第13話 お茶会3
「皆様!新しく私のお友達になったクロエ様です。よろしくおねがいしますね」
そこにいた女の子達はイザベラ様と同じ歳から私より少し年上の方まで4名ほどいた。
「リシャール伯爵の娘、クロエと申します。よろしくおねがいします」
私はお辞儀した
・・・・・・が
女の子達の反応はあまり良くなかった。
人の悪意というか好感が良くないのは、すぐにわかる。 今まで友人がいなかったのはそういう反応を感知してしまうから友人は出来なかったわけじゃない友人を作らなかった。
それでも友人が欲しいと思ったのは情報を得るため。 打算的な私に本当の友達なんて出来ない事はわかってる だから悪意にも対抗できる。
『伯爵家ですって、なのにイザベラ様と友人?』
『フレデリク様もどうして爵位の低い方と?』
『イザベラ様も考えがあるのでは?』
コソコソ話しのつもりなんだと思うけど かなり聞こえて来てますが?
「皆様!失礼じゃなくて?私の友人です!」
「あ!違いますよ!ただここには、不釣り合いと思っただけですわ」
「ここには公爵家と侯爵家の令嬢だけでしたのに、伯爵家のご令嬢はあちらの広場にたくさん集まっていましたよ」
「ちょっと!ミア様」
「本当の事ですよ。イザベラ様は次期王太子様の婚約者候補に名前が上がっているんじゃなくて?友達は選んだ方がいいですわ」
イザベラ様が泣きそうになる
なるほど。私が伯爵の娘だから、一緒にお茶はしたくないって事なのね。爵位で友人を選ぶのか。
んー。友達が欲しいとはいえ、爵位で友人を決めたくはないかな。
「これは失礼いたしました。私が間違ってこちらの席に来てしまったのです」
私は令嬢達に頭を下げた
「クロエ様・・・・・違う私が」
私はイザベラ様に優しく微笑んで
「でも、イザベラ様が私を友人とご紹介してくださったのに、すぐにここから帰るわけには行きません。イザベラ様がここにいらっしゃる方よりも大事ですので、恥をかかせたくありませんもの」
そして私は空いていた1つの席に腰掛けた。 そこはミア様という方の隣だった。
「先日、私は10歳の誕生日を迎えましたの。その席でフレデリク様と友人になりまして、フレデリク様がイザベラ様を紹介してくださったんです」
「それが何か?」
「いえ、イザベラ様は私の父の爵位など知らなかったのですわ。なのでこちらに呼んで頂いたのはイザベラ様が悪いわけじゃなく、私が自己紹介を怠ったせいですわね」
「え?クロエ様・・・・・」
私はイザベラ様に優しく微笑んだ。
イザベラ様は侯爵家ここには公爵家もいると言っていた。イザベラ様の立場が悪くなるといけない。 イザベラ様はまだ8歳だ爵位で友人など考えたことなどないんだ。多分私が平民でも友人になってくれたと思う。 それでもここは私1人で乗り切らなければならない。
「だったら早くここからいなくなればよろしいんじゃなくて?」
「そうよね〜イザベラ様が可愛そうだわ」
「そうしたいのですが、皆様の名前とお顔を覚えておかないとまた、同じ過ちを犯してしまいますわ」
私はクスクスと笑って
「あぁ。でも皆様は次期王太子様の婚約者候補に名前も上がらない方々でしたから、もう私は拝顔することはないのでしょうか?」
「なっ!!失礼じゃなくて?」
「嫁ぎ先で、生まれた家で、人の優越が決まるのは仕方ない事ですが、私がもしかしたら次期王太子様の婚約者候補になったら皆様大変ですわね」
「あなたみたいな方をルーカス様が選ぶはずがないわ!」
「イザベラ様に勝てると思うの?」
1人の令嬢が
「ミア様だって第二王子様の・・・・・」
言いかけた瞬間 ミア様に睨まれその令嬢は黙った。
第二王子様?アベル様の婚約者になる方なのね。
なるほど、
だから、堂々とした物言いをするのね。
「勝てる勝てないではなくて、王子様が国が決めるのでは?それとも皆様は私に負けるおつもりなのですか?」
ミア様は黙らない私に勝てないと思ったのか
飲んでいたティカップの中身をこちらに投げつけた
パシャっ
私のドレスは濃い色味だったので染みにはならないが、 ミア様が
「身分をわきまえなさい!」
「辞めて下さい・・・・」
イザベラ様はとうとう泣き出した
「そうですわね。イザベラ様大変失礼いたしました。間違っていたとはいえ、『友人』と紹介してくださって嬉しかったです。私は失礼いたしますね」
ミア様はまだ気が済まないようで、
「クロエさん、覚えて置きなさい!あなたの家がどうなるか思い知るといいわ」
ミア様が言い終わると同時に
「イザベラ嬢!!」
男の子がこちらに駆けつけて来た。
「アベル様!?」
私達は慌ててお辞儀をした
ミア様は私に向かってニヤリとした
「どうしてイザベラ嬢が泣いているんだ?」
ミア様が
「この令嬢がイザベラ様に嘘をついて高貴な私どものお茶会の邪魔をしてきたのです」
「王子様の婚約者候補になれると思ってらっしゃるようなので、身の程を教えて差し上げていたのです。イザベラ様は騙されて泣いてらっしゃるのですわ」
嘘じゃない。前回の人生では候補にはなったのだから。
「違う・・・・・」
イザベラ様は泣きじゃくって、言葉にならない。
「あー。クロエ嬢か・・・・レオはいい奴だけどクロエ嬢は信用出来ない」
ミア様が勝ち誇った顔をする。
「そもそも伯爵家の令嬢が私どもと友人になろうとは最初からおかしいのですわ」
「何?伯爵の令嬢は友達になれないのか?イザベラ嬢の招待客だろう?」
「え?」
「イザベラ嬢は爵位で友人を決めないはずだ!俺にも伯爵家の友人はいるが、ミア嬢は俺の友人も否定するのか?」
「しかし!私やイザベラ様がいる前で自分が王子様の婚約者候補になれるかもと失礼な事をおっしゃるのですよ?」
するともう1人男の子が来た
「クロエ本当?王子の婚約者になってもいいの?」
その声の主は
「ルーカス様?」
「クロエのドレスはどうして汚れているの?」
ミア様は黙り込んでしまった。
「これは私が悪いのです」
私はこれ以上この場が荒れないようにそう言った。
「クロエ、このままじゃ帰れないだろう?すぐに変わりを用意させるよ」
「いえ、第一王子様お気持ちだけで十分です。それに王子様の婚約者候補のお話しは売り言葉に買い言葉ですので、お耳汚しをしてしまい申し訳ありません」
『最初からルーカス様のお知り合いでしたら、そうおっしゃればよろしいのに』
ミア様は周りに聞こえないくらいの小声で呟いた。
「ミア嬢!君の仕業じゃないんだよね?」
ルーカス様に問われ、黙るミア様の横で
「私がティーカップを持ちそこねてこぼしたのです。第一王子様これ以上は問われないで下さいませ。イザベラ様が困っています。イザベラ様を大事になさって下さい」
そう言って みんなの方をもう一度振り返り
「今日は初めてのお茶会で少々ハメを外してしまいました。どうかお許し下さいませ」
私は優しく微笑んでお辞儀をした。
私の笑顔に見惚れる人もいたが私はそんな事に全く気づかず
「第一王子様、第二王子様、イザベラ様申し訳ありませんがお先に失礼します」
そう言って踵を返して、お母様がいる広場へと向かった。
『このままじゃお友達はなかなかできそうにないわ』
そんな事を考えていたら
「クロエ!待って」
後ろから第一王子様に手を掴まれた。
「クロエ!大丈夫?」
「え?」
「クロエが傷ついていないか心配なんだ」
「えっと・・・・大丈夫ですが・・・・皆様まだこちらを見ていますし、手を離して頂けますか?イザベラ様に誤解されますが?」
「イザベラ嬢?どうしてここでイザベラ嬢の名前が出て来るの?」
「もうじき婚約者になられるのでは?」
「そんな事誰が言ったの?」
「え?違うのですか?」
あれ?さっきミア様もそんな事言ってたし、前回の人生は間違いなく婚約者だった。
「もう、その話しはないんだ。誤解しないでくれないか」
第一王子様の距離が一層近づいた。
・・・・・・・・・
私は急に顔が真っ赤になった。
「クロエ?」
「王子様はご自身がどんなに人を魅了してしまうか知るべきですわ」
「私が?」
「はい。私は失礼致します」
王子様の手をそっと外して急いでその場から逃げた。
匂い・・・・・・・・・
嘘でしょ?
第一王子ルーカス様が私の会いたい人?
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