2日目(4/14-15)しけった段ボールでもよく燃える


 4月14日夜。1日目を投降した後、穏やかな夜が訪れる。お風呂から上がってしばらくゆっくりして、ふと居間に出ると、オレンジ色をした薄暗い照明の中で、母がひとり。

 それから流れでぽつぽつと話をした。始まりは母の愚痴。母の弟(つまり私の叔父)が要りもしないエアコンや扇風機を祖父母宅へ持ってこようとし、母がそれを諫めたところ「俺の計画が台無しになった。余計なことしやがって」とLINEが来たそうだ。そればかりでなく、叔父は妻と娘が暮らす家にもう何年も帰っておらず、生活費や学費も一切出していないらしい。

「お母さんはめったにこういうこと言わないけどね、あいつは人間のクズだよ」

 母が疲れ切った表情で言った。

 母は苦手な人間こそいても、めったに人を嫌いにはならないたちらしいが、三人だけどうしても大嫌いな人がいるという。

「その中にお父さんは入っているの?」

 私が訊くと、「入っていないと思う?」と母は苦笑した。愚問だった。


 それから父の話、私と妹(これは小3の妹とは別である)を置いて出た時の心境の話になった。いわく、母は当時精神的に本当に追い詰められており、私や妹を連れて行けば殺してしまうかもしれない、としか思えなかったそうだ。

「お母さんはあなたたちには何を言われても罵られても刺されても文句は言えないと思う。本当にひどい親だった」

 そう振り返ることができるなら「毒親」ではないよ、と私は思った。

 それからなんやかんやと毒親エッセイを書いたことを告白し、「親のことを話して金を稼ぐ」が母公認のものとなる。


 その日は興奮していたのか、目が冴えてしまってなかなか寝付けなかった。



 4月15日。役場(役所ではない)に諸々の手続きへ向かう。帰ってくると、祖父が畑でゴミを燃やしていた。引っ越しの段ボール等の処理だ。私とチビたちもそれを手伝う。雨ざらしにしていたから、段ボールは湿っていて、ぐんにゃりと嫌な感触がした。

 それでも段ボールはよく燃えた。白い煙をもうもうとあげながら。「燻ってるのは湿ってるから?」祖父に訊くと、「白いのは水蒸気」と教えてくれた。

 初対面の時、私のピンク色の髪を見て、びっくりして固まっていた祖父である。やっときちんと話ができたと思った。


 夕方。てんさんと対談動画の収録。事前にチビたちには静かにするよう言い聞かせてある。てんさんは盛り上げ上手なのでたくさん話してしまった。動画のURLは後日貼るのでよかったら見てください。


 夕食後。母もおじさんも用事で外に出るため、チビたちの世話と寝かしつけを頼まれる。お風呂に入れ、歯磨きをさせ、9時ごろには寝かせるよう言われていたが、なかなか寝ないチビたち。寝物語に自分の父親の話をしたら、刺激が強かったのか妹が涙ぐむ。代わりに面白おかしく寝物語をつくって聞かせた。桃太郎とかぐや姫が悪魔合体し、おともにマイケル・ジャクソンとハリーポッターが出てくるあべこべな話。

 面白がったチビたちは余計に覚醒してしまった様子。失敗だったか。

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