第1話




 祖父神と邂逅し、気が付いたら何処までも広い大平原で寝ていた。

 取り敢えず起きて身体を確認してみるが、異常は無い。

 周囲は大平原だが、少し気になる事がある。

 薄いけど何か膜?みたいな物がある?

 よく見れば判るが、ラッ〇みたいな薄いナニカで全周囲が覆われている?


 -解。 現在、周囲3mに認識阻害防御シールドが張られています。 なお、このシールドは地球時間で24時間後に自動消滅します。-


 頭の中に響いてきたのは何というか、合成音声の様な声。

 周囲に誰もいないので、もしかして、祖父神からのサポートみたいな感じか?


 -解。 私はあなた方、転移者に対して初期サポートをする事を命じられた『サポーター』です。 質問等がありましたら消滅前にどうぞ-


 ふむふむ、で、サポートと言うと?


 -解。 まずは地球に無い知識として、クラス・スキル・モンスターがありますので、まず、それを御説明致します-


 あ、それは聞きたい。

 特にクラスとスキルについては詳しく聞いておきたい。


 -解。 クラスから説明致します。 クラスとはそのままの意味で職業、人の一生を左右する物であり、その職業によってメリットと致命的なデメリットが存在します-


 メリットはともかく、致命的なデメリットとな?

 致命的ってどんな問題があんの?


 -解。 地球と違い、メリットとデメリットの開きが大きいのです。 剣士であるなら、剣に対して強力な上昇補正がありますが、他の武器になりますと多少の補正に留まります。 これがもし、弓矢になると極端な下降補正が掛かります。-


 成程。

 つまり、クラスが剣士だと斬る・突くみたいな攻撃は強くなり、他に関してもそれなりに強くなるけど、弓とかの全くの別種の武器に至っては、マトモに使用出来なくなる感じなのだろう。

 確かに、地球と違ってこりゃキツイな。


 -解。 その通りです。 クラスに関してはそのクラスを極めた場合、より上位のクラスにクラスアップする事が可能となりますが、『勇者』『大賢者』『ポーション師』は最上位クラスとなりますので、クラスアップは不可能となります-


 オゥ、マジっすか。

 しかし、そう聞くと名前の割にどんだけ優秀なんだこのクラス。


 -解。 次にスキルに付いてですが、スキルには『固有スキル』と『汎用スキル』の2種類が存在します。 『汎用スキル』は主に『生活スキル』とも呼ばれ、戦闘に不向きなスキルの大半がこれに該当します。 そして『固有スキル』は、クラス専用のスキルとなり、別クラスでは基本的に使用が出来ません。しかし、そのスキルを使用するクラスの上位クラスでは使用が可能となります。-


 ふむ、剣士の固有スキルは、弓使いとかは使用出来ないけど、上位クラスは下位クラスのスキルを使えると………

 ……ん?

 そうなると、俺らの最上位クラスは何が下位クラスになるんだ?


 -解。 最上位クラスである『勇者』『大賢者』『ポーション師』の下位クラスですが、『勇者』は『近接戦闘系クラス』、『大賢者』は『魔法系クラス』となり、『ポーション師』は完全独立クラスとなりますので、下位クラスは存在しません。-


 えぇ……そうなると『ポーション師』って滅茶苦茶弱いんじゃないか?

 サポーターさんや、『ポーション師』の『固有スキル』とメリット、デメリットってなんぞ?


 -解。 『ポーション師』の『固有スキル』は『ポーション無制限製作』となり、メリットは『どんな物でもポーションとして作る事が出来る』で、デメリットは『製作時消費マナ増加』となります。-


 まぁうん、『ポーション師』なんだから、ポーションが作れるのは予想済みだというか、作れなかったらなんじゃそりゃって話だ。

 しかし、このデメリットは結構痛い。

 どんなポーションを作れたとしても、消費量が増加するとなると、いざと言う時に作れない可能性が………


 ちょっと待て、なんかこの説明だと他の二つに比べてショボ過ぎないか?

 クラス補正は無いみたいだから戦えないし、汎用スキルは戦闘に不向きらしいし………

 なんで最上位クラスなんだ、この『ポーション師』。


 …………ん?

 いやこれ、この説明が本当だとすると………

 ぇ、ぶっ壊れまくりじゃないか?

 確かめる方法は一つしかないが、まだサポーターの説明は終わっていない。


 -解。 次はモンスターの説明ですが、地球に存在しない異形の生物群であり、ほぼ全てが人種とは敵対しております。 地球でも創作物として登場しているようなモンスターから、この世界でもまだ発見されていない新種もおります。-


 ふむ、代表的なのはスライムとかゴブリン、ドラゴンとかいるのかな。

 しかし、この世界レベルとか無いの?


 -解。 レベルと言う曖昧な概念はこの世界には存在しません。 自身の能力を明確に数値化する方法は、神々ですら把握するのは不可能です。-


 まぁそりゃそうだ。

 例えるなら、ゲームなら超巨大な相手でも、その手の小指や末端を攻撃し続けてHPを削り切れば倒せるなんて事は出来るが、現実ではまず不可能な事だ。

 しかし、そうなると自身の強さなんて、余計に把握しにくいな。

 サポーターの説明が終わり、質問はありますか?と聞いてきた。



 質問の前に、コレで確かめる事が出来る。

 本当に考えている事がマジなら、『ポーション師』はとんでもないぶっ壊れクラスだ。


「ポーション製作」


 そう言った瞬間、頭の芯が一瞬冷えた感じがして多少クラッとしたが、広げた両掌の上に一つの小瓶が現れる。

 小瓶はガラスの様な薬瓶で、中身は透明の液体。

 それを一気に飲み干した。


「うぐっ」


 飲み干した瞬間、喉が、胃が、胸が、腹が一気に熱くなって来た。

 更に、その熱が全身に広がっていく。

 思わず、シャツの胸元を掴んで、しゃがみ込んでしまう。

 結構辛いが、もし、考えている事が本当だとしたら………



 暫く熱を感じていたが、それが徐々に収まり、やっと熱が完全に引いた。

 それを感じ取り、ゆっくりとその場に立ち上がった。


 ズルリとズボンが地面に落ちる。

 それもそのはず。


「ホントに成功したー!」


 そう両手を突き上げ、思わず叫んだ。


 その姿は、40近い男ではなく、10歳くらいの幼女の姿。





 こうして、異世界にチート満載の幼女が誕生した瞬間だった。










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 -ホッホホホ、あの仕様に気付くとは、やはり面白いのう-


 -待て、爺神、私あんな仕様聞いてないんだけど?-


 -そりゃ言ってないからの-

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