29日目(5/12)母の自由研究ノート

 5月12日。今日は朝からすんごい土砂降り。最近晴れ間が本当に少ない。

 奄美のほうはもう梅雨入りらしい。この辺りもそろそろだろうか。


 今日も自動車学校。家から徒歩5分くらいのところに、いつも送迎バスが来る。が、今日は雨があまりに土砂降りの横殴りで、母が送迎場所まで車で送ってくれるといった。さすがに過保護な気がする。

 送迎バスに乗り込んだ時、「ママが送ってきてくれたんか?」と例の運転手さんに言われた。

「そうなんです。雨がすごいからって」

「ええ母ちゃんやなあ」

「でもちょっと過保護ですよね」

「親なんてみーんな過保護になるもんよ」

 世間一般の「親論」を曖昧に受け流す。そうか、普通はそうなのかなあ……という気持ち。「忘れもんないか?」「大丈夫です」のいつもの会話とともに、バスが出発。

 今日の技能教習は11時と14時。微妙に空いた時間は、仮免学科の対策動画を流しつつ、バンドの小説を進めた。あるところを過ぎたら一気に書けるようになるいつものやつ。家にいるときよりはかどっている気がするのが不思議。


 今日は10時間目まで教習を終えた。12時間目でみきわめ、その後検定があるので、仮免の試験は明日。明日は2時間乗車のち、技能の検定があり、それに合格すれば学科試験があるそう。終わるのはだいたい17時くらいだそうだ。これまた長丁場である。

 明日が仮免試験(うまくいけば)ってことは、今日いっぱい勉強しなきゃじゃん。


 ということで、夕飯を食べ終わった後、余っているノートがないか聞きに行く。私は「書いて覚える」教の信者である。間違えた問題の知識事項に関してはノートにまとめておきたいと考えた。

「余ってるノートない?」と訊かれた祖母は、戸棚を漁り、古びた一冊のノートを取り出した。表紙には「社会●科 歴史 自由研究ノート」(●はボールペンの訂正箇所)と「6年」、それから母の旧姓と名前が書いてある。

 つまりこれは、母が小学生の時のノートだ。

 すごいの持ってるね、と私は驚く。中身は母の自由研究ではなく、祖母が洋裁の図面を書いたものだったが、それもまた古い。紙が少し茶色くなっている。

 ひとまずノートを手に入れた。小説がノっているので書きたいところだが、技能で受かって学科で落ちては洒落にならない。勉強しなきゃである。


 ……むしろ、やるべきことがあるから小説が捗っているのでは? と、今、まさにこれを書いている瞬間に気付いたゆきこである。








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