第4話:雇用問題を考える ②

つまり、国の指針としては企業に対するベースアップを含めた個々の待遇を引き上げて、消費などの経済水準の低下してしまった領域を活性化し、給与水準および国内総生産の底上げをしたいのだろう。しかし、これではむしろデフレを加速させかねないのではないだろうか?


 私は会社側に判断を委ねることで待遇格差はさらに悪化するのではないかと推測している。これは、以前から指摘されていたケースだが、非正規雇用の社員は社内のポジションは一般社員よりも低くなる傾向にあり、これらの不当な扱いや各種ハラスメントに対して声を上げにくい。その結果、人材流動性(退職を含めた他者への人材の流出や異動など)の高まりが就労などの障壁になってしまう。そのため、正社員ではない人にとっては就労意欲を低下させることになってしまい、場合によっては高ストレス状態や引きこもりといった最悪の状況に発展することになってしまう可能性すら否定できない。流動性が高くなると市場の人材水準が高騰するだけでなく、好人材は企業間争奪戦のような状態になってしまう。これらの裏を返すと“高学歴を含めた条件が合致した人材の需要”だと言い換えることが出来る。このような人材はほとんど市場には出てくることなく、基本独立などの対抗相手になってしまうことで一定水準の社員の確保が困難になっていく可能性がある。


 今は新しい会社が出来ると、既存の会社が倒産するリスクが高まってくる。そのため、可能な限り好成績や取引先からの好印象など好条件の人材を囲い込む傾向にある。しかし、ほとんどの場合はそのような行為をされたことにより印象悪化してしまい、退社してしまう傾向にある。これは、自分を必要としてくれているという印象だけでなく、1つ間違えると自分に危ない案件や業務外の仕事が舞い込んでくるのではないかという否定的な印象を持ってしまう場合もある。だからこそ、常日頃から誰からも信頼されているからといって利得優先の考え方は念頭に置くべきではない。成績が良い社員に関しては成績の上がらない社員やフォローが必要な社員などのサポートも出来るような環境を整備しなくてはいけない。そして、成績で給与を決めるのではなく、段階的に基礎手当の見直しを含めた勤務評価を定期的に行う必要があるように感じる。


 その他にも人材不足の業界においてはこのような事態になり、さらに人材確保が困難を極めている。しかし、人材が集まらないのは一時的労働として捉えてしまっている実態がないかを確認する必要がある。例えば、繁忙期など業務オペレーションが多忙になる場合に同一賃金ではなく、従量賃金として変更しているかという点だ。これは、通常賃金と繁忙期など業務増加が見込まれる時期に限っては賃金の割り増し等を行い、従業員がモチベーションを高く保つことが出来るように環境を整備することが急務であり、消費が落ち込んでいる今だからこそ、何らかの離職対策を考えなくては店舗や会社の存続に関わる深刻な事態を引き起こす可能性が高いと思う。

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