arrival 信念の準備

ぶるっぶるっぶるっぶるー

着信音が鳩山のパーカーポケットに鳴り響く。知らない番号からだ。

「はい鳩山です」

「天灯です。事件はどうですか?諦めましたか?」

天灯さん、だった。

「番号…誰から聞いたんです?」

「妹が明日名…?さんから聞きました。」

あの野郎…

「また人が消えました。それと豚が線路を走ってました。でかいやつ」

そう言うと天灯さんは少し驚き話を続けた。

「進歩しましたね。その豚は多分Poisonousですね。私達はそう呼んでいますが、まぁ化物とかでもいいですよ。はっきり言えば欲望を食べる悪魔みたいなものです」

「ひとつ良いですか?」

「どうぞ」

俺はあれみたいな化物を見た事がある。Poisonousにも聞き覚えがある。

「あいつ以外にもPoisonousっているんですか?例えばカジキみたいなのとか」

俺がそういうと天灯さんは驚いた。口が震える音が聞こえている。怯えている。

「なんでそれを…?」

「昔姉が死んだ時に見ました。カジキ。俺を庇って交通事故で死にましたが、車には血も付いてませんでした。トラックでしたが引いた感触もないと言っていました。その時カジキの様なものを見ました。確か、葬式で誰かがPoisonousと言っていた気がします」

俺がそう言うと天灯さんは少し黙り俺に優しく声をかけた。

「それは…すいませんでした。私達天灯グループは今の所Poisonousを見つけることしか出来ません。ただもし樒さんがPoisonousを…いえもうお姉さんの様な人を増やしたくなければきっとそのエアガンは、貴方を助けます」

エアガンであんなのを倒せる訳ないとはわかっていた。わかっていたが天灯さんの言葉に嘘はないとわかった。

「電話切りますね」

俺が切ろうとした時

「最後に7月13日多分渋谷駅で事件が起こります。時間は十二時三十九分の終電です。自殺者はサラリーマンだと思われます。もし貴方が解決しようとしているならチャンスはその一回でしょう。それでは」

捨てる様に通話を切り俺に残ったのはスマホと言葉にすることが難しい気持ちだけだった。


13日一二時三十九分きっかりに豚は来た。

「渋谷ー渋谷に到着です。ご乗車の方は速やかに…速やかに死亡なさってください」

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