食事のあとは薄荷&香水茅茶
話があると言ったのに、
今日は、すっきりとした後味と清涼感が残る
―― 話ってなんだろう。
とくんと心臓がはねて、不安がよぎる。気づかれないように、私は自分の腕を服の上から押さえた。
―― よっぽど、話しづらいことなのかしら。
茸の匂いがダメだったからとはいえ、帰ってきたときも元気がなかった。随分と雨に濡れていたようだし。これ以上、関わったら別れるときにつらいから、見ないふり知らないふりを通そうと思っていた。
でも、私が作った料理を苦手でも食べきる
「……さっきの妖術具だが、あれは誰が名づけた?」
「もちろん、お師匠様よ」
「それは
「もちろん」
「そうか。……、俺は、
「そんなことないわ」
「俺には腹違いの弟がいるのだが……」というと、
―― はい? 話が飛びすぎて見えない。
「うまいな。さっぱりしていて、気持ちがしゃきっとする」
「ミントとレモングラスを混ぜて作ったのよ。春になったから、生の葉で作ったの。それで?」
「ああ。そいつが、この呪いは、伝説の
お師匠様は
本当は、がさつで料理下手でコミュ障なおじいさんなんだけどね。
でも、お師匠様は三年前に、『行かなくてはならない』と言って出かけたきり、帰ってきていない。その時、どこへとか、何をしにいくのか、とか聞かなかった私も悪いんだけどね。
「…………ところで、
「そうだ。まだ言っていなかったな。俺は
「へ? だって、
―― 獣人はいないんじゃなかったかなぁ。もし、どこかから来たとしても鎖につながれ、自由なんてない存在。
「三年前、呪いをうけて猪の体になった。それでも、父上は、俺に『獣の姿をしていてもお前は第一王子であり、呉の国の次期王だ』と言ってくれた。しかしな、弟の周りの者にとっては俺を蹴落とす格好の材料だろ? 俺を追放して、弟を第一王子にするよう言い出した。まあ、よくある権力抗争が起こって、……、俺は、
「でも、さっき、
「昨晩遅く、父上が殺され、
「お父様が殺された?」
「ああ。
「
「俺の悪友にして、一番信頼のおける奴だ。あいつが、父上を殺すはずがない。真相を知るためにも、俺は呉の国に戻る。そこでだ。水蓮、頼みがある。一緒に呉の国に来てくれないだろうか?」
「私が? 無理だわ」
「なぜだ?」
「行く理由がないわ」
「今、俺には味方が少ない。飯だって毒が入る可能性がある。せめて、飯くらいは何も疑わずにうまいものを腹いっぱい食いたい、幸せな気持ちになりたいと思うのは俺のわがままだろうか?」
「無理よ」
「問題ない。
どくんどくんと心臓がはねる。
「な、なんで、それを?」
今までで一番すっとんきょうな声をあげる。
「黒い髪、右目と左目の色が違う目、そして、水蓮という名前。調べがいがあったぞ」
見なくたってわかる。
―― いい人だと思っていたのにー!!! 助けなきゃよかった!!!
「だからな、俺と一緒に呉の国へ行こう! これは決定だ」
「そんなぁ――――」
私の悲痛な声が家中に響き渡った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます