第8話
そうして始まった新生活。
道は利用者の安全第一を考えて作ったら、想定以上に大きく回り込むようになってしまったが、安全面を考えての事なので、仕方無いのじゃ。
他にも、家の隣に小さいながらも畑を作り、そこで野菜と薬草をいくつか作れるようにした。
柵は作っていないのじゃが、ここら辺一帯はベヤヤの縄張りである為、そもそも野生動物が近付いてすら来ないんじゃがの。
最初の数回は、ポーションによる強制成長を利用して野菜と薬草を採取し、薬草は作業場で吊るして乾燥させておく。
他にも、石からガラス瓶を作り、平均的な回復量に調節した回復ポーションを量産しておく。
怪我人用の軟膏や、もしもの時の為の強力な回復ポーションも作る。
この時、ワシは自身にいくつかの制限を設ける事を決めていた。
ポーション師の『どんな能力でもポーションとして作る事が出来る』と言う能力は、明らかに理に反している物ですら製作が出来てしまう。
それこそ、禁断の『死者蘇生』や『不老不死』と言うものでさえ、製作可能なのじゃ。
しかし、どうしても作らねばならぬ場合もあるじゃろう。
故に、制限である。
一つ、禁忌を侵すようなポーションは製作しない。
二つ、ポーション製作を乱発しない。
三つ、政治にはなるべく係わらない。
四つ、ただし、緊急時は例外とする
これがワシが自らに設けた制限である。
ポーションの乱発は、ワシの能力を考えれば可能であるのじゃが、もしやったら相場と物流が崩壊してしまう。
なので、普通に作れるポーションに関しては、自らの手を動かして作るのじゃ。
そして、政治に係わらないというのは、至極簡単。
ワシのチート満載状態の能力なら、大国の軍ですら容易に殲滅出来るじゃろう。
それを目当てにされて、もしも戦場にでも送られるように仕向けられたのでは、堪った物ではないのじゃ。
相手から突っかかってきたならともかく、ワシから手を出す事はあまりしたくはない。
それでも、貴族が治療や取引相手として来る事はあるだろうし、そういう場合は止むを得んじゃろう。
そうして色々とやって生活しつつ、偶に山を下りて村に行き、怪我人を治療したり、野菜の生育状況を確認したりしながら、村人達の悩みを聞く。
最近は、山にも入って山菜や木の実、キノコも手に入るようになり、ガリガリだった姿も、多少はマシになっているのじゃが、偶に出て来る小型魔獣に怪我をさせられるらしい。
死ぬまではいかないのだが、村人達にとっては怪我をする事自体が生活に係わる事になる。
その為、農具の一部を改造して粗末だが武器代わりにしたらしいのじゃが、そこはただの村人、まともに戦える事もなく、返り討ちにあったそうじゃ。
それで、怪我人が多かったんじゃな。
しかし、小型魔獣のう……
戦闘訓練を受けていない村人では、小型と言えど魔獣相手に戦うのは無理なのじゃな。
これが多少筋肉が付いて、がっしりした体型の男なら倒せるんじゃろうが……
そうそう、広場で吊るされとったムっさん達のリーダーくらいなら倒せるんじゃろう。
その吊るされていたムっさん達なのじゃが、既に憲兵によって引き取られておる。
その時の事を村長が話してくれたのじゃが、どうもあのムっさん達は他でも悪さをしていて、憲兵達に追われていたらしく、話を聞いた憲兵達がすぐにやって来てくれたらしい。
その時、吊るされていたムっさん達を見て、顔を引き攣らせていたらしいが、無事に引き渡しを完了し、懸賞金を預かっているとの事。
懸賞額は銀貨50枚なのじゃが、これが懸賞首として高いのか安いのかはよくわからん。
まぁ安いって事はないじゃろうが、不作でどれだけ物価に影響が出とるかわからんから判断出来ん。
行商人が来て、ここら辺の詳しい物価を知らなければ判断出来んのう。
そして、懸賞金の半分は村に渡しておく。
危ない目にあったのじゃから、危険手当というやつじゃ。
取り合えず、小型魔獣に関してベヤヤに聞いた所、狩りまくったとしても、あっという間に増える為、狩り尽くすのは不可能らしい。
なので、ワシらが狩り尽くす事を考えるより、村人を強化するか、装備を強化するしかないじゃろう。
その為、ちゃんとした武器を支給する事にしたのじゃ。
まずは剣。
これは、剣鉈とかマチェットとも呼ばれる物を作り、普段でも使えるよう考えて、肉厚、頑丈にした。
更に、両腕を保護する為に籠手を作り、表面はダークグリーンに染め、中にメッシュ状態にした鉄を仕込んで防御力も上げたのじゃ。
他にも、解体用の短剣などを作り、村人達に渡しては使い方や振り方を教える。
これでひとまずは様子を見る事になったのじゃ。
数日後、村人の一人が小型魔獣を倒す事に成功し、その成果となった小型魔獣をワシの家に届けに来たのじゃが……
「コレがそうなのかの?」
「はい、コイツは『パイクラビット』っちゅうヤツで、俺らの採った木の実なんかを狙ってくるんす」
そう、村人達が恐れていた小型魔獣とは、ワシらの晩御飯のおかずになっておる二本角と牙を持ったウサギだったのじゃ。
聞けば、繁殖力が強く、一組の番が一年で100匹くらいまで増えるのだという。
まるで話に聞くゴブリンみたいな繁殖力じゃな。
ちなみに、この異世界にはゴブリンもいるらしいが、ここら辺にはおらず、もう少し離れた所に生息しているという話じゃ。
取り敢えず、狩ったウサギは貰っておき、狩ったこの村人にはその対価を考えたが、立派な武器を貰っているのだから、いらないと言って逃げ帰るように村へと戻って行った。
まぁいらないと言われても、今回支給したのは剣鉈と籠手だけで、攻撃面も防御面も不安が残る。
なので、次は弓矢を作って遠距離も対処出来るように考えておるのじゃが、流石に素材が足りない。
弓を作るには、基本的にねばりが強い木材と、弦に耐えられるようなしなやかな素材が必要になる。
更に、矢を放った際の弦から身を守る為の胸当てが必要になるのじゃ。
もし、その胸当てを付けずに強力な弓を放った場合、モゲる危険性があるので注意が必要じゃ。
このウサギの皮はそれなりに強いので、数が揃えば胸当ての材料に出来るのう。
もう少し、村人達にはこのウサギを狩ってもらう事にしようかの。
貰ったウサギは捌いて調味料に漬け込み、晩御飯に使用。
流石に一匹では足りないので、追加でベヤヤが数匹捕まえて来たのじゃ。
他にも、鹿によく似た魔獣を複数狩って来たのじゃが、流石にコレはワシ一人で解体するのは無理という事で、村に持っていき、解体してもらったのじゃ。
角と皮、そして半身だけ貰い、残りは解体してくれた村人を優先し、村人達で分配してもらった。
さて、この貰った半身じゃがワシはステーキにし、ベヤヤは調味料を塗りながら炙り、焼けた所を自分の爪で削ぎ落として食べていた。
まるでケバブじゃな。
その事を話したら、どういう食べ方なのか質問攻めにされ、流石に材料が無くて作る事は出来んかったが、行商人から必要な材料を購入したら、作る約束をしたのじゃ。
パンの材料は、村に行けば聞く事が出来るのじゃから、問題は無いじゃろ。
そうして過ごしていると、村に行商人がやって来たと、村の青年が連絡しに来てくれた。
青年に礼を言い、行商人相手に売る予定のポーションが入った鞄を手に取る。
この鞄、あの鹿っぽい魔獣の皮を使って作った、今まで使っていた鞄とは別の鞄なのじゃ。
今まで使っていた鞄は黒っぽい色をしていたのじゃが、色見が流石に珍しいのか目立つじゃろうと考え、この新しい鞄を作ってみたのじゃ。
見た目は茶色の落ち着いた色合いになり、形状はさほど変わっていない。
ただし、前の鞄と同じようにワシのアイテムボックスへの入り口になっており、容量は無制限。
それを肩に掛け、杖を片手にベヤヤを呼び、その背に跨り山を下りる。
さて、行商人とやらはどんなものを売っておるのか、楽しみじゃのう!
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