第372話
滅茶苦茶だなコイツ。
この森にいた奴等と同じ様に、強化外骨格・改で直ぐに倒せると思ったが、訳の分からん攻撃で苦戦している。
見えねぇ飛ばしてくる斬撃は、強化外骨格の声で対処出来るが、問題はもう一つの攻撃。
『《右へ回避》』
音声が聞こえった瞬間、地面を蹴って右へ動くと、さっきまでいた空間を剣が通過していく。
『《後ろへ回避》』
続けて後ろに跳ぶと、上から剣が降って来て地面に突き刺さる。
そして、突き刺さった剣は勝手に地面から抜けて、その切っ先を俺の方へと向けて空中に静止し、再び、俺の方へと突き進んで来る。
その剣を弾き飛ばすが、弾き飛ばした先でまた静止し、また俺の方に向かって飛んでくる。
『面倒臭ぇ!』
『《防御してください》』
剣を盾代わりにして、前方を守りつつ、左腕のマナを盾の様に使って剣を弾く。
弾き飛ばした剣が、今度は奴の所へと戻っていく。
奴の周りには、俺の周りを飛んでる剣以外に、複数の剣が浮いている。
「ククク、私の『ソードダンス』にいつまで耐えられるかなぁ?」
その言葉で、奴の周りに浮かんでいる剣が、また俺の方に飛んでくる。
さっきからずっと、この繰り返しだ。
飛んでる剣は打ち合っても耐える事無く弾き飛ぶから、こっちの膂力で砕く事も出来ねぇ。
しかも、その飛んでる剣とは別に、見えねぇ斬撃も飛ばしてきやがるから忙しい。
別に喰らったとしても、多少傷が付くくらいだから、無視して奴を攻撃しても良いんだが、此方からは奴には近付かない方が良いと俺の勘が訴えている。
その証拠に、俺が攻撃しようと踏み込んで中断した際、奴は悔しそうにしていた。
あのまま踏み込んでいたら、多分、何かしらの大技でも使うつもりだったんだろう。
だが、正直このままだと、強化外骨格・改の内蔵マナが先に尽きちまう。
と言うか、奴はどうやって剣を飛ばして操作してんだよ。
「この程度とは無様だな。 どうせ、我が部下達も卑劣な手段で倒したのだろう?」
奴がそんな事を言ってるが、その通りだよ。
3つ目あたりから、一々近付いて殲滅するより、『マルチロック』を遠距離から使って、両手からマナの塊を飛ばしてぶち抜いてやった。
数が多いし、ワザワザ戦うよりこっちの方が早いからな。
そう思った時、ある事を閃いた。
そして、その閃きを実行する為、大きく後ろに跳んで距離を離す。
『『マルチロック』! 対象は飛んでる剣のみ!』
『《警告、『マルチロック』の攻撃は内蔵マナが大きく減少します。 実行すれば戦闘に支障が》』
『良いからやりやがれ!』
俺の命令で、飛んでいる全ての剣共に赤い丸が表示されるが、範囲が広すぎる。
残量的に一発勝負だが、飛んでる剣さえどうにかすれば、後は奴がどんな罠を仕掛けていたとしても、食い破れる自信があるが、これだけ広範囲だと、余計にマナを使う事になっちまうから、どうにかして剣共を密集させる必要がある。
両腕にマナを集約しつつ、剣を奴に向けてぶん投げると、奴が慌てて飛んでる剣を集めて、飛んでくる剣を迎撃しようとするが、その為に、飛んでいた剣共がほぼ一直線に並ぶ。
『オラァッ喰らいやがれ!』
両手から集約したマナを撃ち出すと、マナ同士が捩じり合いながら螺旋状になって、剣共を撃ち落として粉々に撃ち砕いていく。
追加で剣を出される前に、一気に奴を仕留める!
地面を踏み抜き、背部加速装置から風を噴射して加速。
剣共を撃ち砕かれ、奴は一瞬唖然としていたが、接近する俺に気が付いて持っていた剣を構えるが、その表情は明らかに何かを企んでいる。
多分、このままだと攻撃する瞬間に、奴のナニカで攻撃が失敗する。
だけどな、そんな事は分かってんだよ!
『全
『《追加部品、オールパージします》』
俺の掛け声で、強化外骨格に追加してあった部品共が、一気に外れていく。
身軽になった事で、更に加速。
その速さは、強化外骨格・改での加速に比べれば雲泥の差であり、その状態で奴に接近し、強化外骨格の拳が奴の腹部にめり込んだ。
この加速した状態での攻撃は、あの巨大ゴーレムですら耐えられず、その首を千切り飛ばす事が出来た威力。
当たり前だが、多少強力な防具を身に着けていたとしても、生身の身体で耐えられるモノじゃない。
メギメギと金属が潰れる音と、ゴリュッと何かが潰れる音が拳から感じた後、奴の身体が上下にブチブチと千切れた。
俺はそのまま走り抜け、地面を抉りながら停止してから奴の方を確認すると、奴は何か喚きながら地面で暴れている。
奴の千切れた部分からは、どす黒い血が辺りに撒き散らし、下半身は暴れまくっている。
そして、これまでと同じ様に千切れ飛んだ断面からは、何かがビチビチと跳ねまわっている。
「ぎ、ぎざま゛ぁぁあぁぁっ!! よぐもぉぉぉぉっ!!」
『《マナ残量、残り5%》』
俺の視界に、マナが危険域に到達した事を伝える表示が赤く表示され、声もヤバい数値になった事を伝えて来た。
だが、奴は此処で仕留めなければならない。
ぶん投げた剣に繋げてあった糸を巻き取ると、剣が高速で俺の所に戻って来て掴み取る。
そして、強化外骨格に残っているマナを剣に籠めると、剣身にある赤黒い筋が脈動して不気味に輝く。
暴れている下半身を蹴り飛ばし、上半身の背を踏み付ける。
『じゃぁ、あばよ』
「ま、まで! ぎざまは」
この状態で命乞いでもするのかと思ったが、別に聞く必要はねぇ。
無視して、マナを籠めて脈動する剣を奴の頭に振り下ろした。
『《マナ残量1%、セーフモードに緊急移行します》』
その声と共に、全身が一気に重くなる。
コレは強化外骨格の内蔵マナが危険域に到達したから、最低限の機能だけ残した為だ。
久しぶりに使い切ったな……
そんな事を思いつつ、強化外骨格を脱いで、腰に下げてある箱に収納する。
この箱は俺の強化外骨格を収納し、空気中のマナを収集して強化外骨格にマナを充填する専用の物で、充填速度はそこまで早くは無いが、完全に無いよりマシだ。
連戦する場合、僅かでも稼働時間が長い方が良いだろうという事で、あのクソガキが移動中に作ってやがった。
そして、俺はバラバラになった追加部品を集め、同じ様に箱に収納した後、飛び散ってしまった奴の肉片を集めて、別の袋に入れた。
コレで俺の裏依頼は終了だろう。
奴の口振りから、恐らく奴がやって来たクリファレス軍の総大将で、いなくなれば後は唯の烏合の衆。
強い奴が力で支配してる部隊ってのは、その押さえ付けてる奴がいなくなってしまえば、下は勝手に暴走し出して瓦解する。
まぁ、後は俺の知った事じゃねぇけどな。
俺は森の中の片付けが終わった後、関所に戻って砦の再建手伝いをしようと思ったんだが、ドワーフ連中から
その砦だが、完全に更地になり、地面には何本もの杭が等間隔に打ち込まれ、その杭同士を繋ぐ様に石材が並んでいる状態になっていた。
その周囲にはテントやら桶やらが置かれているから、恐らく、追完の資材が届けば一気に再建するつもりだろう。
必要な追加資材が書かれた紙を渡され、俺達は一時的に町へと帰還。
そして、部下達に商業ギルドに行かせて用意を任せると、俺は町長の屋敷に向かう。
表向きは砦再建の進捗状況を伝える事だが、本当は森での殲滅作業に関する報告をする事だ。
執事に依頼の事で報告があると伝えると、町長がいる部屋に案内され、表向きの砦再建報告をする。
「成程、やはり、ドワーフ族と重魔機部隊の組み合わせは、効率がかなり良いな。 あぁそれと、例のゴミ掃除だが、終わったのかね?」
「……あぁ、ちと苦労したがちゃんと片付けたぞ。 一番のデカ物も面倒だったが掃除しておいた」
「それは結構な事だ。 それでは再建作業を引き続き行ってくれ。 それと、ゴミ掃除の報酬については、ちゃんと手配してあるので後で渡そう」
女町長の言葉を聞いて、俺はそのまま屋敷を後にし、商業ギルドで発注をしている部下達の所に寄ると、量が多くて直ぐに用意するのは無理との事なので、明日の朝にまた来ると伝えてから解散する。
部下達は宿舎があるからそこに戻るが、俺は強化外骨格の斧をぶっ壊してしまったから、仕方無くクソガキが住んでる山に向かう。
クソガキ共が住んでる山の小屋に来て、クソガキにぶっ壊れた斧を出したら『やはり間に合わせでは耐えられんかったか』なんて言ってやがった。
そして、新しい斧が出されたんだが、何だこの斧。
刃の反対側に、見た事もねぇ物体が付いてやがる。
新しい斧の使い方を聞いて若干頭痛がするが、どうせ言った所でクソガキには通用しない。
強化外骨格のブルーメタルも交換し、その日はそのまま小屋の外で寝た。
このクソガキと同じ屋根の下で寝るなんて、恐ろし過ぎて出来ねぇよ。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
-彼は一応強い部類です。 チョイ役でしたが-
-チョイ役なのに?-
-簡単に言えば、自由自在に攻撃可能なファン〇ルを使える訳ですから-
-……あれ? でも弱かったからヤバイ薬に手を出したのよね?-
-ぶっちゃけ、薬を使う前は剣一本を直線で飛ばすのが精々で、手を出した後、複数本の剣を自在に操れるようになった感じです-
-強〇人間?-
-その後、彼を馬鹿にしてた同僚とか上層部の面々を復讐で滅多切りにしてます。 ただ、今回は相手が悪かったですね-
-まぁネオグラ〇ゾン相手じゃねぇ……-
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます