第255話
王都に戻って宰相殿に報告した後、学園の
まぁ今度というか、コレから作る予定の物じゃけど。
『強化外骨格』を強化したのは良いのじゃが、使えるのがムっさんだけな上に、あそこまで威力が高過ぎるのではいざという時に使えぬ。
かと言って、武装を追加してものう……
そんな事を考えておったら、部屋の扉がノックされたのじゃ。
「ぉ? こんな時間誰じゃ?」
「師匠、俺だ、バートだ。 今大丈夫か?」
バートが訪ねて来るのは珍しいのう。
別段何かしておった訳では無いから、入っても問題無いぞ?
そう言うと、バートが部屋に入って来たのじゃ。
ただ、その手には何やら大量の巻かれた紙筒が抱えられておる。
「ムっさんの『強化外骨格』を改造したって聞いたんだが、本当なのか?」
「うむ、確かに改造はしたんじゃが……ちょっと問題があってどうするか考えておったのじゃ」
「……どんな問題かは聞かないでおくが……それで俺の方でも少し考えてみたんだが……」
バートが持っていた紙筒を机に広げると、そこには『強化外骨格』の強化案がいくつも書き込まれておったのじゃ。
そりゃもう全部の紙にびっしりと。
よくここまで考えたのう……
「ふむ、それぞれ目指した方向性が違うんじゃな?」
「あぁ、全部が同じじゃ対処されたら何も出来なくなるからな」
「しかし……コレとコレとコレは無理じゃな」
軽くチェックしながら、この時点で気が付いた実現不可能なヤツを弾いたのじゃ。
弾いたのは、遠距離から超強力な一撃を放つ機構を搭載した『強化外骨格』、複数の腕で複数の武装を使い分けて多角から攻撃する機構の『強化外骨格』。
そして、飛行ユニットを背部に装備して飛行する事を可能にした『強化外骨格』じゃ。
「試みと考えは面白いんじゃが、この3つは実現出来ん」
「どうしてだ? やり方によっては出来ると思うんだが……」
バートの疑問は最もじゃな。
確かに、強力な一撃とか、複数の腕とか、空を飛ぶとか、そう言った機構を搭載する事は可能じゃ。
問題は、それを賄うためのマナが圧倒的に足らん、と言う点と、複数の腕を効率的に動かす事は不可能と言う点じゃ。
複数の腕に関してじゃが、人間の腕は左右1本ずつで1対しかないのじゃが、それが2対、3対と増えれば、当然、動かした際に腕同士でぶつかってしまうじゃろう。
ムっさんの『強化外骨格・改』の様に、追加した腕を動かす用の補助システムを搭載すれば動かす事は出来るじゃろうが、人の動きの様な複雑で柔軟な動きは不可能じゃ。
出来て、盾を持たせて常にカバーさせるか、杖を持たせて魔術を使う程度じゃろう。
そして、どれにも共通する問題じゃが、圧倒的にマナが足りん。
ワシが設計し、改造した『強化外骨格・改』でも、封印したあの攻撃を一発使っただけで、増設したマナタンクを含めても9割近くが消費しておる。
じゃが、バートが線を引いた設計図じゃと、マナタンクを大幅に増設した訳では無く、装甲や機能の一部を簡略化したりしておるだけじゃ。
まぁ『強化外骨格・改』の様にマナタンクを増設すれば、遠距離からの砲撃は出来るじゃろうが、機能的に複腕式は無理じゃし、飛行型はもっと無理じゃ。
飛行型は浮かせるだけなら出来るんじゃが、それを『飛ばす』と言うのが難しいのじゃ。
地球じゃと、物を自在に飛ばすには二通りの方法がある。
物体の形状で揚力を持たせるか、圧倒的な爆発力で推進力を得るか、じゃ。
前者は飛行機、後者はロケットじゃな。
そして、『強化外骨格』を飛ばす場合じゃが、普通に大推進力で飛ばしたら、風圧で中の人が死ぬ事は無くとも大怪我するじゃろう。
下手すれば腕がモゲる。
なので、『強化外骨格』の周囲にバリアの様な障壁を発生させる必要がある。
その『強化外骨格』も、かなりの重量があるから、飛行させるには推進力も相当なパワーが必要になるのじゃ。
「更に、一直線に飛ぶだけなら出来るじゃろうが、自由自在に動かすともなると、マナの消費量は馬鹿にならぬから、あっという間にマナ切れになって、空から落っこちるじゃろうな」
「……駄目なのか?」
「現状では無理じゃなぁ……少なくとも、『強化外骨格』で使っておる合金よりも、マナを溜め込む事が出来る金属でも無ければのう」
そう言いながら取り出したのは、青みを帯びた金属。
コレはミスリルを主軸に、魔粉やマナタイト鉱石といった、いくつもの金属や素材を組み合わせて出来たマナを溜め込む事が出来る合金なのじゃ。
当り前じゃが、配合比率もメモってあるので、錬金術を使える者であれば再現する事は出来るのじゃ。
ワシが付けた仮称じゃが、その見た目から『ブルーメタル』。
一応、自然界には、
当り前の事じゃが、生産性なんて度外視し、ワシだけにしか作れぬ素材ばかりを使えば、あっさりと問題は解決するんじゃが、それじゃと後々困る事になる。
まぁちょーっとだけ、『作りたいなー』とは思った事が無い訳では無いのじゃが。
……しかしアイデアは良いのう。
「しかし、それ以外は十分可能じゃな」
「本当か!?」
「うむ、それに丁度良い、バートに『強化外骨格』の『素体』を1体渡すから、自由に弄り回すと良いのじゃ」
一応、何かあった時の為に、予備の『素体』は作ってあるのじゃ。
この『素体』は、バート達が使っておる物ではなく、ムっさんも含めた全員のデータをフィードバックし、最適に調整して完成させた、所謂、完成品なのじゃ。
当り前じゃが、暇な時にバート達の『強化外骨格』も、この完成した『素体』に変えていく予定じゃった。
ここでバートに一体渡した所で問題は無い。
寧ろ、どんな『強化外骨格』に仕上がるのか、非常に興味があるのじゃ。
「と言う訳で、コレが完成品の『素体』じゃ」
「………何か変わったのか?」
「見た目は殆ど変わらんのじゃ。 まぁよく見れば細部は変わっておるがの」
銀色のアイア〇マンが部屋の中央に立っておるが、本当によく見れば関節部や可動部分のデザインが変わっており、スムーズに動かせる様になっておるのじゃ。
それをバートが
有り得んと思うが、もし、壊れたりしたら大変じゃからのう。
そうして、バートが帰った後、作るのは不可能とした設計図に視線を落としたのじゃ。
そして、ある事に気が付いたのじゃ。
これ、確かに普通の人間には扱えんけど、人間以外なら使えるんじゃなかろうか?
そう考え、新たな紙を机に広げ、カリカリとペンを走らせる。
もしこれが実現出来れば、かなりの戦力アップが見込めるのじゃ!
材料は前に兄上から貰ったのがあるし、設計図が完成すれば、即試作品を作るつもりじゃ。
そう思って設計図を書いておったら、今度は兄上が訪ねて来て、かなり危険な『呪い』が付いておる首飾りを預かったのじゃが、コレは中々難儀な『呪い』じゃなぁ……
それに兄上の話では、屋敷が『迷宮』になり掛けておったと言うが、恐らく、この首飾りのルビーが『迷宮核』の代わりになっておる。
『執着の呪い』とも言うべき『呪い』によって、周囲のマナを集めまくり、所有しておった者が『誰にも渡さない』と言う執念を強く持ち続けた事で、誰も近寄らせぬ様に『迷宮化』が起きたのじゃろう。
取り敢えず、解呪してから問題無ければバラして素材かのう。
ササっと解呪したのじゃが、使われておる宝石はルビー、土台はミスリルに金箔、そして、『呪い』はルビーに籠められ、土台部分で増幅する仕組みになっておる。
このルビー、新しく作ろうと考えておる奴に組み込んでも大丈夫かのう?
そう思っておったのじゃが、コレを売った相手を探すとの事なので、解呪したら一旦兄上に返却する事になったのじゃ。
暫くして、設計図を書き上げ、まずは小さい試作品を作って試しておったら、『瘴気の沼』での一件が兄上の耳に入った様で、やって来た兄上との鬼ごっこの末、獲っ捕まってアイアンクローを喰らったのじゃ。
「お・ま・え・は!! 言った途端に危険なモン作ってんじゃねぇっ!」
「ノォォォォッ! 割れるっ! 出ちゃいけないのが出ちゃうのじゃぁぁっ!?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます