第248話
「……頼まれてきたの持って来たぞ」
そう言った兄上が、部屋にある机に袋を置いたのじゃ。
その袋を手に取ってひっくり返すと、袋の中からジャラジャラとかいう音じゃなく、ゴドゴドゴドと凄まじく重い音が響いたのじゃ。
試しに一つをそのまま手にして持ち上げようとしたのじゃが、聞いておった通り、鎖の輪っか一つだけでも持ち上がらん程クソ重い!
「ふぬぬぬぬぬっ!?」
「……お前の腕力じゃ無理だろ、大人しく『身体強化』使っとけ」
兄上に言われた通り、大人しく『身体強化』を使って持ち上げたのじゃが、それでも凄まじい重量じゃ。
見た目は、500のペットボルが入りそうなサイズの輪っかなんじゃが、100キロとかあるじゃろ。
そうなると、此処にあるだけでも相当な重量じゃな。
「ありがとうなのじゃ、さて、コレでやっと目的の物が作れるのじゃが、兄上は早かったのう。 一日でこれだけの量を集めて来るとは予想外じゃ」
「あの後、ちょっと寄り道したが、直ぐに『狂牛迷宮』に行ったからな」
「兄上の実力を考えたら、ミノタウロス達からすれば災難じゃろうなぁ」
比較的平和にしておったのに、いきなりぶっ飛んだ実力の人間がやって来て蹂躙されるんじゃもの。
しかも、兄上は習得しておるスキルも、最低限しか使っておらんから、コレでスキルまで駆使し始めたら、強敵が多過ぎて踏破不可能とか言われておる迷宮でも踏破出来るんじゃろうな。
なんとなく、阿鼻叫喚になったミノタウロス達の様子が想像出来るのじゃ。
他の産出品に関しては、使えそうな物は持っておき、使い道の無い物は全て冒険者ギルドで売却予定なのじゃと言う。
使い道の無い物というのは、骨とか角とか装飾品とかで、骨や角は錬金術とかに使ったりするらしいのじゃが、ワシはいらんし、学園にもそれなりの数が保管されておる。
装飾品も、何か
まぁこういった物のデザインが好きな好事家が、優先して買ってくれるなんて話もあるんじゃが、何と言うか、棒を捻じった物をいくつも組み合わせたデザインとか、板のように加工された物を『鳴子』みたいにした物とかじゃから、欲しがる者の考えは良く分からん。
「それで、頼んでたヤツは出来たのか?」
「うむ、そっちはもう出来ておるよー、机に置いてあるのじゃ」
あの後、兄上が去った後にサクッと作っておいたのじゃ。
頼まれたのは、体内のマナが急に活性化したら意識を強制的に落とすという魔道具じゃ。
兄上曰く、『
床に積み上がった戦利品を、ワシの
さて、それよりもコレでワシの考えておる物が作れるのじゃ。
「で、何でこんなモンが欲しかったんだ?」
「うむ? 言ってなかったかのう?」
「聞いてないな」
そうじゃったかのう?
まぁ別に兄上なら言っても問題無いじゃろう。
そうして、手に入った物でコレから作る予定の物と、どういう仕組みなのかを説明したのじゃ。
そうしたら、兄上が盛大に溜息を吐いておった。
「……と、まぁそんな感じで、ソレを作る為にどうしても、重い金属が必要じゃったのじゃ!」
ぉ?
兄上どうしたのじゃ?
急にワシの頭に手を置いて……
「……お・ま・え・は!」
「あだだだだだだ!? 割れるっ割れて出ちゃいけないモノが出てしまうぅぅぅっ!?」
兄上の馬鹿力で繰り出されたアイアンクローがワシの頭に炸裂!
ギリギリと締め上げられ、出ちゃいけない物が出てしまうのじゃ!?
「全く、お前はよりにもよってあんな物を再現しようとするな!」
しばらくして、兄上のアイアンクローから解放されたのじゃが、凄まじい痛みは残っておるから、思わず頭を抱えて、回復魔法を掛け続けたのじゃ。
咄嗟に身体強化と防御用の魔法で耐え切ったのじゃが、それでもソレを貫通してくる兄上の力はやっぱり脅威じゃな。
「こういった手段は多いに越した事はないじゃろ? それにまだ理論で出来るかもしれんって所じゃし……」
「そうだとしてもだ、それを重犯罪者に使わせるのが問題だってんだよ」
「そうは言っても、コレは『強化外骨格』を使う関係上、ムっさんくらいしか使えんのじゃよー、なんだかんだ言って、兄上よりも使いこなしておるんじゃし……」
その言葉に、兄上が舌打ちしておる。
魔術を使わない状態で『強化外骨格』を着た状態で戦うと、実は兄上やヴァーツ殿よりも、ムっさんの方が強いのじゃ。
コレは兄上やヴァーツ殿の動きに『強化外骨格』が付いて来れず、どうしても遅くなってしまうからじゃ。
その結果、ムっさんの方が強くなるのじゃが、当たり前の事じゃが、兄上やヴァーツ殿は『強化外骨格』を使わなければ、ムっさんが『強化外骨格』を使っておっても勝てるのじゃ。
しかし、このクソ重い金属を使う新しいモノは、その性質上、どうしても『強化外骨格』を使わねばならんので、ムっさん以外に使えんのじゃ。
「当たり前じゃが、安全装置も組み込むし、出来んかったらただのゴミになるだけじゃから、そこまで気にする物でもないじゃろ」
「……まさかと思うが……もう一つの方も作る気じゃねぇだろうな?」
「ぁー……あっちはどうやっても再現出来んから、作る予定も無いのじゃ。」
兄上の言っておるのは、多分、アレの事じゃろうが、最初は再現出来るか軽く計算してみたのじゃが、どうやっても絶望的にエネルギーが足りん。
少なくとも、再現するには最低でもワシがあと1000人単位で必要になり、それでも発動するか分からん。
それに、発動したら多分、この星自体が耐えられんじゃろうし、使おうとしたら
アレはそんなレベルのモノじゃし。
「……本当だろうな?」
「ホントホント、ワシ嘘付かない」
別に嘘は付かんが、時と場合によっては本当の事も言わんけど。
兄上ならそのくらい分かるじゃろうけど、ワシの言葉を聞いて溜息を吐いておる。
「……まぁ良い……だが、もしやらかしたら、今度はアイアンクローを全力でやるからな?」
「ぇー……アレで全力では無いのじゃ?」
防御せねば色々出ちゃうと思ったのじゃが、アレでも全力では無いと?
そう言えば兄上、身体強化は使っておったけど、黄金龍殿と戦った時に使っておった魔法は使っておらんかったのう……
……うむ、これ以上は考えぬ事にしよう。
兄上の警告を受けたのじゃが、ワシは一人部屋の中で大量の素材から目的の物を作る事にしたのじゃ。
一つ一つを机に置いて、魔法と錬金術を駆使し、それらをどんどん変化させ組み合わせていく。
途中、机がその重量に耐えられなかったのか、バギッと音を立てて圧し折れたりしたのじゃが、何とか修理しつつ、作業を続行していくのじゃ。
そして出来上がったのは、黒光りする一つの球体。
その表面にはいくつもの魔法陣が刻まれ、それがフワフワと宙に浮いておる。
コレは『浮遊』させんと、最早強化した机でも耐えられんかったからじゃが、とてつもない物が出来たのう。
なお、今回出来上がったのは5個じゃが、その内一つは試すからカウントせぬので、実際は4個使える訳じゃ。
まぁコレを試すには、かなり広い場所に行って、尚且つ誰もおらん事が条件になる。
そんな都合の良い場所を探さねばならんのじゃが、後で宰相殿にでも聞くとしようかのう。
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-まさかのミノタウロス迷宮全カット-
-迷宮行って出て来るミノタウロスをただ只管ザクザクと処理しただけですからね-
-そりゃワンパターン過ぎてカットされるわね、でも屋敷の方は?-
-普通に外から見ただけで何か分かる訳でもありませんよ?-
-まぁ見ただけで分かる様なら売り出しなんてしないわね-
-よく「見ただけでヤバイのが分かる」なんてのが偶に出てきますけど、何で放置されているんでしょうね? そのレベルなら、何を置いても解決する為に攻略すべきだと思うのですが……-
-依頼するお金が無いとか、諸々の事情があるとか……-
-放置したら被害拡大で、被害者への謝罪やら賠償やらでもっと高くつくでしょうし、放置し続けたギルドの信用問題になりますから、放置する方が結果的にマイナスだと思うんですよねぇ……-
-今回のも放置じゃないの?-
-うちでは定期的に教会に依頼してる状態でしたね-
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