第178話
ワシ等の目の前に降り立った白龍じゃが、黄金龍殿より二回りほど小さいくらいじゃな。
黄金龍殿ががっしりした体躯に対して、この白龍はスラリとした細い体躯をしておる。
まぁそれでもワシ等と比べれば十分大きいんじゃが。
と言うより、白と言うより銀色?
その白龍殿がワシ等を見下ろしておる。
「さて、此方を目指しておったようじゃが何か用かのう?」
取り敢えず、相手の目的を知らねば動きようがない。
結界で守ってはおるのじゃが、この距離でドンパチする気にはなれん。
兄上も剣の柄に手を置いて警戒しておる。
『まずは先の同族と眷族がやった事に対して謝罪を、申し訳ありませんでした』
黄金龍殿と同じ様に念話が届いたのじゃが、向こうと違ってこっちは叩き付けるような感覚ではなく、ちゃんと話し合うつもりなのか頭痛はせぬ。
そう言った白龍殿がワシ等に頭を下げる。
白龍殿が言う同族と眷族がやった事というのは、先の黄金龍殿の事じゃろうが、それに対しては既に謝罪は受けておるので、問題はないのじゃ。
それに、『まず』と言っておると言う事は、他にも用事があるんじゃろ?
『はい、黄金から話を聞いたので、確認の為に来たのですが……貴女が今代の巫女ですね?』
「まぁワシ自身は巫女では無いと思っておるんじゃが、黄金龍殿はそう言っておったのう」
「黄金龍から話を聞いてるって言うが、何か用でもあるのか?」
『『巫女』と『器』の件です』
確かに黄金龍殿の『器』に付いてはワシが係わっておるが、まさか白龍殿の『器』にも充填して欲しいとか、そう言う話かのう?
『いえ、そう言う事では無く、神託を受けていないのに、黄金が『巫女である』と言っていましたので、本当かどうかの確認ですね。 それと、新しい神獣がいるという話もありましたので』
成程。
確かに
それと、
コレに付いては、ちゃんと説明せねばならん。
短い間じゃが、この白龍殿は信用出来る方じゃろう。
「新しい神獣に付いてなんじゃが……あまり口外してもらっては困る話なんじゃが、ちょっとした手違いらしいのじゃ」
結界の範囲を広げて白龍殿も内側に入れて、ベヤヤは元々魔獣である事と、神力に満ちている特殊な魔石を摂取していた事で、神獣と同じ状態になっておるという仮説を説明したのじゃ。
まぁコレを説明する時点で、ワシがこの世界の女神である
『成程、巫女では無いが女神様と話す事が出来て、器を満たす程の神力を持ち、自由に魔獣を神獣に近い存在に変える事が出来ると』
そう言った白龍殿がじーっとワシの方を見ておる。
なんか、その視線が若干呆れを含んでおる様な気がするんじゃが……
『それで『巫女では無い』と言うのは無理があるのではありませんか?』
改めて考えると、自分でも『かなり無理があるな~』とは思うんじゃが、ワシが巫女では無いというのは本当じゃから。
それに、巫女であったとしても、ワシ自身は今の生活を変える気はないぞ?
やっておる事もあるし、将来的にやりたい事もあるんじゃ。
『別に巫女だからやらないといけない、と言う訳ではありませんし、我々が女神様と巫女の意思を尊重しているだけですので』
「それではワシはこのままこの地で、好きなように生きていくつもりではあるんじゃが……白龍殿は『器』をどうするんじゃ?」
『どうするとは? それと、私は白銀龍と呼ばれております』
それは大変に失礼したのじゃ。
どうするというのは、『器』の件じゃよ。
恐らく、白銀龍殿は黄金龍殿が暴走した時の為のストッパーでもあるんじゃろ?
このままじゃと、黄金龍殿が次の転生?をしたら強さに差があり過ぎて、抑える事が出来んのじゃなかろうか?
『それは……』
「早々に黄金龍殿が暴走するとは思えんが、『器』が無くなった時の様子を見るに、暴走されて抑えられんかったら、どうにもならんじゃろう?」
『器』が半分程度の状態で転生?しておる今ですら、黄金龍殿の強さは群を抜いておるが、白銀龍殿や眷族殿達総勢で掛れば抑えきれておる。
じゃが、『器』が満タン状態の転生?した黄金龍殿が大暴れしたら、誰も抑えきれんじゃろう。
それこそ、白銀龍殿を含む全ての真龍達が束になっても、恐らく一蹴されて終わりじゃろうな。
それなら白銀龍殿の『器』を持って来てもらえれば、ワシが充填するのじゃ。
と言うより、前の様な事が無い様に抑え役になって欲しいのじゃ。
『……確かに巫女様の言う通りですね……分かりました。 直ぐに持ってまいります』
白銀龍殿が一際大きく羽ばたくと、一気に空へと飛び上がってやって来た方角へとすっ飛んでいったのじゃ。
内心、嬉しいんじゃろうが、再び来るのにどの程度掛るのかくらいは教えて欲しいんじゃが……
兄上の方を見たら、こっちはこっちで呆れた表情を浮かべておる。
コレは仕方無いじゃろ。
それから数日後、白銀龍殿が『器』を持って来たのじゃ。
大きさ的には、最初に黄金龍殿が用意した『器』とさほど変わらぬのじゃが、若干大きい気はするのう。
しかし、充填しておらん状態より多少大きいと言う事は、黄金龍殿の『器』は規格外じゃったんじゃな。
そんな事を思いながら、ベヤヤに押さえて貰いながら、黄金龍殿の『器』を充填した様に白銀龍殿の『器』にワシのマナを注ぎ込んでいくのじゃ。
過去に黄金龍殿の『器』に充填した経験があるんで、今回はどの程度まで充填出来るか分かるのじゃ。
そうしたら、やはりというか予想通りと言うか、黄金龍殿の『器』とさほど変わらぬ大きさになってしもうた。
まぁ足らぬよりいいじゃろ。
そして、『器』の充填のお礼として、白銀龍殿の爪数本と鱗を数枚貰ったのじゃ。
流石に牙や角は貰えんからのう。
因みにじゃが、真龍は性別が無いのじゃが、喋り方や性格によって男寄りじゃったり、女寄りじゃったりする。
それで、黄金龍殿と白銀龍殿は
それと眷族であるワイバーン種や、劣化した竜種であるレッサー種には雌雄があり、卵は珍味として取引されておる。
卵は嘗て、飼育目的で採取されておったが、飼育不可能となった現在では、食する為に採取されておる訳じゃ。
ワシは食べておらんから聞いた話じゃが、非常に美味と言う訳で無くそれなりの味で、ただ『当家はワイバーンの卵を採取出来るぞ!』と言うステータスを他に示したいだけじゃ。
まぁそこまでして食べたいか?と聞かれたら、ワシは別に良いかなぁと答えるんじゃが、ベヤヤの方は興味があるようじゃ。
未だに卵は気軽に手に入らんし、手に入るサイズもウズラの卵サイズじゃ。
この異世界では、地球の卵の供給源である鶏みたいな家畜はおらんし、おったとしても魔獣蔓延る野生では絶滅しとるじゃろうな。
それはそれとして、手に入った白銀龍殿の鱗じゃが、実は使い道が無いんじゃよね。
いや、素材として見るならとんでもなく高価な物なんじゃよ?
それだけに、もしも使う場合は厳選する事になるんじゃが、現状では使う候補が無いんじゃ。
武具に使おうにも、既に黄金龍殿の爪があるからのう。
これは使い道が決まるまで、しばらく死蔵するしかないかのう……
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