第81話
頭上を巨大なナニカが通り過ぎ、クリスタルスパイダー達を吹き飛ばす。
ついでに僅かに残っていた結界の膜も引き千切っていっちゃったけど……
そして、私の目の前にいたのは……
「ぇ……日本……人?」
こっちの異世界だと黒目黒髪と言うのは凄く珍しい。
クリファレスの王都に来てからも、黒目黒髪と言う組み合わせでは一人もあった事が無く、大抵は黒目でも髪の色が違ったり、黒髪でも目の色が違ったりして、両方黒黒と揃ってる人はいなかった。
この異世界、物の名称とかを調べた限り、地球人が過去にも来てるような感じはするんだけど、子孫っていないのかな?って思ってた。
「殲滅するから大人しくしてろ」
そう言って、その人は周囲でうぞうぞと動いていた残りのクリスタルスパイダーを叩き潰している。
使っているのは……横に100〇って書かれてそうな木製ハンマー。
古いって?
うちの家族が漫画全巻持ってて読んでたんだよね。
とにかく、そんなハンマーで叩き潰してるんだけど異常に頑丈。
クリスタルモンスターはそれなりの強度を持っていて、鉄製のハンマーでも10匹倒せばボロボロになって壊れるくらい。
でも、あのハンマーは傷は付いてるけど、壊れる様子はない。
「……コイツでラストか?」
最後の一匹をホームランの如く打ち上げて、天井に衝突、床に落下して粉々に砕け散るのを確認して、彼がハンマーをアイテム袋に入れながらこっちに来る。
凄いね、床中、まだ消えてないクリスタルスパイダーの残骸ばかり。
少しずつダンジョンに吸収されて、ドロップとして魔石とか体のパーツが床に残っている。
これ全部売るだけでも結構な額になるだろうなぁ……
「おい、罠踏んで逃げ遅れたってのはお前か?」
うん、見た目だと私達と同い年くらいかな?
でも、日本人だと童顔って言われて若く見えるらしいから、もしかしてもっと上?
「おい、聞いてんのか?」
でも、こんな人あの時にいたかなぁ?
バスの中にいた人に、こんな人いた覚えはないんだけど……
もしかして、後ろの方にいて気が付かなかったのかな?
うーん、頭が疲れてるからか思い出せない。
「……違うようだから置いていくか……」
あぁぁぁ、ゴメンナサイごめんなさい!
思いっきり考え事して聞き流してました、置いて行かないで!
はい、私が置いて行かれた要救助者です!って罠を踏んだってナニ?
彼に聞いた所、私が
そんな事はしてないし、何より、私はこの部屋でずっと採掘してただけで、いきなり逃げて来た誠一郎達が作動させたんじゃないの?
もっと言えば、私は戦闘職じゃないから、モンスターを倒そうなんて考えてないし、今回だって水晶素材が手に入らないからって自分で採掘する為に来たんだし!
一応、結界を張る魔道具以外にも、自衛の為の魔道具は持ってきてはいるけど、どれも素材が高いから、自分で採取しなくちゃいけない。
『採集の目利き』って言うスキルを持ってるから、採集する物の中でも品質は高い物が選べる。
「つまり、国からの依頼をあしらっていたから、切り捨てられたって訳か?」
「……多分……」
ダンジョンから脱出する為、彼に背負われて移動中。
仕方無いじゃん、丸一日、結界の魔道具を使ってマナはカラっぽ、クリスタルスパイダーに囲まれてたからストレスと疲労で歩けなかったんだもん。
「そうなると、このまま戻ると拙い事になるな……」
どゆこと?
よく分からないので聞いてみると、凄く単純な事で、私はダンジョンで切り捨てられたのに、それがダンジョンから生存してしまったら、『不慮の事故』と言う大義名分が使えなくなってしまう。
相手側がそれで見逃すなんて甘い事はしないだろうから、今度は不確実な『不慮の事故』では無く、直接的な『暗殺』されるだろう、と言うのが彼が言う『拙い事』。
確かに、今回の事は多分、いつまでも協力しない私に対し、見切りを付けたから切り捨てたんだろうけど、こう見えても国の為に色々と作って来たんだから、下手に切り捨ててどうするつもりなんだろう。
少なくとも、私が作った魔道具のメンテナンスは出来るだろうけど、新しい物を作るのは無理じゃないかな?
一応、コレから作りたいなぁって予定の物を書き留めたノートはあるけど、私って悪筆だから、誰も読めないだろうなぁ……
銃にしても、取り敢えずこんなんだよって感じのサンプル品を作ってはみたけど、火薬で撃ち出すものでは無く、圧縮した空気で撃ち出すエアガンみたいな物。
ただ、威力は無いから、威嚇とか相手をびっくりさせる程度。
そもそも、銃にも爆弾にも使われてる火薬だって、黒色火薬の材料が硝石と硫黄と木炭があれば作れる、とは分かってるけど、その中で硝石はどうやって手に入れるとか配分が分からないし。
今の銃だと無煙火薬だっけ?
「そうなると何処かに身を隠さなきゃ駄目だが、心当たりあるか?」
「……ある訳無いじゃん……」
唯一あるとすれば、色々と魔道具を持ち込んで登録してた商業ギルドのギルマスが、個人的に作った飲み物を冷やしたりする魔道具でお酒をキンキンに冷やして飲んだり、お酒のおつまみを教えたりしてたら結構仲が良い感じになったけど、王都にしかないから行くなんて出来ないし……
そうなると、王都で王城から殆ど出して貰えなかった私には、交友関係は殆ど無い。
対して、他のメンバーは冒険者ギルドとかに登録してたり、騎士団で王都の外に遠征してたりして、交友関係も広い。
これは私がぼっちと言う訳じゃなくて、私の
なので、基本的に研究室とかで既存の魔道具を改良したり、地球にあった道具を再現しようとして、毎日が忙しい状態になってたっていうのもあるのよ。
「……どうするか、このまま脱出は出来んし、かと言って迷宮に置いていくわけにもいかんし……」
彼は若干早歩き気味で移動しながら悩んでいるけど、現れるクリスタルモンスターはきっちりと倒している。
ただ、その武器はツルハシなんだけど、それを片手でブンブン振り回し、叩き付けて粉砕してるんだけど、ツルハシってそこそこ重いハズだよね?
それ以外にも、私を背負って移動してるのに息も切らさず、まるで事前に知っているかのように躊躇いなくルートを決めてる。
確かに、ルートがほぼ固定出来る3層までだったら、記憶してればいけるだろうけど、4層からは一定時間で変動するから、相当早く移動しないと前のルートは使えなくなる。
そして、変動する4層も突破し、遂に3層に到着。
ここまで来ると、難敵と呼べるような相手はおらず、最早ただの作業ゲーになっている。
そして、今まで張り詰めていたような緊張感が無くなった事により、私の眠気もそこで限界になり、私は彼の背で意識を落とした。
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