第7話
山に戻って家作りを考えていたのじゃが、今回の盗賊団による怪我人やら重傷者がそれなりにおったので、治療を行っていく。
と言っても、軽傷者にはポーションを処方し、重傷者は回復魔法を使用する事で、サクサクと患者達を捌いていくのじゃ。
その間にベヤヤに畑を見て回らせ、栄養剤ポーションをさり気なく撒かせる作業を頼んである。
患者の治療を終えた後、村長から御礼を言われ、対価に何を出せば良いのかと言う話が出たのじゃが、現状の村には本当に何もない状態なのじゃから、別に何もいらんのじゃが、人と言うのはタダで施しを受けると逆に不安になるものじゃ。
少し悩み、コレから新生活をする関係上、色々と欲しい物が増えて行く事を思い出したのじゃ。
そこで、この村に行商人が来る間隔を聞くと、おおよそ一ヶ月に1回、砂糖や塩、生活雑貨や布、中古の服などを売りに来る。
この村からは炭を買い付けていくのだが、最近は何処も凶作になっている影響なのか、食料品も買い取りしているのだという。
まぁこの村から出せる食料品は、残念な事に皆無なのじゃが……
今までは自分達の食い扶持だけで精一杯だったのじゃ。
その行商人がやってきたら、ワシの家に連絡をしてもらえる様に頼んでおく。
他にも、空き家から家財道具の一部を貰う事になったのじゃ。
主に、椅子と机とベッド、他にも皿や小物系を貰っておいたのじゃ。
こういうのは自分で作るのはそれなりに面倒じゃし、まぁクラフト魔法を使っても良いのじゃが、何と言うか、画一的になり過ぎて味が無いのじゃ。
なので、手作り品は貰えるなら貰った方が良いからの。
全部、アイテムボックスに収納するのじゃが、何もない空間に入って行くのは見た目的にアレなので、ここで小細工した鞄が大活躍するのじゃ。
そう、見た目はただの肩掛け鞄じゃが、コレがワシのアイテムボックスと繋がっておるのじゃ。
これにより、それなりにいっぱい物が入る鞄と言い張り、アイテムボックスを偽装して面倒事を減らしておこうと言う考えなのじゃ。
もちろん、この鞄はワシ以外にはベヤヤしか使えない様に専用登録を施してあるので、他人に盗まれてもただの鞄にしかならない上に、盗んだ阿呆には『罰』が下る様にしておいたのじゃ。
所謂、魔女の持ち物を許可無く持って行った報いじゃな。
「さて、それじゃワシは2週間程度の間隔で村に来るようにするが、急患の時は遠慮なく家に連絡を寄こすのじゃぞ」
「はい、魔女様の御厚意、感謝致しますじゃ」
村から去る際、村長や村人達が皆、見送りとして土下座していたのじゃが、まぁ村と命を救った相手ならそうなっても仕方無いのかのう。
吊るしたムっさん達は相変わらずやかましいが、それがどれだけ続くか見物じゃのう。
そしてベヤヤに跨り、村から山へと戻る。
ベヤヤには村人が山に入っても襲わない様に注意しておいたので、食糧集めに山に入ってもベヤヤに襲われる心配は無い。
心配は無いと言うだけで、危険な野生生物がいない訳ではないので、しばらくはワシの家に続く道の周辺だけになるじゃろうな。
家の建設場所は決まっておるので、村までの道を考えつつ、ベヤヤの背に揺られる。
まず大前提として、直線で道を作るのは却下じゃ。
その理由としては、考えたくは無いが、村から敵対する兵士やらが来た場合、丸見えになってしまう。
なので、それなりに曲がった道を作る予定なのじゃ。
色々と考えていたが、ベヤヤの寝床に到着したので、まずは家を作る事にしよう。
と言っても、作業はとても簡単。
「『マルチ・エアカッター』!」
まずは、いくつもの風の刃を飛ばし、目の前にあった木々を切り倒す。
倒れた木はベヤヤによって一ヵ所にまとめて置き、残った切り株だけが地面に残る。
「『マルチ・ガイアコントロール』!」
地面に両手を付けて、魔力を流して行く。
それにより、地面が流動化して切り株がどんどん地表に押し出され、いくつもの切り株がゴロンゴロンと地上に転がっている状態になったのを確認し、その切り株達はベヤヤに回収されていく。
これでそれなりの広さの広場になったのじゃ。
後は積み上げられた木を加工していく。
枝葉と先端を落とし、表面の皮を剥いで魔法によって水分を抜く。
と言っても、ここにある分だけでは、家を作る分には到底足りないのじゃ。
なので、ここでジョウロを増やした魔法で更に増やすのじゃ。
その後は、ログハウスを作る要領で丸太に溝を作り、ベヤヤに命じて組み立て、隙間には剥いだ皮を詰めていく。
外面はよくある高床式のログハウスで、部屋の数はリビングにキッチン、自室に倉庫、作業場、風呂等といくつか小分けでそれぞれ作っておく。
特に倉庫は、素材によっては劣化してしまう事を防ぐ為に、棚には時間停止の魔法の術式を組み込んでおいたので、劣化する事は無いと言う高性能な物になっているのじゃ。
屋根の一部に穴をあけ、石からレンガを作って増やして暖炉も作った為、冬場も安心。
そして、ここ以外にも地下室を作っておいたのじゃが、こちらはまだ何にするかは考えていない。
家と部屋は出来たので、内装を整える。
流石に今のままでは、殺風景なので、貰って来た机や椅子を設置し、自室にもベッドを配置。
ただ、マットレスは無いので、外に生えている草葉を集めて、クラフト魔法でマットレス替わりのクッションを作り、他にも毛布モドキや枕モドキを製作。
「取り敢えず、家は完成なのじゃ!」
若干薄暗くなっている中、遂に我が家が完成したのじゃ。
窓には錬金術で作ったガラスが填められ、階段を上った先の玄関の扉の上には、これまた錬金術で作った淡い光を放つ石を配置した事で明るくなっている。
家の中にも同じ光る石は配置してあるが、全てスイッチで消灯可能。
水回りは魔法によって生み出し、これら全ての動力になっているのが、あの畑に撒かれていた魔粉を凝固させて手に入れた、巨大な魔石なのじゃ。
もちろん、消耗しっぱなしにしていると、すぐに魔力を使い切ってしまうのじゃが、周囲のマナを吸収する様に魔法陣を刻んでおいたので、半永久的に使用可能なのじゃ。
他にも、安全面を考えて結界機能や、攻撃された場合はカウンターで非殺傷魔法を使うなど、防衛面もバッチリ。
ちなみに、玄関は無理じゃが、裏口はベヤヤでも余裕で入れる程度には大きい物にしてあるのじゃ。
後は村への道じゃが、時間的に今日の作業は終了になるのじゃ。
暗い中、森の中で作業をするのは流石に危ないからの。
晩御飯はベヤヤが狩って来たウサギのような動物。
額に二つの角があるし、牙も生えているので、ただのウサギでは無いじゃろうが、まぁ食べられれば問題無いのじゃ。
錬金術とクラフト魔法で石を鉄の短剣に、木の皮を柄と鞘に作り変える。
それでウサギを解体し、同じ様に作った鉄串に刺して炉に並べる。
味付けが無いと思うじゃろうが、ここで取り出したるは、『醤油(ポーション)』『ガムシロ(ポーション)』『みりん(ポーション)』『日本酒(ポーション)』。
そう、調味料など、ワシのポーション製作に掛かれば造作も無いのじゃ。
ポーションなので液体限定と言う縛りはあるが、それでも十分過ぎる程のチート具合。
調味料ポーションを適度に混ぜ合わせ、それを炙っているウサギ肉に塗って更に炙ると、とてつもない香ばしい匂いが周囲に広がっていく。
うむ、この匂いは涎が止まらんのじゃ。
焼き上がったウサギ肉に齧り付き、何かの視線を感じて窓の方を見ると、ベヤヤが窓に張り付いていた。
どうやら、あの香ばしい匂いはベヤヤにも気になったようじゃな。
結局、ベヤヤの分も焼き上げる事になったのじゃ。
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