第18話 瞳

え?


今見たのは、錯覚なのか?



「兄上どうかしましたか?」


アベルの書斎の机には薬瓶のような物が並んであった。


「アベル 、どこか調子が悪いのか?その瓶は何だ?」


アベルは瓶を隠す素振りはみせず、慌てる様子もなかった。


「少し体調が優れなくて、母上の知り合いの薬師に直接栄養剤をもらっているのです。でも飲めばすぐに治りますので、ご安心ください」



「そうなのか?いつからだ?」



「さぁ、幼き頃でしょうか?頭痛がしたら飲むようにしていますので」



「それは心配だな」



「ところで兄上はどうしたのですか?もしかしたらイザベラ嬢の事でしょうか」



アベルは申し訳なさそうな顔をした



「そうだ。アベルはいつからイザベラ嬢に好意を持っていたんだ?」



「兄上に申し訳ないと思っていました。でも思うだけなら大丈夫かと。でも兄上の1番の婚約者候補なのはわかっていました。だってこの国の宰相の令嬢だし、イザベラ嬢も兄上を慕っています」



「イザベラ嬢が私に?」



「兄上はイザベラ嬢を全く見ていないからわからないんです!でも婚約する前で良かったです。兄上の婚約者に名前が上がれば、婚約破棄になったとしても王家のものとは婚姻はできなくなっていましたから。兄上には感謝しています」



「しかしカーリー妃が凄い剣幕で私のところに来たが、あれを説得させるには、難しいんじゃないのか?」


「母上はデュラン公爵家との繋がりが切れるのを怖がっていますそれが何故かわからないのですが、私は元からミア嬢を婚約者にするつもりなどなかったです」



私はもう少しアベルと話せば良かったのかもしれない


「アベル、もしもの話しなんだが、私がイザベラ嬢と婚約者に決めた後でイザベラ嬢と婚姻をしないまま他の令嬢を婚約者に決めたならアベルはどう思う?」



その言葉に急に顔色が変わった。



「ありえません!イザベラ嬢の幸せは願えても、イザベラ嬢を苦しめる者を俺は許せない。でも兄上を尊敬している俺はどうするのか想像できません。でも婚約はしないのでしょう?」



アベルの意外な1面は 一瞬恐怖を感じる表情をした。



「アベルは私が王位継承権を譲るとしたら、この国を守ってくれるか?」



アベルはいつもの表情に戻ってクスリと笑った。



「何を言ってるんですか?兄上のような王になるべくして生まれた方に俺は敵いませんよ。おれは兄上の補佐をしてこの国を守りたいのです。私には私の役目があります」




アベルの瞳は金色で、光輝いている。嘘偽りなき言葉なんだろう。



「そうか・・・・アベルとイザベラ嬢がうまくいくようにに計らいたいが今結果を急ぐとうまく行かないだろう。少しカーリー妃の怒りが収まるまで動くなよ」



「それでは俺はミア嬢と婚約させられるかもしれないのです!」


「私から国王様に言って、一旦全てをストップさせよう。カーリー妃が何を言ってもイザベラ嬢の名前を出さないでくれるかな?」



アベルは納得いかない顔をしたが、


「兄上が言うなら、従います。でもイザベラ嬢が他に婚約者を決めそうになる前に何とかおねがいします」



「それは何とかするし、私も一度イザベラ嬢と話しをしなければならないのだろう。その時イザベラ嬢が落ち込んでしまったなら、アベルがそばにいてあげてくれ」


アベルは切なそうな顔をしたが、



「はい。イザベラ嬢にお話しする際は俺を呼んでください」 アベルの瞳の色が気になったがあえて何も言わずに部屋を出た。 王位継承権に興味がないのなら問題はないが、国王様が知ればアベルに対して態度が変わるかもしれない。 ただの私の見間違いかもしれないし。 部屋を出てすぐ 母上に頼んでおいた影を1人呼んだ



『カイル』



どこからともなく水色の髪色をした20歳ぐらいの男性が私のすぐ目の前に現れ膝をついて頭を垂れた。



『気になるのが2点、アベルの瞳と書斎の机の上にあった瓶。調べれるか?』



『御意』


それだけいうと その男性は目の前からスッといなくなった。

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