第113話
飛び出してきた3人組は、それぞれ、剣と盾、槍、杖と近接は多いがバランスの良い構成となっている。
その3人組が、俺の近くにいたクソジジイ目掛けて襲い掛かる。
慌てた様にクソジジイが応戦してるが、コイツ等の実力はそんじょそこらの奴等とは比べものにならねぇ!
「むっ! この者達は……!?」
「ハッハァ! そいつら手に入れるのに結構苦労したんだぜ?」
王都の冒険者ギルドの近くで見かけて、勇者の俺が誘ってやったのに、『興味無い』とか言いやがったから、他の冒険者共に金を握らせて、受ける依頼の傾向を調べ上げ、ダンジョンの奥深くにちょくちょく潜って、珍しい素材やマジックアイテムを手に入れて来るらしいのが分かったんで、ダンジョンの奥深くで手に入るちょっと珍しいアイテムを集める依頼を出し、子飼いの冒険者にワザと失敗するように妨害をさせた。
結果、期間中に手に入らず依頼は失敗となり、依頼したアイテムは美樹の奴に頼まれていて最終的に国で使う物だったんで、『国からの依頼だから』と法外な賠償金を請求し、当初はなんとか払おうと走り回ってたみたいだが、結局は賠償金が払えないって事で奴隷落ち。
本当は、手に入った時にさっさと全員の味見をしたかったんだが、逃げたクソ共を捕まえる様に命令されちまったから、未だに味見出来てねぇ。
「外道が!」
クソジジイが喚いているが、戦争なんてのはな、最終的に勝てば良いんだよ。
折角勝てる手段があるのに、それを使わないで負けてたら、ただのマヌケなんだよ!
「おい、チャージ終わったか?」
「は、はい、終わりました」
そう言って差し出された剣を手にする。
ったく、言われる前に出せよノロマが。
しかし、このままぶっ放しても、またあのチート野郎に邪魔される可能性があるな。
かと言って、クソジジイは一々、こっちを吹っ飛ばしやがるからやり難いったらありゃしねぇし……
……そうか、別に直接叩き込む必要はねぇんだよな。
「お前等ぁ! ちゃんと相手してろよ!」
まぁよく考えりゃ、進藤の奴も巻き込まれちまうかも知れねぇけど、勝つ為だから仕方ねぇよなぁ。
最近調子乗ってやがるみたいだし、御仕置も兼ねりゃ丁度良い。
その進藤も、あのチート野郎とやり合ってるから、こっちの動きには気が付いてねぇし。
混乱していたクリファレス軍が、遂に動きを見せた。
その中から3人が飛び出し、中央で戦ってたレイヴン達に襲い掛かっているが、その動きは凄まじい。
勇者を圧倒していた義父、ルーデンス卿を、3人掛かりとはいえ、ほぼ防戦一方になっている事から、相当な実力者な上に、普段から連携を取っているのが分かる。
つまり、あの3人組は……
「クリファレスの高ランク冒険者パーティーか?」
「バードラム様、如何致します?」
クリファレスで活動している冒険者で、該当しそうなパーティーの事を少し考えていたら、後ろから部隊長の一人が聞いてくる。
教科書通りなら、相手の部隊を包み込む様に動くのが定石だが、相手は、いきなりぶっ放してきたあの勇者だ。
もし、定石通りに包み込む様に動かして、勇者にそこに突っ込んで来られたら、その身体能力で暴れられて崩壊する事になる。
勇者の身体能力は驚異的なのは確かで、あの二人は簡単そうに対処してるが、アレはあの二人が可笑しいだけだ。
俺やノエルが相手になったら、多分、最終的に押し負ける事になる。
「……よし、この状態を維持し、盾持ちを前面に配置して微速前進、もしも勇者がこっちに来て飛び越えようとしたら、無理に倒そうとせずに、魔法を使って空中で迎撃だ」
「了解!」
部隊長が敬礼して、俺の命令を伝えていく。
コレでもしも、勇者が此方に突っ込んできたとしても、盾持ちを飛び越えたら魔法で叩き落とすし、盾持ちを蹴散らそうとしても、此方の盾持ちは防御と言う点では相当な強さを誇るので、相当に難しいだろう。
後は、あの3人組と勇者、剣聖を相手にして、あの二人が耐えられるかどうかだが……
「こっちは問題無さそうじゃな」
「取り敢えず、耐えりゃ良いだけだからな、問題は勇者がどう動くかなんだが……」
のしのしとベヤヤに乗った師匠が来るが、正直に言えば、師匠が暴れりゃそれで終わる気がするんだが?
そんな事を愚痴った所、師匠は『何でもかんでもワシがやったら、将来困るぞ?』と言っている。
確かに、短期間で考えるなら、師匠が全てを蹂躙してしまえば終わりだが、それが当たり前になったら、師匠が居なくなった時点で詰みだ。
この幼女は、ちょくちょく自分が居なくなっても大丈夫なように、物事を考えて準備をしている。
だから、急に消えたとしても、ある程度は対応出来るが、まだ幼いのにどうしてそう言う考えになっているのか不思議だ。
「んー……あの勇者は駄目じゃな、完全に性根が腐り切っとる」
「でも強いんだろ?」
「確かに身体能力と言う点では強いのは間違いないのじゃ。 ただ、アレを見る限り、碌な訓練もしておらんのじゃろうから、ただ高い身体能力で振り回しておるだけじゃろう」
師匠がそう言うが、確かに、本当に勇者が強いなら、あの二人でも勝てないだろう。
悔しい事だが、あの二人の強さは俺やノエルの遥かに上だ。
魔法を使ったとしても、あの二人なら余裕で対処してくるだろう。
あの二人が対処出来るなら、勇者にも対処出来るのは当然の事だ。
しかし、師匠の言う事が本当なら、あの勇者はただ身体能力だけが高いだけ、と言う事になる。
「つまり?」
「ちょっと強いだけの馬鹿って事じゃ」
「馬鹿って……」
師匠の言葉はかなり辛辣だが、実際の所、それが本当だったら他に言い様がないのも事実だ。
ちゃんと真面目に訓練していれば、相当な脅威になったんだろうが、何かを勘違いして、訓練をサボっていたんだろう。
ジリジリと部隊が前進していたら、勇者の剣が輝いた。
またあの攻撃か!
「防御態勢!」
盾持ちが前面に展開していた盾に自身のマナを流し込んだが、どうやら、狙いは防衛部隊では無く、3人を相手にしている二人だ。
しかし、アレだと味方も巻き込むぞ!?
最初の一撃を防いだレイヴンも、剣聖の相手をしているので気が付いても間に合わない。
師匠は……おい、欠伸してる場合じゃないだろ。
「大丈夫じゃよ」
そして、放たれたマナの光。
気が付いたレイヴンが剣聖を蹴り飛ばしたが、間に合わねぇぞ!?
「光よ!」
それによって、勇者のぶっ放した攻撃が、再び散り散りになり、それを見た勇者が憤慨している。
確かに、あの短杖を作ってた時に訳の分からない魔法陣を刻んでたが、こう言う事かよ。
しかし、義父も義父だ、まさか相手の武器を掴むなんて非常識過ぎる。
だが、それよりも問題なのは、味方がいたのに攻撃をぶっ放した勇者の方だ。
もしもあのまま直撃したら、3人組も剣聖も巻き込まれていただろう。
だが、そんな事を気にした様子も無く勇者が喚いている。
本当に、ありゃクズだな……
そう思っていたら、全身の皮膚が泡立つ様な、レイヴンの殺気が此処まで届いて来た。
「グァ?」
「どうしたのじゃ?」
思わず足が下がりそうになったが、ベヤヤが何かに気が付いたように背後の方を向いている。
そして、ベヤヤを師匠が立ち上がらせて、その肩に乗って遠くを見ている。
「のう、バートよ、八本脚の馬に二つの赤い旗を掲げておるって、確か、緊急事態を知らせる方法じゃったよの?」
師匠がそんな事を聞いて来たが、確かに赤い旗を掲げるのは緊急事態を知らせる方法だが、八本脚の馬ってのは確か……
そう思っていたら、遠くの方からカーンカーンカーンと、3度金属を叩く音が響き、少し間を開けて再び、カーンカーンカーンと3度金属を叩く音が響く。
「バート! 此方の部隊の停止と対応を任せる! ワシはヴァーツ殿達に知らせて来るのじゃ!」
ベヤヤに走らせ、師匠がレイヴン達の所へと向かっていく。
さて、こっちも対処しなけりゃならねぇな。
「全部隊に通達! 全戦闘行為を停止し後退して待機させろ! 国際法の
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