60日目(6/12)ハリセンボンて美味しいらしい

 6月12日。晴れのような曇りのような天気。九州は昨日あたりから梅雨入り。


 午前中は例によって死んでいた。もう起こすのも諦められている。11時近くまで寝て、お昼ご飯。地鶏なるものを初めて食べた。思っていたより歯ごたえがあって、食べ終わった後は顎が痛かった。妹は飲み込むのに苦戦して、長いこと口のなかで噛んでいた。「無理」「かたい」「やだ」と吐き出したがる妹を「がんばれがんばれ」と励ましつつどうにか呑み込ませた。


 午後はお出かけ。この間行った、移住者の人が経営するカフェに、母とチビたちをつれていく。練習をかねてバック駐車もした。狙ったところの隣に車が収まった。お姉ちゃん運転はどうだったかときくと、「ドキドキした」と妹。乗る前は「ぼくまだ死にたくない」と言っていた弟はケロッとしていた。

 お店についてからは、美味しいお茶とおやつに一同感激していた。私はライターをしているという旦那さんにお話を聞き、奥さんのほうがチビたちを相手してくれた。途中から妹はお絵かきに夢中になり、弟は奥で関係者らしき人と将棋を打っていた。

 和気あいあいと過ごし、「ありがとうございました」とお店をあとにする。

 店を出て数十メートル歩いて、気づく。

 お会計してない……!

 ダッシュでお店に戻り、お勘定をする。母が財布を家に忘れたので今日は私の奢り。


 それから買い物をして帰宅。チビたちと私とで、みんなで餃子を包んだ。包んでいる途中は「マジカルバナナ」をしていた。「やる気が出ないといったら寝ちゃう」と妹が言うやいなや、参加していなかったはずの母が「寝ちゃうといったらゆきこ」と口を挟んだ。

 たしかによくお昼寝するけども。ううむ。


 餃子は上手に包めた。焼き上がった餃子は我ながら美味しそうだった。


 夕飯のあとは、おじさんが釣ってきた魚をさばく。今日の釣果は、ハリセンボンとカサゴ。生のハリセンボンは初めて見た。けっこうな大きさに見えたが、祖父曰く「小さいほう」らしい。ハリセンボンは食べられるというからびっくり。ネットの記事によれば、身と肝が絶品なんだとか。

 カサゴは私が担当した。アジさばきで鍛えたウロコ取りと頭落としをして、いざ三枚おろし、と意気込んだところで、「煮つけにするからおろさなくていいよ」と言われる。不完全燃焼である。


 ハリセンボンは、おじさんが責任をもってさばく。まずは皮をはぐ。皮をはいだ姿は、キュートな姿から一転、白いデメキンみたいなグロテスク具合である。皮をはいで内臓をとると、可食部はほとんど残らない。どこ食べるんだこれ。


 ここで一つ豆知識を知った。「ゆびきりげんまん」の歌の「はりせんぼんのーます」は、針千本ではなくハリセンボンらしい。ハリセンボンの棘には脳に作用する毒があって、嘘がつけなくなる、という話だそうだ。針を千本飲ませる拷問をするぞ、という意味だと思っていたからびっくりだった。


 ハリセンボン、どんな味なんだろう。明らかになるのは明日である。わくわくしながら部屋に戻った。


 離島生活、残りあと4日。



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