第15話 決着
冴子は数ヶ月ぶりに家に戻った。夫の脱いだ服は散乱し食べ終えた食器はテーブルの上に乱雑に置かれカップラーメンやスナック菓子の袋、ビールの空き缶も床に落ちていた。琥太郎の相手をしながら家の片付けを行う。添加物の入った食品は買うなとかグルテンフリーがどうだとか色々文句を言う割には
1人では何もできない人だ。
「琥太郎」そっと抱き上げ名前を呼ぶ。まんまるで頬が大福の様に柔らかく、あやすと声を立てて笑う琥太郎。いつもご機嫌で手がかからない子だ。早産で少ない体重で産まれてきたけど、入院中の保育器生活が嘘みたいに
こんなに元気でいてくれている。
「ごめんね、ダメなお母さんで」抱き締めると柔らかい身体からふんわりミルクの香りがした。「ごめん」
琥太郎とソファの上でうとうとしていたら
玄関の戸がひらいた。夫だった。
これからの事態に備えて琥太郎をまず2階の部屋に寝かせた。お腹がいっぱいなのか甘え泣きして引き止めようとせずコテンと寝た。
リビングに戻ると夫はソファに座ってビールを煽る様に飲んでいた。冴子は口をひらいた。
「まずは勝手に家をあけてごめんなさい。
通帳も印鑑も返します。言い訳はしません。
私は家を出て考える時間が欲しかった。
あなたへの不満はある。でもそれはあなたも
同じく私への不満を持ってるはず。一方的に悪者にしてごめんなさい。でも別れてください。」
「理由は?男か。」夫は怒りを鎮めるように静かな口調で言った。冴子は即答できなかった。「男なんだな」夫は再び聞いた。
「‥好きな人ができたのは確かです。
でも、それだけじゃない。あなたが私を管理して見下して威圧し続ける事にずっと怯えてた。あなたは私の家族や友人も馬鹿にして。言い返せば怒られる。辛かった。」
「そんな理由は後付けだろ。結局は男のところに行きたいんだろ!相手は誰だ!いつからだ!」
夫の手が飛んできた。それで火がついたように次は夫が襲い掛かってきた。無茶苦茶に髪を引っ張られなぎ倒された。でも抵抗はしなかった。どんなに辛くても痛くても声を出さないと決めた。それで気が済むなら。死んでもいいと。コップなど投げつけられた。当たったり当たらなかったり。夫が投げ損ねて床に落ちたガラスで指を切った。目を瞑って冴子は耐えた。瀬戸との甘い時間を思い出しながら。ひとしきり暴れたら夫は冴子に襲い掛かってきた。服を引きちぎり乱暴に胸をもんだ。「その男はどうやってお前を抱いたんだ。どこをどうやって舐めた。言えよ」
冴子は答えない。夫は冴子の下着をおろし
おぞましい舌で全身をくまなく舐め回した。
瀬戸によって開発された感度のポイントに夫の舌が到達した時に心とは裏腹に快感が襲ってきた。気を良くした夫は攻撃の手を緩めない。目を閉じて瀬戸に抱かれていると想像しつづけた。冴子は初めて夫の愛撫により激しく身体を痙攣させた。その姿に驚いたのは夫だ。「お前どうしたんだ‥」
ちくしょう!
やがて冴子の中に乱暴に押し入ってきた。
冴子を四つん這いにさせて背後から責めた。
一度開発されたポイントは突かれたら自動的に更に感度が高まるらしい。瀬戸によって開かれた快感の扉だ。夫は妻をこんな身体にした見ず知らずの男に嫉妬して無茶苦茶に突き続けた。痛いからやめてと前までは言っていたのに。「この淫乱女!」
瀬戸だ!私を抱いているのは。髪の毛を引っ張られても尻を叩かれても耐えた。
冴子はまた快感の高みに声を震わせて達した。瀬戸の名前も呼んだかもしれない。
夫は戦意喪失したのか途中で萎んでしまった。ソファに倒れ込んだのを見計らい冴子はトイレに立つフリをして電話をかけた。
間もなくパトカーが到着し夫は暴行の容疑で緊急逮捕された。冴子は証拠として今の喧嘩の一部始終を隠しカメラにおさめたものも
提出した。行政書士のアドバイスで、面談以降 夫の発言はレコーダーに記録しておいた。今日の話し合いで暴力を振るわれる事も予想して警察にも事前に相談、打ち合わせをした上で近所で待機してもらっていた。
終わった。ボロボロの身体の冴子はそのまま倒れてしまい病院へと搬送された。
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