第十膳『とっておきのデザートをキミに』(お題)

こんにちは

さようなら

蓮の花咲く湖で

うさぎとうさぎがごっつんこ


こんにちは

さようなら

星の花咲く空で

まんまるい月にごあいさつ


さあ どっち?


 私は天蓬さんが来てから、ずっと考えていた。

 

 虹えびの料理大会にでて、天蓬さんに会うってことを目標にしていたけど、会ったら何をしたかったんだろうって。どうして会いたいと思っていたのだろうって。

 記憶のない天蓬さんが、私のことを覚えているはずもないのにね。

 それでも、会ったら何か変わるんじゃないかって淡い期待を持っていたみたい。

 

 実際は、天蓬さんから何も思い出せないと謝られてしまった。でも、あまりショックじゃない。


 天蓬さんが作ってくれた蒸し餃子はすごくおいしかった。あんなにきれいな薔薇の形をした餃子を作るなんて、すごく練習したと思う。王様の仕事も大変だろうに、約束をしたからという理由だけで、私のために時間を使って、準備してくれた。そしてここに来てくれた。それだけで、すごく嬉しい。

 

 途切れそうだった縁がまたつながったような気がする。


 そんな天蓬さんのために、私は何ができるんだろう。


『ただいま』と『おかえり』を言える場所を作ること?

『いただきます』と『ごちそうさま』がある食卓と料理を作ること?


 答えなんて出ない。


 天蓬さんはあれから焼き餃子、蒸し餃子、茹で餃子といろんな餃子を堪能して、今は茉莉花茶をのんびり飲んでいる。そういえば、「この味!」と何度も言っていた。焼き餃子を三ついっぺんに口の中に入れ、はふはふとしながら、咀嚼しているのを見た時に、思わず「この前食べた時も三ついっぺんだったわよ」って指摘したら、耳の後ろをぽりぽり掻いて、真っ赤になっていた。


 ―― 覚えていなくたっていい。きっと、これから上書きしていける! 


 片づけるふりをしながら、私はデザートの仕上げに取りかかっていた。


 最後を締めくくるデザート。カロリーなんて気にしない、とにかく甘くて、優しい味のする、ほっぺたが落ちそうになる、そんなとびっきりのデザート。


 デザートを食べる天蓬さんなんて想像もできなくて、ひとりにやにやしてしまう。 


 ―― どんな顔をするんだろう?

 ―― 喜んでくれるかな?


 エプロンを外して、小さな皿にきれいに盛り付ける。


「デザートを作ったの」


 天蓬さんの目が大きくなる。そして、ふんわりと笑った。


 モフモフの天蓬さんもよかったけれど、イケメンの天蓬さんにはもっとドキドキさせられるじゃない!


「今日は特別な日。そういう日にはデザートがぴったりだと思わない?」


 

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