先輩に振られた俺。でも、その後、いとこと幼馴染が婚約して結婚したい、という想いを一生懸命伝えてくる。俺を振った先輩が付き合ってほしいと言ってきても、間に合わない。恋、デレデレ、甘々でラブラブな青春。
第12話 こんなはずじゃなかったのに (のずのサイド)
第12話 こんなはずじゃなかったのに (のずのサイド)
わたしは冬土のずの。高校三年生の女の子。
高校二年生の時の十一月の上旬、隣のクラスのイケメンに告白された。
これからのわたしはバラ色の人生が待っていると思って、その日は大喜びした。
早速彼とデートすることになり、休日、有名な行楽地に行くことが決まった。
わたしは、もう有頂天になっていた。まわりの人たちにも自慢した。
このまま幸せが続くものと思っていた。
その日デートをするまでは……。
わたしは、この行楽地の見どころをネットであらかじめ調べておいた。
彼の好みもそれとなく聞いたりし、対応を考えていた。
そして、当日、目一杯おしゃれをして、待ち合わせ場所の駅に向かった。
これだけ準備をしたから、きっとデートは成功するだろうと思ったのだが……。
彼は、駅でわたしと会う前から不機嫌だった。
「もう遅いよ」
抑え気味ではあるが、怒っている。
「お、遅いって……」
「デートなんだから、せめて二十分前には来なくちゃ。きみが来たのは五分前じゃないか。俺なんかもう三十分前から待っているよ」
「ご、ごめんなさい」
わたしは、機嫌を直してもろうと思ってすぐに謝った。
「せっかくこちらから告白したのに。時間の感覚もないとはね」
怒りはなかなかおさまらない。
とにかくわたしたちは電車に乗って、テーマパークのもよりの駅へ向かった。
その電車の中では、ずっと無言のまま。
これじゃいけないと、わたしは彼に話しかけようとするのだが、難しい顔をしているので、それもできない。
せっかくこういうイケメンとデートしているのに、楽しくなってこない。わたしが二十分前に来ていれば、彼も機嫌よくなれたのに。
だんだんわたしは悶々としてきた。
そんな状態が一時間ほど続く。
それでも、行楽地に行けばなんとかなるだろうと思っていた。
しかし、それは甘い考えだった。
この行楽地は、親子連れも多いが、カップルも多い。みんな楽しそう。
手をつないでいるカップルも多い。
わたしもああいう風にしたいなあ……。
と思うのだが、今日、駅で出会って以来、ほとんど会話をしていない。
今のままでは、手をつなぐことは、はるか遠くの世界のことになってしまう。
おかしいな。もっと社交的で気さくな人だと思ったのに。
電車に乗っているうちに、怒りはおさまったようなので、もよりの駅に着き、電車を降りた後は、少し話しかけたりしたのだが、今度は、
「ああ」
「うん」
という気のない返事ばかり。
彼はだんだんつまらなそうな表情になっていく。
その後、レストランに入って食事をする。
わたしとしては、一生懸命彼に話しかけようと努力をしたつもりだ。
しかし、彼のつまらなさそうな表情はますます強くなっていく。
普通だったら、わたしのような美少女と一緒にいたら、もっと喜んでくれるものだと思うんだけど。
このままじゃいけない。
「あの、手をつながない? わたしたち、恋人どうしなんだから」
レストランを出た後、わたしは思い切って彼にそう言った。
すると彼は、
「恋人? 全然そこまで達していないね。何を言っているんだ、きみは」
と冷たく言った。
わたしの心に衝撃が走った。
「恋人どうしじゃないって……。告白してくれたから恋人どうしになったと思ったのに」
「俺だって、きみのことがいいと思ったんだ。だから告白したのに、もう全然イメージと違うんだからな」
「イメージが違うって……。わたしの何がいけないの?」
わたしは彼の為に一生懸命尽くしているつもりなのに……。
「わからないのか。これだからなあ。もうきみのことが嫌いになったよ。まあいい。もうここにいてもつまらないからな。帰ろう。俺も冷たい人間じゃないから、地元の駅までは一緒に帰ってあげる」
「嫌いになった? 帰るって?」
「そのままの意味だよ」
わたしは、彼が何を言っているのか、すぐには理解ができなかった。
これから夕暮れ時が一番ロマンチックな時間なのに。この人は何を考えているんだろう。
しかし、彼は、
「いくぞ」
と言って、わたしがどう思っているかなどどうでもいいように歩き出す。
わたしもあわてて彼に続く。
帰りの電車は、お互い距離おいて座っていた。
わたしは、駅に着くまで、一生懸命自分がなぜ嫌われたのかを考えてみた。
でもわからない。
なぜなんだろう……。
考えても全くわからない。
わたしなりにしてきた努力は、無駄だったとは思いたくない。でも無駄だったのかもしれない。
だんだんつらくなってきた。
そして電車を降り、また駅前。
「じゃあ、これで」
「もうこれでお別れなんですか?」
「ああ。そして、きみとの仲も今日限りだ」
「ど、どうして……」
「さっき言っただろう。俺はもうきみのことが嫌いになったんだ」
「考え直せない? わたしはあなたのこと好き。あなたのことを想っているの」
「無理だね。俺はもう次に行っているんだ。もうきみのことは想っていない」
どんどんつらい気持ちになってくる。
「せめて嫌いになった理由を教えて。あなた好みの子になるから」
わたしは、なんとか彼の心をつなぎとめようとしていた。
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