第2話 憎しみの眼が出る

「レオ?どうぞ」



扉を開けたそこには かわいい弟のレオが心配そうな顔をしながら立っていた。


レオポルド・リシャール 次期リシャール伯爵

私と同じ銀髪の青色の瞳


私はレオに駆け寄ってぎゅうっとハグをした。

レオも私を抱きしめた。



その手がとてもあたたかくてこれは現実なんだと実感させられる。


「お姉様大丈夫?」


「うん、もう大丈夫よ」


私はレオに優しく微笑んだ それを見てレオは安心したのか天使のように私に微笑み返してくれた。


「僕、怖い夢を見てとても怖かったんだよ」

「怖い夢?」

「お姉様がこのまま高熱死んでしまう夢・・・・」


戦争とか投獄とかじゃないのね そうよね。 でもあの世界が夢とは思えない。 牢屋での空腹も、苦しかった喉の渇きも 今でもあの感覚を思い出せる。


考えられるのは時間が戻った?

でもどうやって?


わからない ・・・・・・・・・


「お姉様?」


「あぁ、ごめんね。私は大丈夫だよ」


「明日のお姉様の誕生日会に僕の友達も呼んでるんだけどいいかな?具合悪いなら断るよ」


「もちろん大丈夫だよ」


ジェミーがレオに聞こえないように耳元で話しかける。


「お嬢様大丈夫ですか?レオ様のご友人は高貴な方が多く、お嬢様は避けておられましたが」


レオは小さい時からお父様と王都に行ったりお城について行ったりしてそこでたくさん友達を作っていた。 私は王都に興味がなく、13歳の社交会デビューの夜会には参加はしたけど 15歳になっても参加したのはその一回だけだった 世間知らずの田舎娘。 レオの友達に粗相をしたらいけないと思ってあえて避けていた。 もし神様がもう一度人生を与えてくれたのなら、もっと違う自分になろう。




何も知らないまま死にたくない。

あの苦しみを味わいたくない。



今まで食べなかった食材も

今まで通らなかった道も

今まで話さなかった人達も


全部やって見よう。


何かわかるかも 変わるかも



「お姉様?」


「レオのお友達にちゃんと挨拶しなくちゃね」


レオはその言葉を聞いてもっと笑顔になった


「お姉様はとってもかわいいから、僕の友達に自慢したかったんだ〜」


かわいい?私が?


「レオの方がかわいいよ?」


レオは少しふてくされた顔して 「僕はかっこいいの!かわいいのはお姉様なんだ」


8歳ってもうかわいいはダメなのね。 そのふてくされた顔もかわいいんだけど、


私は幸せなんだなって感じると同時に心の奥が真っ黒になっていく自分に気づく


何故私は、あんなに苦しい思いをしなければならなかったのか。


「でも僕のお友達に王子様いるけど、明日は秘密で来るから名前違うけど気にしないでね」


「え?王子様?」


私の顔は青ざめる 第1王子様の婚約者候補になってから何もかもおかしくなった気がする。


「王子様って?第一王子様?第二王子様?」


私の顔は笑顔のまま目は笑っていない


「え?両方だけど〜気にしないでね」


気にするよー!!


「私、王子様達に会った事ないから、ちゃんと紹介してね」


紹介してもらったら、それ以降会わない努力するべき? 会わなくても婚約者候補になった。 会って幻滅してもらった方がいいの?どれが正解?


明日を考えるとめまいがしてきた。


フラっとなった私を見て ジェミーが


「お嬢様!熱が下がったばかりですので、今日は横になっててください」


手を引かれてベットへ誘導された。


「お姉様!明日楽しみにしてるね」



そういったレオは部屋を出て行った。


「ジェミー・・・・・・」



「はいお嬢様何か?」



もう私は一人で考えられなくてジェミーに話す事にしたジェミーは信じないかもしれないから夢って言うことで話そう。





「あのね凄く長い夢なんだけど・・・・・」




・・・・・・・・・





ジェミーは涙が溢れそうだった


「夢だよ!夢!」



私が凄い妄想癖とか思われたかな?


「夢なんでしょうか?そんなにハッキリと覚えていますでしょうか?」


ジェミーの涙は溢れていた。



「今が現実なら夢としか考えられない」


「そうですよね」


「ジェミーに話してしまってこんなの言うのおかしいのだけれど、このことを誰にも言わないで欲しいの。内容が戦争とかスパイとか物騒過ぎて怖いから。それにこの夢のせいで・・・・・」


ジェミーは私の手を取って



「お嬢様、私を信じて大切なお話しをしてくださってありがとうございます。その夢が現実にならないように私も一緒に努力致します。二度とお嬢様が喉の渇きに苦しまないように」


夢だと言ってもジェミーは涙が止まらない。 ジェミーは私が小さいときからそばでお世話をしてくれている 第2の母のような姉のようなそんな存在。


あの日私は投獄されてみんながどうなったのかは知ることも出来なかった。 あの日のみんなが助かっていたらいいんだけど。


「お嬢様、明日王子様に会ってお友達になりましょう」


「友達?」


「はい。知らなくて婚約者候補になったのは、誰でも良かったとか?」


「知っていたら、候補にならなかった?」


「可能性は低いですが、ありえませんか?知らない事は怖いです。だったら相手を知ることから始めましょう」


ジェミーの言う通りだ。


「そうね。今までと違う事をしてみる。ジェミー信じてくれてありがとう」


そういうとジェミーの瞳からまた涙が出て来た。



私はこんなにも幸せだったんだわ。





私の心はまた黒くなる。

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