22日目(5/5)決意

 5月5日。こどもの日。

 子供のために私ができることってなんだろう、と考える。


 今日はひどく眠くて、15時まで爆睡してしまった。「何か食べなさい」と母にひどく心配され、寝起きにごはんとおやつを食べた。お腹いっぱいになりすぎてお腹が痛くなった。


 今日はこどもの日だ、とTLを見ていて気がつく。子供、というのは日本で一番守られない存在だ。家庭も学校も、権力で簡単に子供を抑圧する。子供を殺した親には同情が寄せられ、普通の殺人よりも少ない刑が与えられて終わる。


 私ができることってなんだろう、と考えた。

 最近、私はひどく恵まれていたのだと思うことが多い。「恵まれた」という言葉で語弊があるなら、「運がよかった」と言い換えてもいい。家は間違いなくゴミだった。学校の先生だって協力的ではなかった。けれど、友人たちに恵まれ、母が再婚しているおかげで身元保証人にも困らなかった。だから自立ができたし、大学を卒業できた。就職先も間一髪で決まった。全部、私の運がいいからだ。


 運以外の要素を上げるなら、私は人よりも少しキャパが多かった。多少勉強が得意だった。文章を書くことが得意で、自分の窮状を発信できた。その結果、今は6000を超えるフォロワーさんがいる。たかが知れているとはいえ、発信力は間違いなく大きい方だと思う。

 だけど、それだって運の一つだ。


 世間には、私よりもつらい思いをしている人が、苦しくて苦しくて、何をするにもつかれてしまって、窮状から脱するどころではない人が山ほどいる。その人たちを「努力不足」と断じるような真似は絶対にしたくない。繰り返すが、私は本当に、運がよかっただけだ。たまたま、その恩恵にあやかれただけ。

 その人たちのために、幸運にも力を持てた側として、私は何かをしなくてはならない、するべきだと思っていた。毒親育ちビンゴは結果としてそうなっただけだが、家出マニュアルとか、相談機関のまとめとかは、私が得たものをどうにか還元しようとした結果だった。


 けれど。本当にそれだけでいいのか、と思う。一般人たる「ただの私」の影響力なんてたかが知れている。それでも「救われた」と言ってくれる人が、これまでに何人もいた。

 私にできることは、もっともっとあるんじゃないか。

 そう考えた時、私の脳裏によぎったのが、「弁護士」という職業だった。


 小学校4年生くらいだろうか。私は弁護士になりたかった。逆転裁判の影響をもろに受けていたが、それでも、「困っている人を救える素敵な仕事だ」と思っていた。(ゲームの影響を伏せていた結果、周りからやけに優等生扱いされたのはまた別の話)

 しかし、うちの父は「うちには金がない」が口癖の人だった。弁護士にいくには法科大学院に進まなければならない。大学院、という選択肢が特別珍しいものだと思い込んでいた私は、経済状況がわかる年頃になると、「私には無理なんだ」といつの間にか弁護士を諦めてしまっていた。


 だが、父の経済力に頼らず生活している今なら。

 何をするにも、私さえがんばれば、私の自由である。


 離婚を専門とする弁護士は多いが、親子関係となるととても多いとは言えない。家を出た時、奨学金や学費免除の書類の関係で、私は弁護士さんの無料相談に助けを求めたことがあった。その人は離婚が専門の人だったが、「家族問題に強い」という点で役所から紹介された人だった。

 しかし、その人に話を聞いてもらっても、「親子の問題は専門外なので、申し訳ないけど私は力になれない」と言われるまでだった。他にもたくさんのアドバイスはいただいたし、その人のおかげで警察の相談票を出せたのは本当に感謝しているが、私はどこかやるせない気持ちだった。


 その時の私のような人を、私が弁護士という職に就けば、きっと救うことができるはずだ。

「多少勉強ができる」というスキルをここで生かさなくてどうする。

 人生に「遅すぎる」なんてことはない。母にぽろっと零してみたら、30半ばを過ぎてから看護師を目指した人の話を聞かせてくれた。フォロワーさんにも色んなアドバイスや応援をいただいた。社会人からでも弁護士になることはできるのだと、情報が語った。


 なら、やるしかないよな、きっと。


 力を持つものは、力で人を攻撃するためでも驕るためでもなく、その力で誰かを助けるために、力を与えられたのだ。体力もそう。知力もそう。

 私は誰より「誰かを助けたい自分」のために、やるべきことがある。


 簡単な道でないことは考えるまでもなく分かる。司法試験は生半可な勉強では受からない。予備校や大学院に頼るにもお金はかかるし、何より、私は大学で法律の基礎のキさえ学んでいない。

 でも、不可能ではない。働きながら弁護士を目指した人だってきっとたくさんいる。

 応援してくれる人がいる限り、私はきっとがんばれる。


 このことにはきっと、目の前の仕事に追われる毎日の中では気づけなかった。離島に来て、体調を崩してtwitterしかやれない時間があったから、きっと気づけたことだ。

 すべてはめぐりあわせ。

 私は天に感謝しなければならないかもしれない。


P.S. やっと熱下がったよ!!!

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