常に連携が取れていて、これぞパーティーって感じがして、見ているこちらまでワクワクしてくる。
リーダーは獣人族の子だと思っていたけど、意外にも人族の男性が仕切っている。
獣人族の子はどうやら護衛として雇われているみたい。
食事中も別で食事を取っていたからね。
それから少しして、また駆け出しに見えるパーティーが入ってくる。
みんなレベルが4とかだったり、他のパーティーは一人だけ8で他が5とかと色んなパーティーがいる感じだった。
色んなパーティーを眺めながら、中堅パーティーを眺めてどういう風に戦うのかを観察し続けた。
◇ ◆ ◇ ◆
「セルダ! お前の意見が聞きたい」
俺が声をかけると、少し離れた位置で警戒をしている獣人族のセルダがこちらに歩いてくる。
「このダンジョンの難易度か?」
「ああ。ここまでFランク魔物しか出現していない。それに復活まで60分となるとまだ生まれたばかりのダンジョンで違いなさそうだな」
「…………一つだけ気になる点がある」
「気になる点?」
「下級魔物しかいないのは分かるが、どうして固まっていないのかが分からない」
「どうして固まっていない?」
「本来のダンジョンなら広場に10体はまとまっていたりするものだ。なのに、ここはそういう纏まりの魔物が一切出てこない。それが少し変だ」
そういう事か。
確かに言われてみれば、ここに来るまでに出てくる下級魔物は全部1体から多くて3体だった。
3体だったのも、もとは1体なのに近くから襲って来てようやく3体とかになっている。
「ここは――――――あまりにも簡単すぎる。
祝福。
戦いを続けて、魔物を沢山倒したときに、俺達に与えられる祝福は、その回数で『
誰もが生まれたら1として、祝福を繰り返していくと1ずつ上がって言うのが常識だ。
俺達は既に祝福を9回も経験し、全員がレベル10と言う事が出来る。
今回は未知のダンジョンに入る為、レベル15になるセルダに護衛を依頼した。
彼女はその俺達よりも沢山の祝福を経験しているだけあって、とても頼りになる護衛だ。
そんな彼女が変に思うこのダンジョンは、突如現れた初心者ダンジョンだ。
名前は『グランドダンジョン』と書かれていたが、中身はただの初心者ダンジョンなので、少し拍子抜けした感じはある。
「俺達なら1層の奥まで行けるだろう。ベラ、マッピングはどうだ?」
「ええ、上手くいってるわ。それにしても魔物は弱いのに、地形がものすごく入り組んでいるわ。初めてくるパーティーだと出口を見つけられずに全滅するパーティーもいそうね…………」
ベラの言葉を聞いて、思い出すのは、俺達より一歩前に入った初心者達。
「あの子達は無事に出られたのだろうか……」
「ヘンゲ、他の冒険者に口出しするのは、マナー違反だぞ。彼らは彼らなりにやるさ…………まあ、全滅する場合も多いだろうけどな」
冒険者ギルドの鉄則、その1。
決して他のパーティーに助言などの口出しは慎むべし。
冒険者は己の足で歩み進める者なり。
きっと彼らはこのダンジョンを出られない。
俺達はそれを知っていても、彼らに口を出す事は出来なかった。
冒険中の死は、冒険者にとっては名誉ある事とされているのもあるから仕方がない。
「さて、そろそろ行くぞ。日が暮れるまで2層を見ておきたい」
「そうだな。セルダの言う通り、2層を見ておきたいからそろそろ行こうか」
「「「「うん」」」」
ダンジョンでは魔物の復活以外で急襲される心配は殆どない。
たまに隠れていたりする魔物はいるが、下級魔物にそういった魔物はいないので、休憩もゆっくりできる。
セルダは念のため、自己スキルで周囲を警戒し続けていたけど。
しばらく同じ景色のくねくねした洞窟を進む。
すると一際広い場所に出て来た。
ここに来て初めての広場だ。
「待って、中級魔物がいる」
セルダの声に緊張が走る。
恐る恐る広場の中を覗くと、中級魔物『ポイズンフロッグ』が1体だけ佇んでいる。
「フロアボスだろう。他に気配は全く感じない」
「よし、これから『ポイズンフロッグ』を討伐する! 油断するなよ! 毒にかかったら生きて出られないと思え!」
「「「「あい!」」」」
「セルダは援護を頼む! では、行くぞ!」
俺達は一斉に広場に入って行く。
それに反応した『ポイズンフロッグ』は、長い毒舌を伸ばし攻撃してくる。
俺ともう一人のメンバーが持っている盾で舌を跳ね返す。
すぐに後方から真っ赤に燃える火球――――ファイアボールが飛んでいく。
命中した直後、今度はセルダから放たれた弓矢が命中する。
ダメージを負って暴れるポイズンフロッグに、俺が吹き飛ばされる。
「ヘンゲ!」
「俺は大丈夫だ! 盾で防いでいる!」
「――――ファイアボール!」
ファイアボールがもう一回ポイズンフロッグに命中する。
こんなに攻撃してもびくともしないタフさに嫌気がさす。
よりにもよって、中級魔物でも強い部類のポイズンフロッグがボスだとは……ここまで下級魔物ばかりだったから、フロアボスがここまで強いのは納得だ。
「ヘンゲ! 剣技溜まったぞ!」
「分かった! 地割り行くぞ!」
「「「おー!」」」
俺ともう一人のメンバーが盾で特攻をかける。
俺が暴れるポイズンフロッグの舌を跳ね返し、もう一人が身体に体当たりをする。
直後。
「剣技! 地割り!」
黄色い魔力が込められた大剣を持った仲間が、ポイズンフロッグに一撃お見舞いする。
周りが揺れるほどの攻撃でポイズンフロッグを叩きつける。
すぐに距離を取って、次の攻撃に備えるが、攻撃がこない。
その時。
俺達の身体から虹色の光が溢れた。
「「「「祝福だ!」」」」
どうやらポイズンフロッグを倒せたらしい。
激闘の末、俺達はその場に座り込んだ。
まだ少し余裕があるセルダは俺達に飲み物を渡してくれる。
彼女の一番の役目は、俺達が危機な状況で真っ先に救援に入る役目なので、見守ってくれていたのだ。
「鮮やかな連携だった」
「おう、うちらはずっと一緒にパーティーを組んでいるからな」
数少ない自慢の一つだ。
少し休んだ俺達は、ポイズンフロッグが復活する前に、一度2層に降りる。
2層は1層とは違い、真っすぐ続く道と、その先が部屋になっていた。
「最深部か! ということは、あいつがダンジョンボスだな!」
思わず、ダンジョンボスにたどり着けたのが嬉しくて声に出してしまう。
「待って、あれは上級魔物だ。まだ戦うべきではない」
「分かってる! 上の階層で祝福を増やそう!」
「「「「おー!」」」」
その時、セルダが部屋に近づき、持ってきた石を中に投げた。
「セルダ? 何をしているんだ?」
その時、中央に佇んでいたオークが目にも止まらぬ速さで、投げられた石に大きな斧を振り下ろす。
部屋全体が揺れる衝撃がここまで伝わってきた。
「罠はなさそうだ。これであいつを倒す手立てを講じれば、レアアイテムも手に入れられるかも知れない」
恐怖しかなかったが、セルダのレアアイテムという言葉に、俺は心躍った。
その日から、俺達は1層で祝福を増やすため、毎日狩りを続ける。
2層のボスがオークというのはとても怖いが、ダンジョンボスが上級となると少し弱い方である。
普通なら最上級魔物がダンジョンボスの傾向があるからだ。
俺達があれを倒す日が来るまで、誰にも現状を話さずにおくと決め込んだ。
こんな一攫千金のチャンス、他の人に奪われてたまるか!
俺達は毎日必死に狩りを重ねた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます