第243話
完全に禍々しい見た目になった俺の『強化外骨格』。
恐る恐る中に入っていつものように動かそうと思ったんだが……
『おい、クッソ動き辛ぇんだけど!?』
「あー、バランサーの出力がまだ低いようじゃな、ちょっと待っとれ」
腕を動かそうとしただけで、ギギギと金属が擦れるような音が響き、上げようとした腕ががクソ重い。
クソガキがそんな事を言って、俺の後ろに回ると、カチャカチャと何か操作してやがる音が聞こえて来る。
前みたいに、ちょっと動こうとしただけで死に掛ける様な事が無けりゃ良いんだが、クソガキが作ったモンなだけに怪しい。
「コレでどうじゃ?」
『……まだ少し重いが、まぁこんくらいなら問題はねぇな』
最初に比べて金属が擦れるような音はしなくなったが、若干、動きが遅れる感じがする。
まぁコレは使っていけば慣れるだろうが、後の問題はこの見た目と、重量が増えたから動ける時間が短くなってるんじゃねぇか?
「まぁムっさんの考え通り、追加分で重量増加はしておるから、普通なら稼働時間は前と比べればかなり短くはなるんじゃが、そこ等辺も改良しておいたから問題は無いのじゃ」
『どういう事だよ』
「追加した外装に付いておる水晶が、それぞれ魔水晶と言うマナを充填しておる水晶になっておるのと、バランサーパーツに『マナ吸収』の魔法陣を刻んでおいたのじゃ。 コレで静止中は周囲のマナを吸収して魔水晶にマナを溜めておくようになっておるから、稼働時間そのものは前とさほど変わらん。 まぁマナ消費が激しい攻撃も追加したから、それ等を連発したら直ぐに動けなくなるじゃろうがのう」
そして、見た目に関しては状況に応じて展開し、装着する様にする予定らしい。
普段はいつもの状態で、戦闘時にはこの禍々しい見た目になると。
しかし、追加した攻撃って何だよ。
「まず、基本は両手に追加した魔水晶のマナを一気に放出する攻撃じゃろ? その際にバランサーの出力を調節すれば、近距離から遠距離まで対応出来る様にしたのと、背中のバランサー部分にマナを集約して『強化外骨格』を包む様に障壁を展開出来る様にしたのと、その障壁を開放して周囲全体を一気に吹き飛ばす事が出来る様にしたんじゃが、この攻撃は完全に無差別じゃから、普段は使えぬ様に封印しておいたのじゃ、後は……威力は一番高いんじゃが、ちょーっと問題がある攻撃なんじゃが、素材がまだ無いんで完成したら教えるのじゃ」
『……おい、周囲に無差別攻撃する以上に危ねぇってどんな攻撃だよ』
無差別攻撃も危ねぇのに、それ以上の攻撃ってどんな攻撃なんだよ。
そう言ったら、クソガキは両腕を組んで唸っている。
「アレは口で説明しても、分かり難いからのう……まぁ言ってしまえば、ぶっ放したら多分、黄金龍殿でも相当に脅威と感じる様な攻撃じゃな」
クソガキがそんな事を言うが、黄金龍ってのは、前に襲って来た『
確か、クソガキ以外にも同時に『龍殺し』とかが相手にして、勝てなかった相手って話だよな?
そんなヤツが脅威に感じるってどんな威力してんだ?
「そうじゃなぁ……もし此処で最大威力でぶっ放したら……一瞬で王都が全て消滅するかのう」
『危ねぇな!?』
「まぁ素材もまだ届いておらんし、そもそも、理論としては完成しておっても実際に出来るかは分からんから、もしかしたら使えぬかも知れんけどなー」
おう、出来ねぇ事を全力で祈ってやるよ。
その後、この追加した分は背中側に部品を追加し、その中に収納される事になり、見た目は背中側の腰辺りに小さい箱が二つほど追加された感じになった。
これにより、任意で装着出来る様になった訳だが、俺にはそれ以外にもなんか訳の分からない課題が課された。
それが、『強化外骨格』を着た状態で両手からマナを放出し、物を浮かべて圧し潰すという物。
その圧し潰す物も、水から始まり、木、石、鉄とどんどん硬い物になっていくが、こんなん何に使うんだよって思っていたら、クソガキに『必要な技能じゃから!』と念を押された。
こんなん本当に何の意味があんだよ……
ムっさんに『強化外骨格・改』の仕様を説明した訳じゃが、アレはまだ未完成。
兄上から素材が届いたら、安全装置と共に組み込むんじゃが、アレが完成したらもう一つの方にも着手する予定になっておる。
一応、一部は完成しておるんじゃが、此処で組み立てて完成させるには、ちーっとばかし狭いんじゃよなぁ……
組み上げてから色々と確認せねばならんのじゃが、このままではぶっつけ本番になってしまう。
まぁ使うかどうかは分からんし、完成しなくても良いんじゃが、用心するに越した事はないからのう。
そうして、『錬金科』の倉庫から
そうして、店舗に来たのじゃが、そこにはベヤヤも来ておった。
まぁ護衛の兵士も沢山おったのじゃが、コレは『ベヤヤを』と言うより『ベヤヤから』守る為の兵士じゃろうな。
最も、ただの兵士でベヤヤが止まる訳が無いんじゃが、いるのといないのとでは周囲の安心感が違うからのう。
「ベヤヤもこの間振りじゃな」
「ガゥア(おう)」
ベヤヤと挨拶を交わし、ポーション工場の後ろにある広場に向かうと、そこには山積みになった箱、箱、箱……
いやぁかなりの量があるのう。
「此方、『シャナル』から魔女様宛てとして預かった荷物となります」
エドガー殿が手元にあるリストを確認しながら教えてくれたのじゃが、ワシの自宅にある畑や、町で収穫された野菜やら、ハーブ類やら、美樹殿が作った魔道具やらを、美樹殿が送ってくれたらしいのじゃ。
普通、『シャナル』から王都までは、到着までに長い時間が掛かるから、根野菜であっても腐ってしまうのじゃが、この箱は一種の魔道具になっており、密閉すると中の時間を停止させる事が出来る様になっておる。
そして、安全対策として中に生物が入った状態で魔道具を発動すると、魔法陣が赤く光って失敗する様になっておるから、万が一の事も起きる事は無い。
コレを考えたのは美樹殿じゃな。
ベヤヤは収穫された野菜類を受け取り、ワシは魔道具を受け取る事になったのじゃが、その魔道具の中には、魔道具ではない、ただの便利道具もいくつか入っておったのじゃ。
外科手術とかで使うメスや鉗子、金属製のトレイとかは勿論、釣り針の様に曲がった針なんかもあったのじゃ。
これ以外にも、クッキーの型とかミートハンマーと呼ばれる叩く部分が凹凸になっておるハンマーや、凄い物ではパスタマシンが同封されておった。
この異世界にもパスタはあるんじゃが、ショートパスタやフィットチーネと呼ばれる長くても太いタイプのパスタなんじゃよね。
エドガー殿にも聞いたのじゃが、長くて細いスパゲティの様なパスタは無いんじゃ。
これは、パスタを作る際、麺棒で薄く伸ばした後、早く切らないと端から乾燥して割れていってしまうからじゃな。
じゃが、このパスタマシンを使えば、手軽に細いパスタを作る事が出来る訳じゃ。
まぁ予想通り、そんな話を聞いて黙っている
でも卵が無くても作れるとは聞いた事があるんじゃが、どうなんじゃろ?
結局、そのまま店舗に併設されておる調理場で、料理熊によるパスタ作りが始まった訳じゃ。
まぁ材料は大量に届いたし、ワシは別に問題は無いんじゃが、調理器具関係は今後は全部ベヤヤに渡した方が良いかのう。
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