第242話




 肩に担いだボロボロになった長い丸太を、隅にある一時的に保管してる場所にガラガラと投げ捨てる。

 訓練だか授業だかで使った奴らしいが、このゴミはこの後、薪にするのとゴミとして処分するのに選別するらしいが、全部ゴミにする訳じゃ無いらしい。

 メンドクセェからゴミにしたら駄目なんかね。


『……ったく、捨て終わったぞ』


「御苦労様です。 それじゃ次は……」


 俺が戻って言うと、そんな事を言いながら手元のメモ書きを見てやがるのは、あのクソガキのツレで、エルフの女で、俺の監視役でもあるカチュアだ。

 最近じゃこの学園でクソババアと一緒にいるが、クソガキが何か忙しいとかで、俺の監視役になってる。

 まぁ『強化外骨格』の手入れをするには、クソガキ以外だとコイツしか出来ねぇし、俺の首には逆らうと全身が痺れて動けなくなる首輪があるから従うしかねぇ。


『おいおい、やっとゴミ捨てが終わったのに、もう次があるのかよ』


「仕方無いでしょう、雑務はいくらでもあるんですから。 『錬金科』の倉庫の一つで荷物整理があるそうなので、そっちに行ってください」


 『錬金科』ってのは、あのいつでも怪しげな事してる連中のいる所か。

 学園に来た初日に、俺の『強化外骨格』を分解したいとか言って来やがったが、カチュア達が『許可出来ない』と突っぱねたら大人しく引き下がったが、隙を見て寄って来るからうざったい事この上ない。

 本当なら行きたくねぇが、犯罪奴隷にされてる時点で逆らう事も出来ないから、仕方無くそのまま倉庫の方に向かう事にした。

 で、問題の倉庫だが、校舎の隣にいくつかある訳だが、その一つでそれなりの人数が荷物を運び出しているのが見えた。


『手伝えって事だから来たが、何すんだ?』


「おぉ、援軍が来たぞー!」


「コレでやっと終わりが見える!」


「しかも例の鎧だぞ!」


『えぇい、さっさと何するか言え! こっちも暇じゃねぇんだよ!』


 纏わり付いてきそうな奴等を警戒しながら、倉庫の整理をするってだけしか聞いてねぇんだよ。

 そして聞いてみれば、何でも倉庫を新しく導入した専用のゴーレムに対応させる改造をする為、一時的に倉庫の中身を全部出す必要があるという訳で、隣の倉庫に運んでいく最中らしい。

 軽い物や扱いが難しい物は既に運び出されていて、今残っているのは重量がある物や、それなりに扱いを雑にしても大丈夫な物が、今でも倉庫の中に残っている。

 つまり、俺はそれを運べば良いだけか?


「そうそう、荷物はこっちの台車に置いてください」


『あ? なんだこの台車』


 倉庫の前に並んでいるのは、それなりに大きい一枚板。

 ただ、台車と言うには車輪も取っ手も無いんだが、コレが台車なのか?


「コレが今度新しくする倉庫に導入するゴーレムなんですよ。 見ていてください」


 そんな事を言ったから見ていると、その台車に荷物が数個乗せて紐で固定すると、側面部から複数の足が生えて来て、板が持ち上がってまるで虫の様にカチャカチャと一人で歩いていく。

 気持ち悪ぃ!?


「魔虫を参考にして、ギラン教授が開発した荷運び用のゴーレムです。 これが本格運用されれば、運輸に革命が起きますよ!」


 興奮気味に言ってるが、正直、動きが虫みたいだから使いたがる奴はそんなにいないと思うぞ。

 寧ろ、新種の魔虫と思われて討伐されるんじゃね?

 まぁどうせこの学園の中だけで使われるだけだろうから、別に良いか……


 クソ重たい荷物を運んでは台車ゴーレムに乗せる。

 だが、余りに重い物だとゴーレムが運べないのか、足が生えても荷台が持ち上がっていない。

 そう言う荷物は仕方ねぇから直接運ぶ事になるが、それを見ていた奴が『やはりもう少し足を太くしなければ……それとも出力を上げれば……いや、それだと安定性が……』なんてブツブツと呟いているのが怖ぇ。

 さっさと終わらせて戻るか。

 そうしてある程度荷物を運び終えると、ガランとした倉庫に何か柱の様な物が運び込まれ、元々あった棚に付けられていく。

 まぁコレは俺が手を出せるモンじゃねぇから、もう終わりで良いか?


「ぉ、ここにおったか」


 一息ついてたら、聞きたくねぇ声が聞こえて来た。

 ゆっくり振り返ると、そこにいたのは、髪色が違ったり眼鏡付けてたりするが、間違いなくあのクソガキだ。


『……何の用だよ……』


「うむ、ちょっと用事があっての、おーい、コヤツをちょっと借りていくがもう大丈夫かのう?」


 クソガキがそんな事を聞くと、後は問題無いという返事が返って来たので、俺は大人しくクソガキの後を付いて行く事になった。

 そして通されたのは、あのクソ忌々しい巨大ゴーレムが運び込まれた地下倉庫。

 そこに、全体的に黒っぽい色の部品が大量に吊り下げられている。


「さて、早速じゃが『強化外骨格』を脱いでくれんか?」


『まず、理由を説明しやがれ、このぶら下がってんのは何だ?』


「む、まぁそれも当然の事じゃな。 良かろう」


 クソガキが説明したが、要約すりゃ『強化外骨格』を更に強化する必要があるが、強化したら動かすのが相当に難しくなるらしい。

 で、真面に使えるのが、多分俺だけらしい。

 他にも、一部の機能が素材不足で使えないらしいが、基本的な動きには問題は無いらしい。

 何で『らしい』ばっかりなのかと言えば、このクソガキでも初めて試す事だからどうなるか分からねぇからだが、今後の事を考えればやらなければならないと言うのが、クソガキの考えだ。

 確かに、あの巨大ゴーレムみたいな奴が増えたら面倒だからな。


「と言う訳で、ちょっと部品を取り付けるから出て欲しいんじゃよ」


『……本当に大丈夫なんだろうな?』


「あくまで部品を追加するだけじゃから、動きが変わったりする訳でもないから大丈夫じゃよ、まぁ力が強くなったりするが、元々の『強化外骨格』の強度もあるから問題無いじゃろう」


 ……マジで大丈夫なんだろうな。

 前みたいに死に掛ける様な事にならねぇだろうな?

 『強化外骨格』をクソガキに渡すと、クソガキが俺の『強化外骨格』を天井から吊り下げている鎖の幾つかを使って少し浮かせる様に吊り下げる。

 そして、同じ様に吊り下げられていた部品をどんどんと、俺の『強化外骨格』に装着していく。

 俺の体内属性に合わせて緑色になっている外装に、どんどんと黒い部品が装着されていくんだが……

 なんか見た目がどんどん禍々しくなってんだけど?


「よし、コレで完成じゃ」


 クソガキがそう言って鎖を操作して『強化外骨格』を地面に降ろしたんだが……


「おい、なんつーか、見た目が酷ぇんだが?」


「コレは仕方無いんじゃよー、一応弁明するが、この見た目になったのはちゃんと理由があるんじゃ」


 クソガキが言うには、新しく組み込む予定になっている武器を安全に使う為に、外装を強化する必要がある上に、熱を外に放熱する関係で鋭利に尖った部分が必要になる。

 外装を強化した関係で、重量増加は避けられず、姿勢制御をする為に?とか言う水晶みたいな部品が各所に必要になったとの事。

 重量増加で移動が遅くなるという問題に対して、地面から少しだけ浮いて、肩や背中にある巨大なばらんさーから推進力を得て進むなんて、訳の分からない移動方法をするとか言ってやがる。

 そして、専用の武器も用意すると言ってるんだが、まだ素材が無い為に間に合わせの武器らしいんだが、見た目は巨大な剣。

 ただし、色が全体的に黒い上に、刃の一部や柄の部分が真っ赤に染まっていて、それが血管みたいにも見えるから、余計に見た目がヤバイ。

 こんなん戦場とかで見たら、間違いなく敵だと思われると思うんだが?


「やー何というか、見た目は完全に『悪の魔王』と言われても仕方無いのう」


 クソガキが笑いながらそんな事を言ってやがるが、本当に大丈夫なんだろうなぁ!?











~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


-ムっさんの改造された『強化外骨格』の見た目は、完全にスパ〇ボのネオ・〇ランゾンです-


-ちょっと、あんな超常兵器みたいな性能してんじゃないでしょうね!?-


-あそこまでぶっ飛んだ性能はしてませんよ、精々……アレが使えるくらいです-


-……アレって何よ-


-しばらくお待ちください-


-ちょっと! ちゃんと答えなさいよ!-


-それでは、私はこの辺で失礼致します-


-ちょっとぉ!?-

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