第六膳『初めてのハンバーグ』(回答)
―― はい! いただきましたー!!
「お肉は羊です。村長さんから分けていただきました」
「羊か……」
「水蓮じゃなくて、
「え?
―― 苦手食材だった?
でも、
「こいつら、羊の肉はいつも食べているから問題ない。ただ、昨日のちらし寿司で食べた牛の肉が気に入ってな。牛の肉が食べたかっただけだ。気にするな。なぁ、そうだろ?
二人が小さく「「はい」」と答える。まるで、狼ーもとい猪に睨まれたウサギ。
「そ、そうなの? 牛は、……、この村にはハナさんしかいなくて……」
私はしどろもどろになる。ハナさんの肉を食べるなんて、それはそれで出来ない相談。
「三つ目牛には手をださせん。それに、羊肉はわざわざ村長が用意した生肉。ならば、羊特有の臭みも少ない。問題ないよな?
「「はい、さようで……」」
「それに、俺が作るのだ。何も問題ないだろ? なあ、
「「おっしゃるとおりでございますー」」
二人は、天蓬さんの手を振りほどいて、逃げるように数歩後ろに下がった。そして頭をさすっている。
「で、俺はどうすればいい?」
「まず、玉葱も細かくしてくれる?」
天蓬さんは「任せておけ」というと、
「
「いや、玉葱は目に染みるからな」と、
「ならば、箸を口にくわえたまま切るといいですよ」
「?」
「唾液が出ると涙は出にくくなるそうです」
「そうか。しかしな、それはそれで面倒だし、
「それはどういう意味?」
「まあ、みてろって」
―― あ、なんかずるい……。
もやもやするけど、まあ、フードプロセッサーを使ったと考えればいいかと思いなおす。
「せっかく細かくしてもらったから、金炉さん、その玉葱を炒めてもらってもいい? ハンバーグには炒めた玉葱の甘さがポイントなのよ。ね? お願い」
「しかたないっす」
機嫌をなおしたのか、
「じゃあ、
「……、
「えー。オレもっすかぁ? じゃ、ちゃちゃっと妖術で」
「だめだ。水蓮が包丁で刻めと言ったぞ!」
「えー。めんどー」
―― 天蓬さんったら。
「水蓮、肉がとんだぞー」
「
「お前が、羊は嫌だとかいうからだ。ふっ。恨まれたな」
―― でも……。
「水蓮、玉葱はぁ?」
「そこにおいて少し冷ましておいて」
ぎゃーぎゃー騒いでいるところに、
「
「料理は手が荒れるからやりません!!」
「手伝わなかったらハンバーグはなしだ!」
「えええーーー!!」
「じゃあ、
「ただ、かき混ぜればいいならやります」
こんなにわちゃわちゃ言いながら料理を作るのは……、中学の家庭科の授業以来かも。料理学校では、誰よりも上手に作りたくて、評価の高い人の技をぬすもうと躍起になり、自分の技を盗まれないようこそこそしていた。なんていうのかな。料理を作るのにすごくピリピリして、自分の評価ばかり気にしていた。誰かと一緒に作る料理も楽しいものだって、いつのまにか忘れていたわ。
―― 私、今、すごく楽しい。
「じゃあ、お肉と玉葱を混ぜるのは私がするわ。そのかわり、ハンバーグの形にするのは自分たちでしてね」
肉と玉葱、小麦粉、
「丸めて、ぺたんと平たくして軽く真ん中をへこませてね」
「こうか?」
「二個にしてもいい?」
「お好きにどうぞ」
「まだ、残っていますが、それは?」
「私の分と村長さんたちにおすそ分けの分」
「あ、天蓬さん! 私の分のハンバーグは天蓬さんが焼いてね。約束したでしょ?」
「ああ。とびきり旨いハンバーグを焼いてやる!!」
◇
出来上がったハンバーグは、大きさもばらばら。形もばらばら。でも、自分で丸めて焼いたんだ。自分の皿の上のハンバーグを眺め、隣の人のハンバーグを眺め、口々にあれこれ言っている。
ちなみに、私の分は
ソースは赤ワインと
私は、トマトソースをハンバーグが盛り付けられているそれぞれのお皿にかけてまわる。
「旨そうだ」
「主、腹がぐーぐーなってますよ。はしたない」
「仕方ないだろ。腹は正直だ」
「「水蓮、なあ、食っていいか」」
私も含めて5人のお皿の上にソースがかけおえて、私も椅子に座る。
「どうぞ。召し上がれ」
「「「「旨い」」」」
四人の声が重なる。それからは、それぞれが感想を言っているけれど、わちゃわちゃしすぎていて何を言っているのかわからない。
ちょっとはしっこが焦げているけど、そんなことはどうでもいいくらい美味しい。
肉汁がじゅわっと口の中に広がる。羊特有の臭さは全然感じなれなくて、牛肉と違って肉自体が柔らかい。少しレアで食べてもいいかもっと思ってしまうくらい美味しい。
この日みんなで作ったハンバーグはサイコーに楽しくて、美味しいハンバーグだった。
*****
羊肉のハンバーグ、食べたことがないので……(笑)
食レポは……難しかった……。
(飯テロなのにごめんなさーい。でも、みんなで作る楽しさは伝わったかな?)
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