第216話
ゴーレムの胴体も調べた結果じゃが、何と言うか、既存の技術をちょこっとだけ弄って、地球の知識で使える様にしただけで、真新しい技術や魔法は一切使われておらんかった。
確かに、このサイズのゴーレムを運用出来るようにしたのは凄い事じゃが、コレなら別にゴーレムにする必要は無いじゃろ。
それこそ、ワシが作った『強化外骨格』みたいにすれば数も揃えられるし、寧ろその方が国防になるじゃろう。
まるで、巨大なゴーレムを作りたかったから作ったと言う感じじゃ。
「良く分からんのう……」
思わず呟いてしまうが、まぁ使われておるのが既存技術ばかりじゃから、対処法を考えるのは楽じゃな。
壁際にあったいくつかのインゴッドを貰って、別の机に持ってくる。
そして、どんどんパーツを作って行くのじゃ。
「ふむ、見る限り槍ですか?」
「どちらかと言うと、投げ槍に近い物じゃな」
ただの投げ槍を投げただけでは、どうしても飛距離が出せぬ。
そこでワシが考えたのは、投げ槍自体に推進力を持たせ、投げた後に目標に向けてすっ飛んでいくと言う物じゃ。
まぁ聞くだけならロケットみたいに聞こえるじゃろうが、それじゃ当たらずに外れ、回収出来なかった場合や相手に回収されたら、後々で問題になるじゃろうから、所謂、レーザーポインターの様な魔道具で目標を定める様にしたのじゃ。
その原理じゃが、槍の穂先の部分に燃料となる魔石を装着し、穂先に魔法陣で特定のマナ波動を感知する魔法陣を片面に刻み込み、もう片面には触れた魔法陣を破壊する魔法陣を刻む。
これはどっちもワシが考案した物じゃが、あまり使い道が無いから死蔵しておったんじゃよね。
そして穂先の後部に噴出孔を3か所装着し、柄の部分にマナを貯め込む
この投げ槍が物体に当たると、刻んである魔法陣破壊用魔法陣から一気にマナを送り込んで、相手の魔法陣をオーバーフローさせて破壊する訳じゃが、マナ吸収用の魔法陣相手では使えぬと思われるじゃろうが、ぶっちゃけ、あの魔方陣には一度に受け止められるマナの量に限界があるんじゃ。
サイズアップすれば受け止められる量は増えるんじゃが、それでも限界はあるのじゃ。
既存の魔法陣しか使っておらぬのでは、恐らく、魔法陣の研究とかはしておらぬじゃろうから、気が付いておらぬじゃろう。
この投げ槍はその点を突く訳じゃ。
このゴーレムの優位性は、攻撃魔法で直接攻撃されても、分解吸収してしまうという絶対的な防御方法を持っておる事じゃが、それさえなくなってしまえば文字通りただの的じゃ。
「成程、我々も対抗策を考えておりますが、魔法陣を対象にするというのはありませんでしたな」
「参考までに聞きたいのじゃが、どんな対抗策を考えておったのじゃ?」
ギラン殿達が考えておったのは、強力な金属製の縄を編み込んだ投網の様な物をゴーレムに絡ませたり、投石機を使って油樽を撃ち出し火を付けて酸欠を引き起こそうと言った物らしいのじゃが、どれも実現不可能と言う事で手詰まりだったらしいのじゃ。
投網は普通に強度が足りず、用意出来たとしても加工が大変な割に、一度しか使えぬので労力に見合わぬ、酸欠狙いは単純に大火事になる上に、ゴーレムの速度では燃やしても簡単に踏破されてしまう。
他にも、直接攻撃する物で、ワシの投げ槍みたいにマナの爆発を起こして推進力にして打ち付ける槌や、加速させて突き刺す槍等があったが、使用者が危険と言う点がある為に断念されておる。
完成させた投げ槍ミサイルじゃが、取り敢えず、ワシが用意したマナ吸収の魔法陣を刻んだ的を壁に立て掛け、投げるのはギラン殿じゃ。
コレは非力な術者であっても、同じ効果が得られる事を証明する為に必要な事じゃ。
「使い方は簡単じゃ、槍を起動するには穂先を右に捩じれば起動状態、10秒程で噴射開始になるんじゃが、注意せねばならんのは、起動させたらもう止まらんって所じゃ」
「こうですな」
ギラン殿が穂先を捻じると、カチリと音がして、噴射部分からシュィィィと音がし始めたのじゃ。
それを確認し、ワシはギラン殿が投げる前に、杖先から赤い線を目標へと照射するのじゃが、この線の名前は『ポインター』と名付けておる。
この『ポインター』も、魔道具化する予定じゃ。
そして、ギラン殿が起動して数秒待った後、軽く槍を投げると空中で噴射口から蒼白いマナが噴出を始め、一気に赤い線を辿って、的に直撃したのじゃ。
直撃した瞬間、穂先から青白い光と共に『ボシュンッ!』と音が響き、カランと床に落ちたのじゃ。
バートが的と槍を持って来て確認すると、槍の方に刻んであった魔法陣は、魔法陣破壊の際に噴出したマナの影響で破壊されて、再利用不可能となっておる。
マナ吸収用の魔法陣の方は、パッと見ただけでは変わってはおらんように見えるが、よく見れば線同士の接続部や複雑な部分が完全に焼け付いておるから、効果を発揮する事は無いじゃろう。
「うむ、大丈夫じゃな」
「コレは構造的にもかなり簡素ですから、他の物にも流用出来そうですな」
「それだけじゃねぇ、『ポインター』は遠くの目標とか相手を指定するのも出来るから、集団戦とかで特定の敵を狙うのがかなり楽になるぞ」
ギラン殿は槍の機能に着目した様じゃが、バートの方は『ポインター』の利点に気が付いた様じゃ。
そう、今までは司令官とかリーダーが『あの敵を狙う!』と言っても、相手が大量におったら分からぬ事が多い為、『角の色が違う』とか『一際巨体な奴』とか曖昧な表現で補佐しておったのじゃ。
じゃが、『ポインター』を使えば、遠くから狙う相手を多くの者に知らせる事が出来るのじゃ。
此処では言わぬが、この『ポインター』を辿って狙う魔法を作れば、遠くからでも魔法を収束して撃ち込む事も出来る様になる。
まぁ魔法同士の干渉があるじゃろうから、そこまで威力が高くなる可能性は低いんじゃが、逆に相乗効果を起こして異常な威力になる可能性は完全否定は出来ぬ。
この後、ギラン殿に使用した魔法陣を大きくした状態で説明し、ギラン殿が主導して問題点と量産体制を考える事になったのじゃ。
当り前じゃが、ギラン殿が主導するという事で、ワシとは守秘義務の契約を結んで、これを悪用しようとしたりしたら、全身が痺れて動けなくなり、更に、全身に蕁麻疹やら水疱が出来て酷い事になる様になっておる。
他にも、学園長以外に陛下達にも報告する様にも伝えておき、この研究は国も見ておると教えておいたのじゃ。
ただ、この研究に関しての予算は、表立っては出来ぬが国からこっそりと支援して貰える様に頼む予定じゃ。
この後、ワシは学生達に使う為の魔道具を作り、バートはワシが教えた『ポインター』を魔道具にする為の研究を始めたのじゃ。
結局、ワシが作った『流転法』を視覚化する為の魔道具が全て完成する頃には、既に空が白み始めており、ほぼ徹夜してしまった事になるのじゃ。
若干眠いのじゃが、流石に今から寝てしまうと、仮眠では無く本当に熟睡してしまうじゃろうから、『眠気を無くすポーション』を作って、それを飲んでから、完成した魔道具を鞄に詰める。
このポーションじゃが、眠気を感じなくなるだけで、身体は疲弊しておるから多用は出来ぬのう。
流石に、異世界に来てまで24時間戦う企業戦士にはなりたくは無いからのう。
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-そう言えば『24時間戦えますか?』ってCMとかで聞かなくなったわね?-
-現代では倫理的にも法的にもアウトとなりまして、今では放送出来なくなったそうですよ-
-……突っ込まないけど、24時間戦った後、どうすんの?-
-また、24時間の
-……やりたくないわね-
-御遠慮したい時代ですが、当時はそれが普通でしたので……-
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