Unknown existence 黒豚電鉄

「どうするかなぁ…」

鳩山樒はジュラルミンケースを机に置き考えていた。樒にとっては持ち逃げしていいと言われた300万なんて得でしかないのだ。しかし

「人間としてどうなんだろうなぁ…」

人間として、そう仕事を放棄、しかも前払いで。いや本当のことを言えば募集などしていないしそう事件解決なんてこともできない。探偵でもなければ頭は中の下前回の期末テストは赤点ギリギリだった。しかし

「行くか」

鳩山樒は扉を開けた。用意はすでに完了している。鞄に財布、そして

「エアガン」

300万と共に渡されたおもちゃの銃。ただの事件に持っていく理由はない。だが大金に付けられると何か重要な物に見えてくる。銃の形は少し個性的で、テレビ等でよく見る銀色の銃ではなく、まるで西武劇で保安官が使う様な持ち手が茶色のやつ。

「だせぇ…」

他の奴らの感性は知らないが、ださいと思うぞこれは。

三十分くらい過ぎて渋谷に着いた。九時なので人がいないというわけはなく。仕事に疲れたサラリーマンや子供連れのお母さん。自殺しそうなおばさんもいた。ん?自殺しそうなおば…さん?

「いや危な!」

急いでおばさんがいた5号車前に走る。何やらブツブツ喋っている。そして落ち…た。

「あぁ…あ…」

止められなかったことの罪悪感と人が死ぬのを見た驚きで言葉が出なかった。そして電車が通り過ぎた後レールには。

「何もな…い」

そうまるであの事件の様に死体が消えていたのだ。

そこで俺は思い出した。天灯楓の依頼を。俺はすぐさま通り過ぎたレール、トンネル、そして

「電…車?」

いや違う。俺が知っている中であんな電車は見たことがない。だが俺はあれを知っている。あれは

「でかい…豚…?」

猪でもなければサイでもないピンクというには黒っぽい巨大な豚が線路を走っていた。

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