第15話 王子様の手紙

私がフレデリク様のお屋敷で意識を失ってからは大騒動だったらしい。


ただ、第一王子様と第二王子様が騒動の渦中にいるのはいろいろな噂を招いてはいけないので、全てフレデリク様が対応してくださったらしい。



翌日にはお見舞いの花と手紙が届いた。



差出人は


『ルイ』



第一王子ルーカス様だった。





『親愛なるクロエへ 何故君が、そんなにも体調を崩してしまうのか心配でたまらない。 すぐに会いに行けない私はクロエのそばにいては駄目なのかもしれないが。 一度クロエと話しがしたい。 王子としての命令ではなくルイとしての1人の男性としてクロエにお願いする。 クロエが私と話したいという日が来るまで何ヶ月も何年も待つよ だからそれまではクロエも誰かを選ばないで欲しい。 ただ、気にしなくてもいい。 ただの願いだから ルイより』






「何これ?」



私は手紙を読んで顔が赤くなる。


近くで私の世話をしてくれているジェミーが不思議そうに声をかける

「お嬢様どうかしたのですか?」


「ジェミー!第一王子様は何考えているのかわからないわ!」


「何と書いてあったんです?」


「私、王子様に会ったのって私の誕生日会と昨日のフレデリク様のお屋敷のお茶会の2回だけよ!なのに、文章からは私が好きみたいな感じで書いてあるけど、好きだとは、はっきり書いてないの・・・・・」


「えっと・・・・・それは、興味があるけどまだ好きじゃないって事でしょうか?」


「わからないわ。私好きになってもらえるほど話してないし」


「お嬢様、好きになるのに時間は関係ないのですよ。一目惚れという可能性だってあります」


「一目惚れ?それこそありえません!!だってイザベラ様は凄く可愛くて守ってあげたい。一目惚れならイザベラ様だと思うの」


「私はお嬢様が世界で1番可愛くて大好きですけど」


ジェミーが私を見て優しく微笑んだ。


「・・・・・ありがとう・・・・でも第一王子様とのお友達は無理だわ」


「匂い・・・ですか?」


ジェミーには匂いの事は話していた。


「間違いなく夢の中で最期に会いに来てくれたのは第一王子様なの。涙してくれた優しい人。でもあの匂いはあの恐ろしく辛い日々も思い出してしまう。心の傷を癒やすにはまだ時間がかかりそう。本当は話してみたい。私の話しを信じてくれるのか」


「きっと信じて頂けますよ。お嬢様に罪を着せた方ではきっとないのですよ。それに、『夢』の話しはレオ様にはしないのですか?」


「レオ?しないわ。だってあの子は優しすぎるもの。内容に耐えられないと思うの、せめてあの子が12歳になる頃までは。でもそれ以上は待たない。だって私が捕まるのは私が15歳、レオが13歳なの。もしレオもあのときに捕まってしまっていたのなら、その年齢になっても私が解明出来なければ、国外へみんなで逃げるしかないのかも」


ジェミーは私のそばに寄って手を握った。


「その時は私もお供させて下さい」


ジェミーは『夢』とは思っていないのだと、信じてくれているのだと本気で思う。



「ありがとう、ジェミーもちろんよ」


私は第一王子様に返事を書かずにレオに伝言を頼んだ。



『私は今、心が弱く、少しお時間下さい。真剣なお話しじゃなく、ただお茶なだけならいつでもレオに会いに来て下さい』



そう言って、第一王子様の手紙の返事を誤魔化した。

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