第135話
兄上曰く、そんな馬鹿力を持った敵など、早々おらんじゃろうって事で、防御性能は今の状態で問題無いという事になり、コレにて『強化外骨格』は一応の完成となった訳じゃ。
全員が『メインフレーム』を着た状態で思い思いに動いておる。
「ちび姐御、あっしらはこの後どうすりゃ良いんで?」
『エグゾスーツ』を着ておるムっさんの元部下達が、外装を固定する為の工具を片手に、ワシに聞いて来たのじゃが、この後は予定が無いんじゃよね。
取り敢えず、工具は片付けてお主達は壁の建設に戻るのじゃ。
そう指示を出し、全員が『エグゾスーツ』を外して所定の場所に戻し、ゾロゾロと建設現場へと戻っていく。
しかし、いくら何でも『ちび姐御』は無いじゃろ……
「戻しても大丈夫なのですか?」
その様子を見ておったワシの後ろから、そう声を掛けて来たのはヴァーツ殿じゃ。
まぁメインフレームを着込んでおる状態じゃから、アイアン〇ンが立っておる感じじゃが。
で、それはどういう意味じゃ?
「いや、元々、奴等は盗賊だった訳ですから、ここでの事を他で話したり、それによってコレを盗まれる危険性も……」
あの者達は『重犯罪奴隷』としてここに送られておる訳じゃが、元々は盗賊じゃから、その危険性がある事は承知しておる。
その為に、ここでの事は他人に話す事は出来ぬ様、魔法陣で『契約』を刻み込んであるのじゃが、それでも絶対ではない。
どんな物でも抜け道はあるのじゃが、ワシがそんな事を許す訳ないのじゃ。
「そこら辺は問題無いのう」
まず、彼等は此処でやっておった事を、外に出たら忘れてしまうのじゃ。
それこそが、彼等に施した『契約』の魔法陣に隠しておいた『忘却』の効果じゃが、ソレだけでなく、偽りの記憶を与えておくのじゃ。
彼等が外に出ると、ここでは『新薬の実験をしておった』と言う記憶が与えられ、再び地下室に入ったら元の記憶が戻ってくる様になっておるのじゃ。
そもそも、『エグゾスーツ』はともかく、『強化外骨格』は盗まれでもしたらとんでもない事になってしまうから、対策済みなのじゃ。
バートの魔導拳の事もあるので、『強化外骨格』には正式な着用者以外が着込んだりした場合、警告をした後、無視し続ければ自爆するのじゃ。
警告に従えば自爆は回避出来るんじゃが、盗むような相手が従うとは思えんのじゃがの。
他にも、正式な整備場所以外で、着用者が入っておらぬのに無理矢理分解しようとしたり、周囲に正式な整備士がおらんかった場合、同じ様に警告がされた後、自爆する様になっておる。
その自爆なんじゃが、仕組みとしては単純な物で、『強化外骨格』に使用されておる駆動用の魔石を中心に周囲のマナを巻き込んで、魔石を連鎖的にオーバーロードさせ、周囲を巻き込む大爆発を発生させるのじゃ。
爆発力としては……
東京ドームくらいの範囲が塵も残らず、発生する爆風で広範囲に大被害が出るじゃろうな。
こっちで言うなら、バーンガイアの王城くらいの範囲が消し飛び、王都が壊滅するくらいじゃな。
まぁ『エグゾスーツ』の方は、それよりマイルドな爆発力じゃな。
普通の一軒家程度が消し飛ぶくらいじゃ。
因みに、正式な整備場所は現状、この地下室だけで、正式な整備士はワシ以外だと、美樹殿とカチュア殿だけじゃ。
将来的には、ヴァーツ殿のルーデンス領や、王都にも整備場所を造り、整備士も増やしたいのう。
このままだとワシ等が過労死してしまうからのう。
「……事故でその自爆機能は発動しませんか?」
「んー恐らくは大丈夫じゃろ。 自壊機能が発動するには、着込んだ者のマナパターンが登録されておらぬ場合じゃから、正式な登録者が着込んでおる場合であれば発動せぬし、警告中に脱出すれば止まるしのう」
まぁそれを無視した場合に起こる大被害に関しては、ワシも責任は持てぬ。
それに大前提の事じゃが、此処にある『強化外骨格』は、ワシが用意した強化ミスリルをメインに使っておる。
そして、この異世界で強化ミスリルを作れるのは現状ワシだけで、この強化ミスリルを使わずに同じ物を作ろうとした場合、通常のミスリルでは強度不足。
同じ様な強度を求めた場合、オリハルコンやアダマンタイトを加えた合金を使う事になり、1着作るのにも大金が必要になる訳じゃ。
それ以外にも、聞いただけで真似て作れば、着用者の屍の山が出来るじゃろう。
ムっさんが大怪我したり死に掛けたりしても、割と無事じゃったのはワシ等が治療しておったからじゃし。
「成程、盗めば消し飛び、作るには金が掛かり過ぎ、真似るには犠牲が多過ぎる、と」
「これだけやっても盗まれたりして、模倣されたらソレはそれで相手を称賛すべきじゃろうな」
それだけ、相手の技量が此方を上回っておったという事じゃからのう。
まぁそれ以外にも、嫌がらせ目的にいくつか罠を仕掛けておいてあるんじゃがな。
その罠に気が付かぬまま、中身をそのまま完全コピーした場合、起動したらマナをあっという間に喰い尽くす。
真面に動かぬ様じゃろうな。
「しかし、そうなると、美樹殿達の護衛を考えるべきですかな?」
ヴァーツ殿の言う通り、ワシ等の中で護衛を付けるのであれば、美樹殿となる。
これは、『強化外骨格』を狙う相手がおった場合、実物は手に入らぬので、係わっておる者を狙う事になるじゃろう。
そうなると、狙い易いのはワシやカチュア殿では無く美樹殿じゃろう。
と言うのも、これは実力的な問題じゃ。
ワシはともかく、カチュア殿はエルフである為に、魔法も多彩で強いのじゃ。
それに加え、ワシが色々と教え込んでおるので、最近では新たな魔法陣を複数組み合わせ、既存の魔法を強化するまでになっておる。
下手に手を出したら返り討ちになるじゃろうな。
ワシ?
説明するまでも無いじゃろ?
で、問題になるのが美樹殿じゃ。
美樹殿も強くはなっておるのじゃが、それなりに、という感じじゃ。
なので、複数人に襲われてしもうたら、恐らくそのまま攫われてしまうじゃろう。
それを防ぐ為に、ヴァーツ殿は護衛を付けようかと提案してくれたのじゃが、それについてはワシの方でちょっと考えがあるのじゃ。
と言っても、別段難しい事では無く、美樹殿は『
それも、護身用の結界発生装置みたいな物を、自作する程の腕があるのじゃ。
ならば、自身の身を守る為の魔道具を開発するのが良いじゃろう。
非殺傷武器なら美樹殿も嫌がらんじゃろうし、今は丁度良い物があるのじゃ。
スライムを利用したトリモチ弾はピッタリじゃ。
アレを手榴弾みたいにすれば、襲ってきた相手をベッタベタに固める事が出来る上に、対処法を知らぬのであれば、逃げる事も出来ん。
他にも地雷の様にしたり、それこそグレネードランチャーの様な物を作っても良いじゃろう。
一応、信号弾の様に単発で撃ち出す物であれば、構造も簡単じゃし。
結界装置で防御し、トリモチ弾で相手を拘束し、安全を確保した後に逃走する。
美樹殿を徹底的に鍛える、というのも考えたのじゃが、美樹殿の職業である『魔道具錬成師』は文字通りクラフター系統である為に、近接攻撃や魔法攻撃と言った戦闘には不向きなのじゃ。
まぁ長期的に見れば鍛える事は可能なんじゃが、もしも敵がおったとして、それを待ってくれるなんて事はないじゃろう。
であれば、長期的な計画で鍛えつつ、短期的には魔道具を使用する事にするのじゃ。
なので、美樹殿には自衛の為、元々持っておった手持ちの結界発生装置の改良と、新たにトリモチ弾を使う小型の非殺傷武器を共同開発する事にしたのじゃ。
まぁ、これ以外にも色々と作る予定なんじゃがの。
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