第3話 出会い

誕生日会当日


部屋にお父様とお母様が来た。


「クロエ、今日きついなら中止してもかまわないんだぞ」


お父様は心配そうに私の頭を撫でる お母様は逆に


「クロエのかわいい姿をみんなに見てもらいたいわ。クロエが頑張れるなら頑張ってみない?」


お母様は本当は心配してるけど今日が楽しみなのも伝わって来る。 あの日私が連れて行かれた時の母は本当に心配していた。気が狂うほど私の名前を呼んでくれた。私の耳はあまり聞こえなかったけど、母の愛が凄く伝わった。


お母様ありがとう。


無償の愛を教えてくれて感謝します

これからたくさんの親孝行をするから。




「お母様、私は大丈夫だから心配しないでパーティーには出るし、ドレスを一緒に選んでくれたら嬉しい」


「そうね!選ぶわクロエのドレス楽しみね」


そう言ってお父様と顔見合わせてクスクスと笑った。


とても幸せだわ。



幸せを感じる度に 黒い気持ちが増える



お父様とレオは何故来てくれなかったんだろう。戦争責任でお父様達も捕らえられていたのか・・・・




昼過ぎて招待客がどんどん伯爵邸に到着した。 ほとんどがお父様やお母様のご友人ばかり たくさんの人達に酔いそうになる



10歳の誕生日を迎えたけど・・・



中身は15歳。


元々、友人が少ない私には話す相手がほとんどいない。



私の誕生日なのになぁ 主役らしく真っ赤なドレスにした。少し大人びた雰囲気だけど髪の毛をツインテールにしてツインテールには真っ赤なリボンをつけ、子供らしさを出した それでも誰も近づいて来ない。


5年前私この日をどう過ごしたっけ? 確か最初の挨拶を終えた後は、すぐに屋敷の中に入って部屋に籠もっていた気がする。


ほぼ毎年、理由は・・・・貴族にはありがちの人の悪意が嫌いだから。



その時は何も考えてなかったけど、外に友人がいない私って情報収集なんて出来なかったんだわ。


でも私は変わるんだ!


もう何も知らない私にならない。


テーブルの上に置いてあったジュースを一気飲みして気合いを入れる


「お姉様ー!」


レオの私を呼ぶ声がする。 少し体が緊張する。 レオはきっと王子を連れている。 もしかしたら私を陥れた人物・・・かもしれない人。



呼吸を整えてレオに振り向く とびきりの笑顔で。


「レオー!」


レオの周りには5,6人友人が一緒にいた。


え?どれが王子?


私誰もわかんないけど?


しかも王子は秘密でくるから名前変えてるって言ってなかった? 仕方ないから全員にむけて 丁寧なお辞儀をした。



その姿は10歳に思えない流れるようなきれいなお辞儀だった。


流石に15歳までにいろいろな礼儀作法は家庭教師に習ったからこれぐらいはできるのよ。


ちょっとドヤ顔になりながら顔を上げると レオに怒られた


「お姉様!そんなにきれいなお辞儀できたの?見た事ないよ?お友達みんながお姉様を好きになったらどうするの?僕嫌だよ!」


レオってこんなにお姉ちゃん子だっけ? 周りの男の子何人かは顔を真っ赤にして私を見てるけど


2人だけが私と目線が違う。 2人とも金髪に金色の瞳、あれ?2人の瞳は金色でも少し違う色なのね。光の加減なのかしら。


でも2人とも・・・・・オーラが違う。 絶対に王子様達だ! 私の目は笑っていないけど口調や表情は笑顔をなんとか保つ


「レオ、大丈夫よ。レオのお友達なら私にとってもお友達だから、そういう好きにはならないわよ」


私はレオに優しく微笑んだ



「そうなの?」


1人のお友達が

「いえ!レオのお姉様はとても綺麗です!」


顔を真っ赤にして答えてくれた


「ふふふ、ありがとう」

私はレオの友人達に向かって

「これからも、レオをよろしくおねがいします。ずっとレオのお友達でいてくださいね」


「「はい」」



1人の金髪の子が


「そんな事言って、レオ使って俺たちに近づきたいだけだろう?」


やっぱり王子だ身長はレオと変わらないから第二王子様のアベル様かな? あんまり女性をよく思ってないのか、私みたいなのが嫌いなのかわからないけど、嫌われたままだと後々困るかな?でも媚びたりできないし今日は顔見知りになっただけでいいかな? 第一王子様は一向に表情が柔らかくならないというか鋭い瞳で私を見てる。


やっぱり第一王子様が・・・・・



牢屋での事がフラッシュバックのように思い出して私は急に顔色が悪くなった


ヤバい倒れそう



「レオ、お友達とごゆっくりね」




それだけ言うとすぐにレオ達から離れて、 私は誰にも見えない木陰に隠れた。



気持ち悪い。


第一王子様を考えるとあの日を思い出すから体が震える。あの日と言っても私にとっては昨日の話し。 こんなんじゃ真実にたどり着けるか心配になる。 私はその場にしゃがみ込んだ。


「ねぇ、君大丈夫?」


私はバッと振り返った そこには黒髪の端正な顔立ちの男の子が心配そうに私を見ていた。 私は慌ててその場に立って、


「レオの友達?」


「レオポルド?違うよ。僕は母上の友人の子供の誕生日会に着いて来ただけだよ。レオポルドのおねえさんの誕生日だろ?」


「そっかぁ。今日は来てくれてありがとう」


「え?」


「私はリシャール伯爵の娘でクロエ・リシャール、今日は私の誕生日会なの」


「え?そうなの?主役がこんなところにいていいの?みんな向こうにいるよ?」


「心配かけてごめんなさい。日頃からあまり人に慣れていなくて人酔いしてしまったの」


「人酔い?なにそれ」


そう言うと男の子は屈託ない笑顔で笑った。



「僕はロベール侯爵家の息子でフレデリク・ロベールと申します。君と同じ10歳だよ!仲良くしてね。」


不思議、フレデリク様と話してるとさっきの気持ち悪いのがなくなった。



私も自然と笑顔になる




「ありがとうございますフレデリク様」


「えーもう僕達友達なんだから呼び捨てでいいよ〜」


「まさかありえません!フレデリク様は侯爵家のお方ですから。でも私の事はクロエとお呼び下さい」


フレデリク様は笑顔になって


「本当?クロエって呼んでいいの?」


「はい、もちろんですけど?」


「クロエは婚約者はいないの?」


「えぇ、こんな田舎の領地に引きこもっておりますので。」


「そっかそっかぁ~」


なんだかフレデリク様が嬉しそう?


「フレデリク様は婚約者様はいらっしゃるのですか?」


「僕?まだいないんだよ〜。そろそろ考えなくちゃいけないよね〜王宮の学園に入学するまでに決めるって親には言ってるんだ」


「王宮の学園?」


そっか私は学園に行かず家庭教師をつけてもらったけど学園に行けばいろいろ情報が入るかも?


「私も通えますか?」


「クロエも行きたいの?」


私はフレデリク様を見てウンウンと頷いた。 フレデリク様は私がずっと見つめてしまったのが恥ずかしくなって顔が真っ赤になっている。赤くなった顔を腕で隠しながら


「13歳から18歳までなら大丈夫だよ。クロエは伯爵家の令嬢だし問題ないと思うよ。」


私は嬉しさのあまり満面の笑顔でフレデリク様の手を握った。


「フレデリク様ありがとうございます」

ますますフレデリク様の顔が赤くなる。


「クロエの笑顔ってかわいいけど、あんまり他の人の前でその顔見せたくない。」


「え?」


「あ!嫌・・・・何でもない。また遊びに来ていい?」



あれ?


前回もこんなシーンなかった?


私、誰かと何かを話して・・・・




「クロエ?ダメだった?」



「え?いえ大丈夫です。」


私はフレデリク様に優しく微笑んだ。 すると後ろから声がした。


「じゃあ私も来ていいのかな?」


その声の主にフレデリク様が頭を下げた。 偉い人なの? 私はバッと振り返った 金髪の少年が立っていた 私の顔は急にこわばった、多分第一王子様だと思うから。 私の表情を見て王子様は不機嫌になる


「私はダメなのかな?」


「あ!大丈夫です!事前にご連絡頂ければ、お菓子を焼いてお待ち致します。」


「君が作るの?」


そうか王子様って専属のシェフが作ったものしか食べてはいけなかった!


「申し訳ありません。私のような者が作ったお菓子など信用できませんよね」


私は深々頭を下げた。


「何故?フレデリクが食べれるなら私も食べれるよ」


王子様は初めて私に笑顔を見せてくれた その笑顔に私が溶けてしまいそうになった。 フレデリク様が困っている私を見て


「ルーカス様!あなたここにいてはいけない方だ!」


ルーカス様・・・・やはり第一王子様なのね。


「今日は特別なんだ大事な友人の姉君の誕生日会だからね。今日はルーカスじゃなくてルイとしてここに来ているんだ」


そう言うと第一王子が私の手を取って手の甲に口づけをした


「クロエに会えて嬉しいよ。お誕生日おめでとう」




私は何をされたのかわからずただただ固まってしまった。

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