第3話
翌朝。舜二は目覚めた。
起き上がり、隣で丸くなって寝ているジョンを起こす。
「ジョン、ジョン。朝だぞ」
ジョンはゆっくり眼を覚まし、軽く伸びをした。
「もう朝か」
「僕は顔を洗って歯磨きをしてくる。ジョンは此処で待っててくれ」
「わかった」
ジョンは近くにあった四角いクッションを口にくわえて引っ張ってくると、その上に乗り、また丸くなった。
その間に舜二は立ち上がり、洗面所のほうへ移動した。
鏡に映る自分を見つめながら、シャコシャコとアメニティーの歯ブラシを使って歯を磨いた。それから顔を洗った。
冷たい水は、舜二の緊張を高めるのに充分な効果を発揮した。
部屋に戻ると、クッションの上で丸くなっているジョンを見つけた。
「ジョン、行こう」
舜二はジョンと一緒に通路に出て、ホテルの受付前まで来た。
舜二はダメ元で受付の人に聞いてみる。
「東雲優希子という、髪の長い女性が泊まりませんでしたか?」
すると、意外な答えが返って来た。
「それが、消えてしまったんです。昨日の朝、チェックアウトの時間になってもいらっしゃらないので、お部屋まで確認したら、窓と白いカーテンが開いたままの状態で、誰も居なかったんです」
横でジョンがニャーと鳴いた。
ジョンが舜二に言う。
「我が言った「消えた」とはこういうことさ」
受付の人が舜二に言う。
「それから、お客様は書き置きをされていったようです」
受付の女性が見せてきた白い横長の紙には、“ずっと別れたかったの。さよなら”と書かれてある。
その字が東雲優希子本人の筆跡であるとわかった舜二は、焦燥の表情をした。
「じゃあ、本当に、消えたっていうのか?!」
「どうする、シュンジ?」
「必ず見つけてみせる。だから、夜も僕は宿屋にもホテルにも泊まらない覚悟でいる。だいたい、何で“別れる”なんてことを。理由が知りたいしな」
舜二は1泊分の料金を払うと、外に出た。
ジョンも呆れたという足取りで舜二についていった。
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