第293話




 無事、ムッさんを正式にワシの部下として迎い入れる事に成功し、ウッキウキで学園へと戻って、その事をムッさんに伝えると、『ふざけんじゃねぇぇぇっ!』と麻痺してぶっ倒れ、ビクンビクンしながら喜んでおった。

 ムッさん達は国から借り受けている以上、アレコレと制約が付いておったから、派遣とか出来んかったが、コレで自由に動かす事が出来る様になったのじゃ。

 主な用途としては、ヴァーツ殿の『黒鋼隊』の様に領内を見回りをさせるのではなく、『強化外骨格』と『エグゾスーツ』のパワーで開拓作業の手伝いをしたり、災害発生時の対処をしたりさせる予定じゃ。

 そうなると、簡単な治療の知識とか、専門的な知識も必要になるのう。

 ムッさんの部下達に教えるのも必要じゃが、専門知識を持った者を同行させるのも必要じゃな。

 『シャナル』に戻ったら、『重機部隊』ならぬ『重魔機部隊』とでも銘打って、人員を揃えて設立するかのう。

 そうなると、馬車も『強化外骨格』を整備出来るような大物を用意し、出先でも整備したり修理が出来る様にした方が良いのか?

 デザイン的にはキャンピングカーの様にして、コレは相当な重量になるから普通の馬では引けぬな……

 もういっその事、魔道具化して自動車の様にしてしまうか?

 しかし、状況によってキャンピングカーは放棄する場合も考えねばならぬし、奪われたりする可能性だってあるのじゃ。

 自動車化して奪われた場合、そこから重武装を施せば、装輪装甲車になってしまう。

 そうなったら、戦争での大変なバランスブレイカーになってしまうのう。

 じゃが、複数の魔獣とかで引かせる場合、同じ種類で数を揃えたりせねばならぬから、揃えるのが難しい上に、それだけの魔獣を揃えられたとしても餌代がのう……

 ベヤヤもクモ吉も雑食じゃから、そこまで餌代は掛かっておらぬ。

 まぁベヤヤは普通に自分で調理し、販売しておるハーブティーやらレシピやらで荒稼ぎしとるから、餌代は掛かっておらんのじゃけど……

 む? この場合じゃと、最近ではワシの方が御飯代を貰っておる事になるのか?

 …………考え無い様にしよう。

 クモ吉はまだ小さいから、そこまで食事量は多くないので餌代はそこまで掛かっておらぬ。

 将来的にはどうなるか分からんが、神社に奉納しておる水晶の一部はクモ吉が作っておる水晶じゃから、安泰じゃろう。

 さて、キャンピングカーを引く方法を考えねばならぬ。

 まさか『強化外骨格』や『エグゾスーツ』を着た奴等に引かせる訳にもいかんしのう……

 そこでピーンと閃いたのじゃ。

 別に、キャンピングカーを魔獣や誰かに引かせる必要は無い。

 キャンピングカーを引く専用の、を作れば良いんじゃ。

 具体的には、『ゴーレム』を作って引かせれば良い。

 もし、キャンピングカーを奪われそうになった場合、キャンピングカーは機密保持の為に自壊機能を持たせ、『牽引ゴーレム』は分離して逃げ、それぞれのマスターとして設定を行った者の元に合流すれば良い。

 もしも、ムッさん達が全滅してしまって、マスターが不在となった場合は、最終的には『シャナル』に戻る様に設定しておけば良い。

 まぁ、『強化外骨格・改』を着用したムッさんがやられるなんて事は、まず無いとは思うのじゃが、此方の予想を超える相手と言うのは偶におるからのう。

 因みに、現状の『強化外骨格・改』を着用したムッさんの実力は、前に『シャナル』にやってきた大馬鹿勇者を軽く叩きのめせるくらいじゃ。

 それこそ、禁じ手の『黒天砲B・H・C』を使わんでも徒手空拳で充分ボッコボコじゃ。


 そんな事を考えつつ、国に正式に渡す『強化外骨格(素体)』を改造じゃ。

 流石に自爆機能はオミットし、使用する素材はボーンフレームは強化ミスリルではなく、通常のミスリルに人工オリハルコンや人工アダマンタイトをほんの少し混ぜた合金にし、表面の鎧部分は強度を上げる為にミスリルに人工アダマンタイトを混ぜた合金にする。

 動力となる魔石も、それに合わせてランクを大分落とすが、ちょっと回路を工夫して、稼働時間そのものは、多少改良が進んだ『強化外骨格(試作)』とあまり大差が出ぬ様にしておく。

 マナを溜め込んで稼働時間を延ばす事が出来る『ブルーメタル』は、今回は見送り。

 王国で研究が進み、『強化外骨格』を作れる様になったら、少しずつ小出しにしていく予定じゃ。

 完成した『強化外骨格(素体)』を箱に収納して、ワシのインベントリに収納。

 後で王様に連絡して、すり替えておいたと交換すれば、ワシの御仕事は終了なのじゃ!

 王様曰く、『盗まれる可能性があるから、最初は偽物を用意して欲しい』と言われて疑問じゃったが、『一度盗ませれば、相手も油断するだろう』との言葉で、一応すり替えておいたのじゃ。

 まぁ『偽物』とは言うが、『強化外骨格』を作っておった時の最初期の物で、性能はすんごく低いだけで、一応は本物の『強化外骨格』なのじゃ。

 性能が低過ぎて自爆機能は付けておらんが、搭載しておいてもし盗まれた場合、何処に運び込まれるか分からんから、いきなり王都の何処かで大爆発!なんて事になったら、流石に盗まれたとしても大問題になってしまう。

 それに、この『強化外骨格』じゃが、新兵が着用すると、その強さがド新人から新兵(2年目)になる程度の性能しか無いのじゃ。

 具体的には、力がちょっとだけ上がるのに、防御力は普通の鎧と大差無く、冷却機能も無いからどんどん中が熱くなっていき、搭載しておるマナの量も少なく稼働時間は10分程度。

 使っておる素材も、ボーンフレーム含めて、全てミスリルに鉄とかの安価な金属を混ぜた合金のみ。

 試したムッさんが言うには、『こんなんで良いのか?』と評価しておった。

 つまり、『強化外骨格(偽物)』を盗んでコピー品を作って戦闘部隊に配備しても、ただのゴミ集団が出来上がるだけじゃ。




 それでは、次はキャンピングカーから設計図を描き上げ、そこから素材を選定し、暫定的に重量を計算して、牽引用のゴーレムを設計するのじゃ!

 そうして自室空き倉庫でカリカリと設計図を描いておったら、時間が経つのを忘れ、日付が変わり、太陽がコンニチワ!する頃になってしまった。

 流石に徹夜してまで描き上げる物ではないのう。

 ちょっと仮眠してから授業せねばならぬのう……

 そう思って、一応数時間しか寝れぬ様に『睡眠時間制限ポーション(3時間バージョン)』を作って飲んでおくのじゃ。

 さて、ベッドに横になってお休みなさいなのじゃ。




 そしてキッチリ3時間後、流石に眠気が残っておるが、何とか起床し、欠伸をしながらベッドの中で伸びーとしてから起き上がる。

 洗面台で歯磨きして、いつもの先生の恰好になってから、外に出ると……

 まぁ死屍累々。

 そこには数名の兵士達と、何故かギラン殿とドリュー殿が倒れておった。

 何事かと思って、一応ワシの周りの気配を探知してみるが、別に不審者はおらぬ。

 取り敢えず、杖を取り出し、ギラン殿の肩辺りを突いて声を掛けてみるが反応がなかったので、微弱な静電気程度の『雷魔法』をパチッとやると、『うはぁ!?』とギラン殿が飛び起きたのじゃ。

 で、話を聞いて見ると、何でも王城から緊急の呼び出しが掛り、兵士と一緒に部屋に来たものの、扉は開かぬし、いくら声を掛けても返事も無い。

 止むを得ず、学園に保管されておる合い鍵を使って開けた後、ドリュー殿が入ってワシを呼ぶ事にしたらしいのじゃが、ギラン殿が合い鍵を差し込んだ瞬間、全員が防犯用に仕掛けておった『広範囲失神魔法』を受けて失神してしもうたらしい。

 この防犯用に仕掛けておいた魔法じゃが、バートや兄上、カチュア殿とニカサ殿の様な親しい相手であれば、発動せぬ様に除外設定をしておいたのじゃが、他の面々は登録しておらんかった。

 流石にワシ魔女の部屋である以上、盗まれたら洒落にならん物もあるから用心しておったのじゃが、ちょっとコレは考えておかぬと拙いのう。

 取り敢えず、手分けして兵士とドリュー殿を起こし、一応謝罪をした後、直ぐに準備して兵士達と共に馬車で王城へと向かったのじゃ。

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