第224話
相手の生徒が救護室に連れて行かれるのを見ながら、次の決闘が始まったのじゃが、まぁあの生徒は悲惨じゃのう。
うちの三番手はカーラ。
カーラは魔術の構築や発動は早いのじゃが、その早さが仇となってマナの収束率にちょっと不得手な所があり、一撃の威力としては力不足だったのじゃ。
まぁワシが教えている以上、その力不足も問題は無い様な手段を教えたんじゃがな。
相手の生徒は、防御魔術を得意としておる様じゃが、まぁこの場合は相性が只管に悪いとしか言い様ががない。
カーラが使っておる魔術は、氷の塊を飛ばす『
じゃが、問題はその数じゃ。
一撃が弱くとも、それが10発、20発ともなれば、それだけで脅威になる。
カーラの持つ
相手の生徒の防御魔法に、氷のゴルフボールが大量に衝突しまくり、砕け散ってキラキラと光を反射しておる。
ワシが教える前は体内マナの量が少なく、これ程の量を発動させ続けるのは無理だったのじゃが、『流転法』で体内マナの量が圧倒的に増えた事で、これ程の量を問題無く撃ち続ける事が出来る様になっておる。
そして、これまでの彼等の戦闘方法から、ワシには何となくじゃが彼等の目的が見えて来たのじゃ。
ヴァルは身体強化を使って相手を一撃で倒した訳じゃが、その際、踏み込んだ事で足元に穴を開けており、その穴を通してミニンが『
そこに、今回のカーラによる大量の氷のバラ撒き。
その氷は砕けて溶けて水となり、破砕された地面を泥濘へと変化させ、その泥濘は、カーラの放つ魔術で冷却され、徐々に凍り付いていく。
更に、あの氷のゴルフボールにはちょっと仕掛けがしてあるようじゃ。
つまり……
「こんな所かな?」
目の前に出来た巨大な氷の塊を見て、初めて短杖を下した。
授業中、私は魔術の構築と発動速度はずば抜けて早いけど、その分、一発に籠められるマナの量が少ない為に威力が低いと先生から指摘を受けた。
最初は十分なマナを籠めてから撃つべきだと思ったけど、先生が言うには、『一撃の威力が低いなら、もっと発動速度を突き詰めて更に大量に撃ち込めば良い』との提案を受け、只管に発動速度を早くする訓練をした。
教えてもらった『流転法』で体内マナを引き上げるだけじゃなく、使用する魔術の術式にも手を加え、少ないマナでも形を整え、一撃の威力を下げる代わりに、更に早く発動する様にした。
その結果、普通の魔術師が1発撃つ間に、私は5発は撃てる様になった。
まぁその5発分で1発分にも届かない威力だけど……
それでも、私が目指している形が見えて来た。
それが『威力は低いが手数で相手を圧殺する』と言う手法。
それに、今回使った『氷の弾』には、途中からちょっとした工夫を施した物を使った。
普通の『氷の弾』は、ガチガチに凍らせた氷を生み出して相手にぶつけて攻撃する魔術だけど、私はこれの術式に手を加えて、外側だけ氷で作り、中はただの水にしてある。
当然、ぶつかれば氷は割れて中の水が撒き散らされ、その場で冷却されて凍り始める。
相手が防御魔術で防御してくるのは予測出来たから、ワザと最初は普通の『氷の弾』を連射して防御魔術を展開させ、途中から徐々に術式を弄った『氷の弾』に変え、上からもどんどん『氷の弾』を降らせて、相手の防御魔術に対して全体を覆う分厚い氷の塊を作ってあげた。
こうなれば、相手に出来る事は二つしかない。
防御魔術を解除して私の『氷の弾』の直撃を受けるか、巨大な氷に閉じ込められて窒息するか。
防御魔術は、攻撃魔術を防ぐ基本的な魔術だけど、大きな欠点があり、発動させるとその場から動く事が出来なくなってしまう。
だから、熟練者は周囲全体を守る様に展開せず、発動させても自由に動ける様に一部分だけを守る様に発動させたりするけど、学生である私達にはそんな器用な事は出来ない。
だから、今みたいに一度受けてしまったら、相手がマナ切れを起こすまで耐えるしかなくなってしまう。
私の体内マナ量は、先生の授業を受けてから圧倒的に増えていて、今はそのマナの放出量を制限しているくらいだ。
もし、まだ続けたとしても私はまだまだ余裕だけど、相手はもうどうにもならないだろうね。
取り敢えず、私の役目は終わったけど、相手は続けるのかな?
「それで、まだ続けますか?」
私の言葉に対して、聞こえているのか分からないが、相手陣営は慌てふためいている。
「は、早く氷を溶かせ! 死んでしまうぞ!?」
「火よ! 我が敵を打ち砕いて」
「馬鹿! 『
「兎に角、砕け!」
向こうの生徒達が慌てた様に氷の塊を破壊しようとしてるけど、決闘の結果は私の勝ちって事で良いのかな?
しばらくそうしていたけど、生徒ではどうにもならなかったのか、バーラード学年主任が出て来てあっという間に氷を削って救出していた。
でも、コレで私の勝ちが確定したので、そのまま悠々と皆の所に戻る。
「お疲れさん、やっぱり余裕だったな」
ヴァルが椅子に座って出迎えてくれるが、その様子は私が負ける事なんて考えていなかったようだけど、相手がこっちの予想通りに来てくれたから私は楽勝だっただけだ。
コレがもしもミニンが先程戦ったデルクだったら、ここまで簡単には勝てなかった。
私の使える魔術の威力に対して、デルクの使える魔術の方が威力が上だから、真正面から撃ち合ったら、私が撃ち負けてしまうし、ルタがミニンと戦っていたら、防御魔術を突破するのに苦労しただろう。
レオンは……うん、誰が戦っても結果は変わらなかったんじゃないかな?
「それで、此処までは予定通りにいったけど、本当に次にアイツが出て来るの?」
「ヴァル、ミニン、カーラに負けた事で、相手の残りは2人、向こうはもう負けられない以上、次に出て来るのは間違いなくアイツだろう。 それにライムは
確実に勝つ為ならプライドでも捨てられる様な相手なら、ライムの相手をするだろうけど、アイツは勝利よりも自分のプライドを優先する。
従魔師のライムちゃんの相手をして、例え勝ったとしても自慢出来る様な事じゃない。
何せ、ライムちゃん自身の強さは私達の中でも一番弱いし、テイムしているのも、一般的にはすごく弱いから、アイツなら絶対に勝てるけど、あの無駄に高いプライドが邪魔して絶対に出ないだろう。
それに、次は使いどころが難しい魔術を使うケンだから、絶対に勝てると思って確実にアイツが出て来るだろう。
それこそ、私達が仕掛けた罠とも気が付かずに。
皆が作ってくれた絶好のチャンス。
俺の魔術は先生曰く、『使い所も限られるし相手も選ぶが、それらが嵌れば相当に強い』と言われた。
まぁその使い所が一番の問題になるんだけどね……
それでも、今回は皆が下準備をしてくれた。
後は、勝つだけだ。
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