食事のあとは、えええ? 空の上?
パチパチ パチッ
焚火の火が爆ぜる。暗い森の中に爆ぜた火の粉が消えていく。
私は温かい生姜入りのミルクティーのはいったコップに口をつけた。そして、天蓬さん達の話に耳を傾けながら、自分の中のどうしてを持て余している。
どうして、人は、自分にないものを持っている人を
どうして、人は、誰かと食事をして、些細なことで笑いあって、「おはよう」とか「おやすみ」とか言いあう当たり前の日常を大切にしないんだろう。
どうしてという疑問が自分の中でぐるぐるとまわる。
お父様がそうだ。ある時ふらりとやってきた怪しい狐目の妖術士の話を鵜吞みにした。左右の目の色が違う子どもの心臓を食べれば不老不死になれるとそそのかされた。私やお母様との日常を捨ててまで、どうして私の心臓を食べたいと思ったのだろう。あんなにも愛していたお母様を殺して、どうして……。
「しかし、わからん。なぜだ。俺が知っている羅刹は、確かに虚栄心が強く、王になりたがっていた。だが、父上を殺してまで王位を簒奪しようなどとは考えないはずだ」
「見栄っ張りの小心坊ちゃんだからな」と
「
枝の先に餅をつけて焼いていた
「お師匠様は、
「なに?」
「
―― 狐目の妖術士??
「あの」と私が口を開いたと同時に、
「
「はっ」
「「了解。主」」
「で、でも……」
「すまない。西の村で待っていてくれ」
「待って!!」
私は慌てて
そして、
「でも……、でも……、じゃあ、
「ああ。約束しよう!」
牙のあたりの頬を緩めて、笑いかけ、そして、私の頬をそっとなぜると、森の中へ走っていった。
「さ、水蓮殿も急いで荷台へ」
私を抱きかかえた
「三つ目牛のハナさん! よろしくお願いします!!」
『モーゥ』
ハナさんはぶるっと震えると、顔を空に向けた。そして、ゆっくりと歩き出した。
「???」
―― なに? なにが起こったの? なに、このふんわりとした浮遊感?
ハナさんの足が地面から離れてていく。私と
「ハナさんって、空を歩けるの?」
『モーゥ』
「三つ目牛だから、なにか妖術を使えると思っていましたが、空に浮かべるとは!」
『モーゥ』
自慢げにハナさんが鳴く。ゆっくりゆっくり、でも確実に空に登っていく。
お師匠様が「ハナはすごいんだ」と言っていた理由がやっとわかった。
―― ハナさんは、空を歩けたんだ……。
空に浮かぶ細長くて白い月。下をみれば、森や村が小さく見える。
――
こっとり こっとり
こっとり こっとり
ハナさんが右、左、と足を動かして揺れるたび、荷台がゆっくりと揺れる。それままるで、ゆりかごのように優しい。
こっとり こっとり
こっとり こっとり
聞こえるはずのない、荷台の音を感じながら私はいつの間にか眠りについていた……。
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