5日目(4/18)賽の河原の豆剥き

 4月18日。今日は教習所の入校手続きにいく。おじさんは今日から仕事で、チビたちは今日から学校。いよいよ今日から「生活」がきちんと始まる。

 チビたちの行く学校は、全校生徒が27人らしい。3・4年生、5・6年生はそれぞれ同じ教室で授業をするそうだ。びっくり。

 入校手続きをして、小さなモールによる。1階に食料品売り場、2階に服や靴と百均があるような、本当に小さなところだ。食料品売り場では北海道物産展をやっていた。南の離島なのに。2階ではかわいいサンダルが安かったので、買ってしまった。ヒールのついた薄黄色のやつ。でも履いていくような場所はない。だけどかわいいものは、持っているだけで心が弾むような気がして、嬉しくなる。


 モールを出たところで、ハプニング発生。スマホがどこにも見当たらない。ないなー、と気づいたのはモールの中にいるときで、そのときは「車に置いて来たかな」と思っていたが、車にもなかった。最後に確実に見たのは教習所。あれ、と思いつつ寄った場所を探したり、教習所に電話で確認したりしてみるが、どこにもない。

 母の運転で教習所に戻り、駐車場や通り道を探してみても、やっぱりない。受付の女の人もわざわざ出てきて探してくれたが、ない。平謝りしてとりあえずお昼ご飯をコンビニで買う(島に2つしかないうちの1つだ)。海の見える高台の公園でご飯を食べながら、とりあえずモールに電話。確認してみたところ、あった。駐車場で誰かが拾って届けてくれていたらしい。所在がわかったとたん「ご飯がおいしくなったね」と母が笑っていた。


 それから母とゆっくりドライブをして、知らない道をわざと冒険。「ここはいくら迷っても島から出ることはないから安心だよね」と母は楽しそうだった。

 しばらく車で走って、母とふたりでゆっくり話したり、中島みゆきのよさを語り合ったりしつつ、3時過ぎに帰る。

 チビたちが帰ってくる。初めての登校は楽しかったようだ。「桑の実を食べた」とか、「学校に蛙がいたから手で運びながら帰った」とか、「音楽でアフリカの歌を習った」とか、絶え間なく話が出てくる。

 おやつを食べ、宿題。私も彼らと一緒に漢検の勉強をする。準一級は大学1年生の夏に買って、数日やって飽きてを4年間繰り返している。そのうちちゃんと取りたい。

 少し経つと、外出していた祖父母が帰ってくる。お土産に袋いっぱいのさや付きグリーンピースを持って帰ってきた。今日は豆ごはんにするからと、豆剥きを頼まれる。チビたちと一緒に剥く。最初は単純作業が楽しかったが、だんだんと指が疲れてきて、飽きてきて、つらくなってくる。やれどもやれども豆の山は減らない。

 やっと減ってきたか、と思った頃、祖母が「これもお願いね」と同じくらいの袋をどさっと机に置いた。低くなった山が再び元の高さに戻った。

「賽の河原みたいな気分だ」「ひとつ剥いては母のため……ひとつ剥いては父のため……」とか言っていると、祖母が他人事みたいに笑う。夕ご飯は天ぷらと豆ごはんだった。おいしかった。


 8時半。スペースで太宰の「女生徒」を朗読する。「女生徒」は太宰の作品の中でもとりわけ好きだ。女の子の語りが上品で可愛らしい。口に出して読むと、目で読むのとは違う発見もたくさんある。太宰の作品は目で読むと正直読みづらいと思っていたが、口に出すとものすごく読みやすかった。太宰は口述筆記をしていたと聞いたことがあるが、だからだろうか。こんな楽しみ方もあるのだなと面白かった。朗読を趣味にするのもよさそうだ。

 ただ、「女生徒」は今までやった「檸檬」「よだかの星」よりも桁違いに長かった。ゆっくり読むことを意識していたせいもあってか、今までは長くても15分くらいだったのに、2時間以上もかかった。水を持ってきていなかったから、最後の方は口がうまく回らなかった。次は水を用意しておこうと思う。少し反省。

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